お城の風景
今回は視点が変わってます。
*視点が変わります*
一方その頃勇者達はというと、聖王国首都にある国王が座する城へ向かっていた。直接国に仕えているわけではないが教会の旗印とも言える勇者達の顔は広く、案外簡単に彼らの城への入城許可が出た。
「これはこれは勇者殿、この度はどうなされました」
「特に用ということではないのですが、国王様にお聞きしたいことがありまして」
勇者は姫や教会に関わる人間からある情報を仕入れていた。それは聖王国が混乱している。曰く、人型の魔物が多く現れるようになった。曰く、行方不明者の数が増えた。曰く、王様が壊れたと。
彼はその言葉だけではなく自分の目で確認するためにも一度この城を訪れたのだ。
「すみません、国王様はいまお忍びで席をはずしております。私どももその行くへは存じておらず。また国王様が戻られましたらこちらから教会の方へ使者をだしますので、今日のところは」
丁寧な対応をする文官に勇者の目は冷たい。彼は本来温厚で情にも厚い。自分の予定が狂ったぐらいではこのような目をするはずはなかったのだが。
ジーク: LV75 【魔人】 HP 8766 MP 603
これが文官を鑑定した結果であり、彼の冷たい目の理由だ。
勇者はLVが上がり鑑定(人物)を覚え、城に来たのも実際に国王を目にして鑑定をするためであった。
なぜか、それはLV差がありすぎると鑑定ができないことがあるのだ。
姫様達は鑑定ができない=魔王としていたが、ただ単に使者のLVが低く、国王のLVが高かっただけかもしれないと、ほとんどない確率だが勇者はその命を奪う前に確認しないといけないと考えた。
目論見は失敗に終わったが、城に実際魔人はいたし、ジーク以外の魔人も多くいた。いや、魔人しかいないのだ。これでほぼ黒になったと考える勇者。
彼は国王を討つべき敵と認識し行動を始める。もちろん命を取る前に鑑定はするつもりだろう。
「わかりました、それではまた僕の方からきますのでお気になさらず。みなさんお忙しいでしょうし」
「お気遣いありがとうございます。本来であればもう戻っていてよい頃合いですので、近々またおいでください」
そう文官が言うと勇者は城を後にし教会へと足を進める。
勇者が城を出た後、城にた文官たちは少し騒めきたつ。
「ジーク様、あの勇者どういたしますか?」
華美ではないが作りがしっかりとした鎧を纏った一人の騎士が訪ねる。もちろん彼も【魔人】である。
「さて、どうするか。今は王が戻らぬ、その間にことを始めればこちらにもそれなりの被害があろう」
「さようですか。以前、勇者は障害になりえないと伺ったと思いますが」
「今の奴は正直強い、私と同等かそれ以上か」
「そこまで」
騎士の表情は変わらなかったが内心は驚愕で震えている。彼らの中で最強はもちろん王である、その次に王の右手であり影である【魔人】そしてNo3はこのジークである。ジークよりも力の低い者が驚くのも無理がない。
彼らに取って人間は雑魚。ただ利用し、蹂躙すべき対象である。
そんな人間が自分たちのトップと肩を並べるなど想像もしたくなかったであろう。
「うむ、正攻法ではこちらも被害がでるであろう、ならば奴らに頼むとするか」
「は、私の方から令をだしておきます」
ジークはうなずく。そして城はまた日常を取り戻す。酷く歪んだ日常を。
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