戦闘風景①
「メリッサさん、起きてますか?」
僕は二人が寝ているテントの前に来るとそう声をかける。
「はい、マオさんも気づかれましたか?」
「そうですね、このペースであればもうしばらくもしないうちに遭遇となると思います。とりあえず、僕が対応し必要であれば迎え撃ちますので、メリッサさんは昼どうよう姫様をおまかせします。」
「わかりました、軽く支度をし、姫様と一緒に後を追いますので。」
そう、僕達が寝ていると遠くからこちらへ向かう大きな気配が1つ現れたのだ。もちろんメリッサさんも気づいていたのか目を覚まし的確な対応をしていた。きっと僕が声をかけるよりも前に姫様に声をかけていたはずだ。
ただ、気配の正体が敵かどうかは把握できていなかったようであった。もしわかっていれば対応と言った僕の言葉を遮るはず。なんせ近づいているのは【魔人】なのだから。
昼間見たやつらよりもその気配は相当強いがその質は似ているので十中八九こいつの正体は魔人で間違いない。
そうこう、していると前からは気配の主が、後ろからは2人がこちらへ接近してきた。
「あ、あれは! 近衛騎士長?」
どういうことだ?メリッサはこいつのことを近衛騎士長と言ったが、僕の鑑定にある文字は人ではなくやはり【魔人】とある。
「問答は無用だ、とりあえず皆死ね。それで終わりだ。」
そう言うと男は剣を抜き、初速から一気にトップスピードまで加速する。僕は反射的に双剣を振るうが、男はその勢いを殺すことなく僕の放った双剣をいなし、そのまま僕の右腕へと剣を振り下ろす。
「わっ、危ないな」
なんとか躱すが、こいつは昼間の奴らとは動きが段違いである。メリッサもひどく驚いたような顔をしてこちらを見てぶつぶつと何か言っている「あれは騎士長ではない、あの動きもそうだが声が違う、では一体・・・・・・。」
「ほう、今のを躱すか。これは面白くなりそうだ。我が名はジン・オウマ、貴様も名乗れ。」
「えっと、マオです」
って、答えている場合じゃないよ、
「メリッサっさん、姫様を連れて、離れて。ここまできてこの男の他に気配はないから、僕がこいつを止めれば問題ない。待機はテントのとこで。」
頷くと2人は来た道を戻る。
「安心しろ、マオ。今回は我一人だ。」
「今回は、ってことは昼間のやつはお仲間ですかね? 」
「そうともいえるが、やつらはまだなりたて。仲間とは完全には認めてないわ。そんなことよりも続きだ。すぐにくたばるなよ!」
ジンが再び地面を蹴りつけ急加速する、が先程と違うのはその行く先が上空であることだ。嫌な予感がしたので足元にあった拳大の石を蹴り、牽制をするもあっさり躱される・・・・・・。
今のデーモンぐらいなら一発で倒せる威力とスピードだったのにな。
炎魔法:インフェルノ
ジンが詠唱なしで殲滅級の炎系魔法を僕に向けて放つ。
「これぐらいで死ぬなよ」
さきまで僕がいた場所に地獄の業火が降り注ぎ、辺りは怒号と熱、そして抉られた地面。まさに地獄の様である。が、勿論僕はこれをテレポートで避ける。炎が直撃する直前に転移したからジンにすぐに悟られはしなかったはずだ。
「あなたもね」
僕の転移した先はジンの斜め後ろ。すぐに双剣をジン目掛けて切りかかる。左の双剣を簡単にはじかれたそれは囮。本命の右手は双剣を防ぐのにできたジンのわずかなスキをつき、ジンの体へ突きを入れる。
が、ジンは危なげなく空中で加速すると僕の攻撃を躱す。追撃はこちらが不利とさとり僕はエアステップを使い地上へもどる。ジンも後追い僕と間合いをとりつつ地上へ降りる。
「ほう、空間系の魔法まで使うか」
「あなたこそ、今のを初見で躱すなんてやりますね」
って、言ったもののテレポートを使った戦闘なんてこれが初めてだけど。空での戦いは幕を下ろし舞台は地上へと移る。ジンは僕のテレポートを考慮し遠距離攻撃よりは近接戦と判断したのだろう。僕も攻撃手段が双剣しかないので近接せざる得ない。
ジンの戦闘スタイルは剣を主体としているが時折魔術も使う、いわゆる魔法剣士である。一方僕は双剣を主体としたスタイルである。
双剣である僕の方が手数では勝るのだが、ことごとくチャンスをつぶされてしまう。結果、未だお互いにただの一度も攻撃を当てられずにいる。
双剣を振るい、僕は時に虚実を織り交ぜながら攻撃を繰り出すも、剣で捌き、体さばきで躱される。たまにジンがミスをし、攻撃が当たるかと思い、もう一歩足を踏み込もうとすると
炎魔法:フレア・レイ
僕の周り、全方位から炎のレーザーが襲いくる。もちろん、僕はそれをテレポートで躱し、ジンの後方へ移動し不意を狙うが先と同様に対処されてしまう。
「そろそろいいだろう、本気で来い」
あ、ばれてましたか。もちろん本気で殺しに行くだけなら簡単なのだ、テレポートを使い魔人の核をつぶせば終了である。が僕は自己鍛錬のためその戦法を禁止している。ただ、魔技でまだステータスを上げることは可能なわけで。
では、なぜすぐにそれをしなかったのか。様子見という理由もあるが一番は
「あなたもですよ、全力できてください、退屈しちゃいますよ、本当に」
そう、ジンもまだ余裕を見せていたかこっちだけ本気を少しでも見せるのは気にいらなかったのだ。
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そすると僕のやる気がみなぎってきます!!!