姫様のいる風景
「ふぅー、これで終わりですね。」
女騎士が魔人達との戦闘を終えると、一息つく。本人が言った通り優秀らしい。あのわけのわからいやつ等を1人で倒してしまった。以前みた騎士さん達よりも数段上の実力なのはもちろん、勇者様よりも現在での力は上かもしれない。
もちろん、勇者様はLVも女騎士よりも低いので伸びしろを考えれば軍配は勇者様に下るだろうが。
「お疲れ様です。見事な腕前ですね。惚れ惚れしちゃいました。」
「いや、それほどでもですね。さっきも言いましたがこれでも国では名の通った騎士ですので。」
「それはそれは。えっと、それでこれからどういたします?」
「あっ、へっ???」
先程まで得意になっていた騎士の顔が急に崩れる。どうやら戦闘が終わって気が抜けたようだ。己惚れていた、とは考えたくないな。
「いえ、先程こちらの少女を姫と呼んでおりましたので、どこの国かはわかりませんが高貴なお方であることには間違いないようですが、その、なんといいますか、どうしてこの人数で?と思ったのでなにか訳ありかと思いまして。問題ないようでしたら私はこのまま自分の旅に戻ろうかと・・・」
貴族とか関係持ちたくないのに、王族とか勘弁してほしい。心の声が出ないうちに自然に逃げようとするが、それは叶わなかった。
「じ、じつは・・・」
女騎士が困った様な顔し、その目を一瞬姫様の方に向ける。
「よいわよ、教えてあげなさい。」
教えてくれなくて結構ですから、姫様、そんなこと言わずに僕をリリースしてください。野生の商人を野に放ってください。などと心のなかで馬鹿を言っても何も変わらない・・・。そして、女騎士が姫の言葉を聞き話を続ける。
「まず、こちらの姫様ですが、どこの国の姫様かと言いますと聖王国の第一王女、エリザベート様であられます。」
なんと、勇者様達と関係ある人でしたか、助けることができて本当によかった。
「私は聖協会の騎士であり、聖女様より直々に姫様を保護するように言われたのです。聖女様が仰るにはとにかく姫様を聖王国から離し、時が来るまでその身を守るようにとのことでして」
話が進むにつれて自信がどんどんなくなっていくのか、言葉に籠る力が弱くなっていく。最後にはその言葉は止まってしまう。
「えっと、安全に滞在するあてがないってことですか?」
「ええ、先程の騎士達、実は」
「メリッサ!!!」
姫様が急に声を荒げ、騎士の名前を呼ぶ。その声に僕はびっくりしたが、そう言えば自己紹介してなかったな、鑑定で名前とかわかっていたから普通に忘れてたけど。この人達は僕のこと気にならないのかな?まぁ、身分の低い者のことなんか気にしないか、とこれは偏見かな。なんて考えるほどには冷静だ。
「すみません。そう、先程の騎士なんですが、敵の手のもので熟練した技を持つものが多いのです、その数は未知数で、個別で数隊でしたら私でも対処可能なのですが、あれが隊を組んで姫様を狙うとなると私では対処は不可能です。」
そう語る女騎士、メリッサを見て満足そうにするお姫様。さすがに会ってすぐの人間に【魔人】なんて物を教えてくれはしないようだ。まぁ、興味もないし、聞かない方が巻き込まれることも少なくなるはず!
「なるほど、それなりに腕がたち、かつあなた方が頼れるような人を探しているわけですね。」
「理解が早くて助かります。本来であれば聖協会の勇者様達に力を借りるのが一番ではあるのですが、現在連絡がすぐにとれず。また数カ月すれば聖王国へ戻ってくる予定ではあるのですが・・・。」
勇者様達なら、たぶんアカック周辺にいるはずだ。時折僕のとこに戻り、ポーションやら付与アイテムを買っていくから、そんな遠くにはいないはずである。
「以前、ものすごい高性能のポーションを持ちかえり、それをさらに手に入れる方法があるかもしれない、ということですぐにまた旅立ってしまい。そんな伝説の様な話では探すあてもないのですし、正直なところ勇者様たちを頼るのは半分あきらめているんですよね。」
また言葉尻が暗くなっていくメリッサ。でも僕にはそのお話、身の覚えがありありです。
「もしかして勇者様のお名前ってアルスであってますか?もしそうならなんとなくの場所わかりますけど、どうします?案内しましょうか?」
「「えっ!?」」
「案内いたしますよ。」
開いた口がふさがらない姫と騎士の姿がそこにはあった。
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