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目指せ!ポーションで理想の生活 IN 異世界  作者: ペンギン
第3章 番外編 リリとララの冒険
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リリとララの冒険(下)

これで番外編は終わりになります。

 道の迷い、自称妖精に会いなんだかんだ時間を余計に使ってしまったなぁ、と考えながら歩みを進める少女達。


 そんな彼女たちは3階層に向かっているつもりである。


 そう、つもりである。実際は先程来た道を戻っており、このまま行くと10分もすれば1階層へもどる階段へとたどり着いてしまう。どうして彼女たちはまたぐるっと反対方向へと歩みを進めてしまったのか。それは考え事をしていたからである。決して方向音痴だとかではない。とフォローしておく。


 「あれっ? あれは上へ行く階段だわ。どこで間違えたのかな」


 「お姉ちゃん、もう帰るの?」


 ララは自分がどこへ行くのか根本からわかっていなかった。方向音痴とかではなかった。


 「そうね、時間的にはまだ早いけど、今から下へ向かうには時間もないし。今日はこのあたりで帰ろうか。次回はいきなり2階層から始めれるしね。」


 「うん、帰ろう!」


 少女たちは迷宮の探索を終えることにし、次の目的地を丘の夕暮れ、自分たちが滞在している宿へと変更する。


 

 少女達が家路につき、迷宮の1階層を移動しているころ、別の場所で妖精のドリューがこんなことをつぶやいていた。


 「あっ、小さい子に新しい仲間を紹介するの忘れちゃってたわ。どうしようかなぁ、適当に転移させて合わせたらいいかな? うん、それで行こう。追いかけるのも大変だしね。」


 そんなことを知らない少女たちは順調に出口への道を歩む。


 「ララ、今回は残念だったね。新しい仲間、増えると思ったのに。テイムって難しいのね」


 「難しいの。やり方わからないし。ライムの時は自然にできたけど。でも大丈夫、次はがんばるの。」


 ララの今回の目的はテイムであったがそれが叶わず落ち込んでいるかと思ったリリは妹を慰めるが思ったよりも幼女はたくましいようだ。今回の経験で迷宮に恐怖をせず、また来ようと思えるのだから。普通の5歳児は間違いなく迷宮の魔物に恐怖を抱き、一度でもその姿をみたら二度と迷宮なんてところに来ないと泣いて叫ぶ。


 ただ鈍いのかそれとも将来は大物になるのか、今から楽しみな人材である。


 「お姉ちゃん、あそこに茶色い妖精さんがいるよ!」


 リリがララの指さす方を見るとそこには先程であった妖精のドリューの姿があった。もちろん、彼女は茶色なんかではなったのでこれは作りものだ。素材は銅でも使っているのであろうか?

 

 気になったララは道を少しそれ、像のある場所に向かう。


 「ララ気をつけて、1階層とは言え迷宮ではなにがあるかわかないわ。」


 「でも、お姉ちゃん、この妖精さんかわいいよ。なでなでしてあげたくなっちゃうの」


 ララの無邪気な笑顔に負け、まぁ1階層だし大したことは起きないだろうと少し気を緩めるリリ。くしくも彼女は先の自分の言葉を自分で否定してしまったのであった。


 もちろん、初心者用のそれも一番浅い1階層でなにか起きると思い常に気を張るのは難しい、人とはそれほど環境に慣れる生き物なのだ。ここよりもはるかに凶悪な魔物が出現する迷宮で普通に睡眠をとる冒険者が一体どれほどいるだろうか。それこそが人は慣れる生き物である証である。


 楽し素に妖精の像をなでるララを見てると手持ち無沙汰になったなのかリリもその手を像へと向ける。リリの手がその像に触れると妖精の像が光輝いた。


 その光景に驚き、すぐに自分の迂闊さを後悔するリリ、なにが起きたのかきょろきょろとあたりを見渡すララ。まったくもって対照的な姉妹である。2人がなにか行動を起こすよりも早くその光は収束しあとには何も、リリもララも、像もなにも残さない。


 もちろん、これは妖精のドリューのせいであるのだから、悪意があるものではない。


 悪意はない。けれどそれと結果がいいということとはまったくの無関係である。


 彼女達が、もしドリューが思った通りの場所に転移していれば、そこには新しく仲間となるスライムとワイバーンがいるはずである。


 

 さて、彼女達の目の前の光が収まると、そこは今までいたエリアに比べ狭い、部屋と言ってもよさそうな広さの空間が広がる。四方はごつごつとした壁に囲まれているがただ一つ目立つ場所がある。それははるか先に見える扉である。


 この扉を見た二人はあることを思い出した。そう勇者様達と探索した迷宮で竜と出会った会の場所を。そのことに気づいた2人は体を震わす。


 「お、お姉ちゃん、あれって」


 「大丈夫よ、大丈夫だから」


 震えるララを自分はなんとか理性を保ち支えるリリ。さすがのララにとってもあの竜の恐怖は克服しがたいのであろう。


 ララは考える、自分たちがいるのは限定された空間、そして見覚えのある扉、そして位置関係。

ララの推測では自分たちはボス部屋に転移させられ、出口とは対極に位置する。扉を目指し歩みを進めればボスが出現するであろう。しかし、扉から脱出する以外に方法はない。


 「あの妖精は悪いやつだったのかしら」


 とつぶやくララ。しかし彼女の推測はことごとく外れていた。まず妖精さんは善意から転移を行ったのだ。ララに頼もしい仲間を紹介するために。ただ、ドジなだけで少女たちを5階層へと転移してしまっただけである。そして、脱出方法は扉からだけではない、彼女たちが説明をうけてないテレポーションで帰ることが可能である。


 それでも、たとえ真実を知ったとしても彼女たちがやれることは決まっている。扉を目指し歩み始めるしかないということである。


 「ララ、聞いて。今からあの扉へ行くわ。でもきっとたどりつく、その前に魔物が出現すると思うの。そしたらライムを前衛にして戦いを挑むわ。私たち3人だけだと逃げるのも難しいと思うの。ただ、私の推測だとここは5階層で出てくる魔物はゴブリンナイトとゴブリンのはず。もしそれ以外が出た時は全力で扉へ入るのよ」


 「うん、わかった。ライムも大変かもだけどがんばってね。ララ達も頑張るから」


 「ピィー」


 張り詰めた空気の中、一歩、また一歩と足を進める。途中はなにも起きなかった、魔物がまったく見当たらないのも今部屋がボス部屋ということの可能性をさらに強くする。あとはそのレベルの階層かというのが重要になる。


 少女たちが中央にたどり着くその少し前、いきなり大きな音があたりに響く。すると目の前の地面に大きな魔法陣が一つ、その周りに2つの小さな魔法陣が現れる。すると、その魔法陣の上にゴブリンナイトがゴブリンが姿を現す。


 少女達は出現した魔物が予想通りであったので落ち着いて対処を行うことができた。まず、最初に取り巻きのゴブリンを倒す。その間ライムはゴブリンナイトの注意を引く。それは事前に決められていたことで、ゴブリンの出現と同時にララが弓を引きその歩みを止める、そして別のゴブリンへはリリが炎の魔術で消滅させる。


 今までであればリリの魔術では1回でゴブリンを倒すことができなかったのが、今回に限ってはなんと炎の初級魔術1発でゴブリンを焼き払ってしまった。驚きもあったがすぐにララが足止めしていたゴブリンへ同様に魔術を放つ。今回も1発でその姿を焼き払う。


 驚きが隠せないのか、自身の手とゴブリンがいた場所を交互に何度も何度も見るリリ。一度なら偶然とも思えるが、二度となるとそうは思えなかった。迷宮の探索で自身の力が上がったと納得して注意をゴブリンナイトへ向ける。


 本来この5階層のゴブリンナイトを相手にする場合は、Dランク上位もしくはCランク相当の冒険者6人ほどがパーティーを組むのが普通であり、別の場合でも最低そのレベルの力が必要である。


 今このゴブリンナイトに相対するのはLV10-15の少女2人とL10以下のスライムの2人と1匹である。数においても、質においても最低ラインに達していない。本来であれば、この3人が普通に戦ったらその命を迷宮に散らすこと確実だ。


 ライムがゴブリンナイトの注意を引きつけてくれているのだが、改めてその様子を見ると少し衝撃的である。


 自分たちよりの一回りも二回りも大きい醜い姿をした大きな魔物がその手に持つ大剣をスライム目掛け何度も何度も振りぬく。ライムの種族としての能力は高いのだがこと素早さに関してはまだまだLV相当であり、ゴブリンナイトの攻撃の多くを受けてしまう。傍からみていると、醜いゴブリンが怒りに身を任せスライムを八つ裂きしているようにしか見えない。


 スライム虐待である。


 見かねたララがその顔をしかめ、でもどこか優しく、大きく声をだしライムに話しかける。 


 「ラ、ライム大丈夫? 無理しないでだめなら逃げてきてね、ララ達に任せてもいいよ!」


 「ピィーー」


 「大丈夫なんだね、ホントだね。嘘だった許さないんだからね!」


 「ピィ」


 ゴブリンナイトの攻撃を受けながらもララへ応えるライム。攻撃を受けてなお、その身を立てに主人を守る姿にララはもちろんリリも感動し、ライムへの信愛の念をいっそう強める。


 まぁ、実際はというと物理攻撃無効のおかげでダメージを負わないばかりか、その剣の勢いをそのまま反射してゴブリンナイトを大剣で何度も切り付けている。ゴブリンナイトは何度も攻撃しても時に避けられ、ヒットしたかと思ったら剣を反射させられる。怒りもつもり判断能力も失う。さらに力を増して剣を振るうもまた反射され、さらなる怒りを抱く。


 ゴブリン虐待である。


 大丈夫と言われても手伝わないわけにはいかない。心優しい少女たちはライムを助けるために行動を始めようとする。けれどここで予想外のことが起きる。


 今まで猛攻を見せていゴブリンナイトが急に倒れたのである。


 意味がわからなかった。ひたすら攻撃していた魔物が急に行動を止め、体を地面へ横倒したのだ。まず、なにか罠かと警戒する。少女達も意味が分からいので行動を止めるが警戒は解かずただ様子を見守る。


 するとライムがこちらに戻ってくる。

 

 「ピィー」


 「お姉ちゃん、もう大丈夫だって。ライムが帰ろうって言ってる」


 「そうなのね? よくわからないけど、わかったわ」


 ライムとライムを無条件で信じてしまうララは元気よく扉へ向かう。その横にいるリリは本当に一体なにがどうなってるか、迷宮とは謎に包まれた場所だと再々認識するのであった。


 

 少女たちは5階層から一気に地上へと戻る。道中ドリューに会えたら文句の一つでも言ってやろうと思ったがそれは叶わなかった。


 そして無事迷宮を抜けると夕暮れの丘へとその歩みを早めるのであった。こうして少女達の初めての冒険は幕を閉じた。



 余談ではあるが冒険から帰ってきた少女たちを見た(鑑定)とある商人が驚き歓喜し


 「これで計画が動き出すぞ」


 とはしゃいでいたことも追記しておこう。

次からは第4章となります!

一話当たりの分量はやや減りますが毎日更新に変わります、時間は今まで通り、午前7時です。


ブクマが徐々に増えていくのを見るとやる気がでてきます!4章が無事終わるように応援お願いします^_^

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