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目指せ!ポーションで理想の生活 IN 異世界  作者: ペンギン
第3章 番外編 リリとララの冒険
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リリとララの冒険(上)

リリとララのお話です。予定では(上)(中)(下)の3話で終わります。 たぶん。

「「いってきまぁぁーす」」


 1人の少女がその妹であろう幼女を連れて街をかける。2人の手にはそれぞれ杖と弓が握られている。身に纏う服も華美ではないがわずかな魔力を帯びており、決して安いものではない。そんな2人の正体はというと、年上の姉がリリアーネ、年下の子がララという。2人はもともとは街の孤児院にいたが少し前にひょんなことから、とある商人と行動をともにすることになった。


 孤児院にいた時とは違い、彼女たちの顔は笑顔でいっぱいだ。今の彼女たちをみて誰が孤児出身と思うだろうか。



 「おはようございます、イレーネさん」


 「あら、おはよう、リリちゃん。ララちゃんと一緒にどこかおでかけ?いいわね、おばさんもつれっておくれよ」


 「無理だよー、おばちゃんは。」


 「こら、ララ。おばちゃんはダメだって、」


 「いいのよ、リリちゃん。っと、連れてってくれないのかい、それは残念、それで二人はどこへ行くのかな?」


 「「迷宮!!!」」


 元気よく叫んだ二人に街のご婦人は驚いたが、冒険者ごっこでもするのだろうと話をながした。



 姉のリリアーネは親しい人からはリリと呼ばれ、彼女その年はまだ13歳である。そんな彼女、冒険者ギルドに所属しており、そのランクは最下級のFランク(ビギナー)である。しかし、実際の実力はというとLVも15となっており、こと戦闘となるとDランク(アイアン)、それもそのなかでも中位ぐらいの力を持つ。このぐらいの年齢の女の子にしてはかなり優秀な部類になるであろう。いや優秀である。


 実際今のリリと同じぐらいのLVを持つのは貴族の子どもぐらいである。貴族の親が優秀な冒険者を雇い、それに同行させることで安全に子供のLVをあげるのだ。


 この世界の冒険者におけるDランク(アイアン)とは下位冒険者を指し、難易度の低い迷宮の上層から中層を探索する程度の力の持ち主である。一般的に上層の魔物は弱いと言われているが、弱いとはいえ魔物は魔物であってそんなものとやりあう冒険者は腕力だけみても一般の、普通の大人の数倍はあるのだ。


 妹は年齢が5歳とまだ幼いがLVはといえば、少し下がるだけで、13もある。こちらもDランク(アイアン)並である。さらにこの彼女、なんとテイムのスキルを持っており、今はまだスライム1匹であるが、何かのタイミングで強力な魔物をテイムすることができたら一気に戦力が跳ね上がる。いや、そもそも、この幼女が街のおっさんたちよりも喧嘩が強いというのはどうもビジュアル的にはおかしいのだが。それがこの世界のLVというものの効果であり、LVの差は絶対ということなのだ。



 さて、そんな2人の女の子が笑顔でうきうきしなが向かう先にはなにがあるのであろうか。


 おいしーいご飯やさん? 


 違う


 あまーい、あまーい甘味屋さん?


 違う


 だれか、仲のよいお友達のところかな?


 それも違う。


 そう、彼女たちが向かう先は迷宮である。


 魔物が犇めき、数多の冒険者が魔物によってその命を散らす。時には人間がその同族の人間を襲う。そんな過酷な場所である迷宮である。


 

 彼女たちの迷宮デビュー戦である今日を迎えるにあたり実はいろいろあったのだが。この2人女の子の保護者である商人が実に過保護であり、安全第一で、だとか、2人では危ないだとかなにかと理由をつけて2人だけの迷宮入りに反対したのだ。


 けれど、少女達、とくにリリが頑張って説得したところ商人はとある落としどころをつけたのだ。それは彼が最近作った≪テレポーション(S)≫と言うものを何個か飲むこと、もし何かあってここに戻ったら迷宮はしばらく禁止と、二つの条件を付けた。この≪テレポーション(S)≫を鑑定してみると


 ≪名称≫  テレポーション

 ≪ランク≫  神級(S)

 ≪効果≫  HPが0になるとこれを飲んだ場所へ転移しHPが半分の状態で復活する。


 そして、2人が飲んだものは少し改良されており、どちらかが転移したらもう一人も連動して転移するようになっている。


 このアイテムを作った際その商人は、


 「テレポートとポーションだがらテレポーションか!? ってダジャレよりも・・・。いっそ、勇者よ死んでしまうとはなにごとじゃ、なんて名前もありか?」


 などとぶつぶつ独り言を言っていたらしい。鑑定にある通り、世界はテレポーションとして認識したみたいだが。


 

 そんなこんなを経て少女達はアカック近くにある【草原の迷宮】と言う場所へ向かうのであった。


 【草原の迷宮】とは、全20階層でできており、基本的に草原のフロアが続く。難度は低く、迷宮ボスの討伐は禁止されている。Cランク(ブロンズ)の上位冒険者であれば、1パーティーである程度の余裕を持って最下層まで行くことが可能だ。


 

 迷宮の入り口に着くとそこは多くの人が集まっていた。身に着けているものから大半は冒険者であり、


 「治癒師は募集してませんか~」


 「12階層まで飛べる人…銀貨1枚で、」


 「炎の魔術使えるLV15以上の人、いませんか?」


 「おまえ、そいつは俺が先に、っておい。」


 「ねぇ、君たち僕のパーティーに・・・。」


 などなど、仲間を募集する声からナンパにいたるまでさまざまな声が、様々な人間から聞こえるがその雑多な冒険者のなかでも一際特異なのか先の少女達である。


 能力がLVに依存するとはいえ、年端のいかない女児だけで迷宮にくるような人間はいない。いるとしたらそれは自殺志願者ぐらいである。そんな2人が迷宮に近づくと、やはりトラブルがやってくる。今しがた二人の目の前に現れた二人の野蛮な風貌の男達もその類だろう。


 「お嬢ちゃん達、ここに何しに来たんだい?ここは危ないよ。その杖と弓と防具をくれたら安全なところまで送ってあげよう。こう見えても俺たちブロンズなんだぜ。」


 「そうだぜ、俺たちみたいな実力がある冒険者に守ってもらうんだ、これなら安いぐらいだ。得したなお前ら。」


 その小汚い、冒険者であろう男が口を開く。明らかに誰がみても脅しだ。少女たちが身に着けているもは高ランクの冒険者からしたら貧相であるが、一般の人間からしたら割りと高価な部類である。しめて金貨70枚ほど。家族4人が余裕をもって1年遊んで暮らせるほどだから。


 子どもを脅して奪うには美味しい額と思ったのであろう。それが悲劇の始まりとは知らずに。


 2人の少女は魔物との戦闘経験もあり、迷宮にも1度付き添いとはいえ潜っている。ただ見た目の怖さに押されたわけではない。人がもつ悪意という慣れない感情、それに恐怖してしまったのだ。ふたりは互いの手を差さえ合うようにしてにぎりあい、その悪意への恐れから震えてくる。


 「あ、あんた達なんて、こ、こ、怖くないわ。だからら・あん、安心してララ。お姉ちゃんがついてるわ」


 「お姉ちゃん・・・。うん。」


 人がひしめくこのような場所で男達がなぜこのようなこができるのか、それは一つは冒険者同士のもめごとは当事者同士でいう規則があること、もう一つはこの迷宮においてブロンズの冒険者は実力者として扱われる。そんな男達を相手に見ず知らずの子どもを助けようとする気概のあるやつは少ない、いや、いなかった。


 にたにた笑う男達の前にあるじが危険にさらされていると感じたスライムのライムが飛び出す。


 「ピィー、ピィィーーー。」


 その小さな体を大きく見せるために少しでも体を伸ばし必死に威嚇を行う。


 「ら、ライム。だめ、危ない。」


 振るえてたララがその恐怖をうちはらい、ライムが素早く抱える。ララを守ろうとするリリのように、ララもまたライムのために己の内にある恐怖に打ち勝ち、ライムを守った。他者のために一生懸命に、恐怖に抗うことができる、心優しい似たもの姉妹である。きっとどこかの商人もそれを誇りに思って居るはずだ。


 しかし、それを見た男達がその笑みを強くする。もちろん感動によってでは、ない。


 「なんだ、これお前のか。まさか保護しようとしてる優しい俺たちに魔物を仕向けるとか、ありえないだろ。これはもう何されても文句言えんぞ、おい、わかってんのか。どう落とし前つける気だ」


 「お前らの装備だけじゃ足りようがない、お前たち奴隷になっとくか? どっかの少女趣味の変態が高く買ってくれるかもしれんぞ。」


 「あぁ、それならさっきの威嚇のことは許してやらんでもないな。はははは。」


 理論だって話しているようだがそれはすべて男達の妄想。それに付き合う気はないのだが、周りの人間はわれ関せず。彼女たちの能力はDランク上位程度。もし男達が実力行使してきたらその妄想通りになる確率がひどく高い。


 リリは以前、自分がとある大規模商店の息子に絡まれた時に助けてくれた人のことを思い出した。


 けどその彼女の英雄である男は今いない。


 しびれを切らした男達がその手を武器に掛けようとした瞬間、ライムがララの拘束を力づくでほどき少女達と男達の間に佇む。


 「おい、やる気か。このスライムがどうなって知らんぞ。手を合わせて神様に祈ってな、スライムがしっかり成仏できるようにな」


 最初は男も脅しだけだった思うが、ライムの登場によってそれは脅しではなくなった。言葉が終わるかどうかのタイミングで男が剣を振るう。腰に携えた剣を鞘から抜くと同時に切りかかる、どこかの世界では抜刀術と呼ばれているものであった。人間性は置いておいてこの男がCランクと言うのは嘘偽りなく、動きや気配から察するにはC1ランクとBランクに近い冒険者であることは明白である。


 一般論の話をすれば、冒険者のそれもCランク上位の冒険者の攻撃をスライムが受ければ一撃でその存在は消え失せる。周りの人間もみなそう思っていた、がしかし目の前に光景に声を失う。


 スライムの体を突き抜けるはずの刃はその体の形を変えるだけであり一向に切り裂き気配はない。むきになった男はさらに力を込めるのだが、これがいけなかった。男が力を込めるとライムも力をこめ、刃を押し戻そうとする。


 刃があたかもトランポリンで跳ねたかのように勢いをつけ男の体に戻っていく。男は慌ててその左手にあった鞘を盾に己の刃を受け止める。冷汗が止まらない、そして現状が把握できず疲労困憊する。


 考える隙を与えずライムが再び吠えると。男達は


 「今日は許してやるよ。スライムで遊ばせてもらったしな。あ、あばよ。」


 「おとといきなさい!!」


 「きなちゃい!!」


 この場を早く立ち去りたいのか若干言葉がまごつく。いかにも言い訳じみた言葉であるが、周りの人間は納得してしまった。それは本当はあの男達がCランクでなかったとしても冒険者でここにいるならスライム相手にダメージを与えられないはずはないからとわかっているからである。



 男達はスライム以下のレッテルを張られずに済んだのだった。これが幸運が不幸かといわれれば不幸であろう。彼らは今後最弱のスライムすら警戒しながら迷宮を行くのだ。その精神の疲労度は半端ないものになる。数カ月後にこの2人がそのストレスから仲違いをし、迷宮の餌になってしまうのはまた別のお話。まぁ、そんなことライムには、リリにもララにも関係話であるが。


 ちなみになぜライムが助かったかと言うと、実はとある商人がこのライムをかわいがっており、飲み水としてとあるポーションを日常的に飲ませていたのだが、その結果ライムは気づいたら種族が変化していた。



 ≪名前・LV・≫    ライム   LV 8  

 ≪種族・性別≫    ゴッドスライム  なし

 ≪スキル≫      完全物理耐性・魔術耐性(強)・種族偽装スライム


 ゴッドスライム:神聖な水を飲み強い魔力と得たスライム。種族としては竜腫と肩を並べる強者であるが数は圧倒的に少ない。それはスライムをゴッドスライムに変かさせるまでの神聖な水がないからである。ゆえにその強さもさることながら希少性もあり伝説のスライムと扱われてている。見た目は普通のスライムであり、さらに身を守るために自信のステータスを偽称するスキルを持つこともある。

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