勇者②
「だいじょうぶですか?」
戦いには全く参加していない、できなかった少女、リリが勇者たちに駆け寄り問う。その表情は暗い、それは勇者や魔術師の姿をみたからだろう。魔術師は両足の膝か下、片手の肘から下がきえており、勇者はアイテムの影響が幾分少なかったのか片手、片足は残っている。それでも、
「大丈夫なわけ 「やめなさい」」
語気を強め、怒るような強さで言葉を続けようとする勇者を女戦士が止める。
「彼女たちは戦力にならなかったことは確かだけど、迷惑にもなっていないわ。もともと彼女たちは部屋にはいなかったはず。怒りが収まらないのもわかるけど、こんな子達にそんなふうに言わないくてもいいんじゃない」
「すまない。つい、感情的になってしまった。」
「謝る相手が違うんじゃない?」
勇者は苦笑いを、女戦士は子供をからかうように言う。4人のうち2人も身体欠損をおこしてなおこのやりとり、さすがは勇者とそのパーティーである。
「2人ともすまない。悪気はなかった、許してほしい」
「や、やめてください、勇者様。みなさんのおかげでこうしても私たちは生きています。感謝こそすれ文句などありません。」
「勇者のお兄さんも、みんなありがとう。」
緊迫した雰囲気も一瞬で変わり、それぞれがそれぞれの現実を見始める。一番ひどいのは魔術師だ。彼女は自力で動くこともできない。それをフォローできるメンバーも限られてくる。リリは一人考え事、ララはふらふら歩いている。
「一度セレーナが地上に戻って救援を呼ぶというのはどうだろうか?」
「いえ、アルスの言うとおりこの動くのが難しい状況ではそれが一番確実に思えるが、ここは迷宮。私がいなくなれば守りはどうなるかわかりますか?このメンバーで魔物を相手に皆を守るのは治癒師であるマナには無理よ。」
「そうですわね、私はみなさんの傷を癒すことは可能ですが、ここのLVの魔物が出た時に皆を守る自信はありませんわ。」
「どうしましょうかね、さすがにあの二人だけで地上に戻るのは難しいと思われますし、そういえばここに入る前に消えたマオさんは大丈夫ですかね?私たちが心配できる状況ではないのですが、彼がここに来てくれたらと思ってしまうわ。それで私の手足を治しちゃうような薬でも、、、。ごめんごめん、私あのアイテムを使ったことこ後悔してないからね。みんなが生きて帰るには必要だったし、なにもできずに死ぬのは嫌だから。」
「僕もだ、先は取り乱したけど。、みんなを守りたいという気持ちに嘘はない。またもう一度同状況になっても僕はきっとあの杯を手にするはずだ」
激しい戦闘の末ひどい損傷を負ったもののこの場の雰囲気は悪くない。結果は最高ではなかった、けれどだれも死なず、生きて帰った。最低ではない。
だから、きっと皆は今が最低ではないと、ましだと思うこむかのように元気をだし仲間に声をかける。
後悔はない、自分たちは運がいいとそう思いこむ上に幾度となく会話のやり取りだ行われる。
しかし、その状況も永遠には続かない。いざ行動を移すとなると始めの問題に行きつく。どうやって助けを呼ぶかという。強がりといえ明るい雰囲気が突如止む。そこに
「えい」
1人の幼女の声がする。彼女は持っていた瓶を大きく振りかぶりそのなかにあった液体を魔術師にぶちまけたのだ。
ただでさえ、暗くなった空気が暗くなり、
「ララ、なにしてるの?」
驚愕に満ちた声で彼女の姉であるリリが声を荒げる。
「だって、お兄ちゃん、旅の時に私たちがけがしたらこうしてくれるよ?ポーション、だめだなの?」
驚きから同情のようなものへ、そして諭すように治癒師は言葉にする
「ララちゃん、確かに軽いケガならヒールポーションをかければ治るわ、でもこれだけのおお怪我だと」
「ねえ、マナ、マナ。見て、これをみて」
「どうしたの、ちょっと待っててねララちゃん」
治癒師が振り向くとそこには五体満足の魔術師の姿あった。
「見てってなに・・・・・・を。えっ、治ってる? 治ったの?ど、どうして。あ、」
何かを思い立ったように治癒師はララの持つもう一つのビンへ鑑定を行う
≪名称≫ ヒールポーション
≪ランク≫ 伝説級(A)
≪効果≫ 死んでさえいなければ全ての状態から完全回復可能
「え、うそ。本当に、それなら。もしかして」
治癒師はつぶやき続ける
「ねぇ、ララちゃんお願いそれを今度はアルスにかけてくれないかな?」
「お、おい。なんでそんなことを。どういうことだ?というか何がどうなっているんだ」
混乱する勇者をよそにララは、うんと頷くと手にした瓶を振るう。するとヒールポーションが勇者体にかかり、しばらくすると勇者の部位欠損もまるで始めからなかったかのように戻る。
「あれ?本当にどういうことなんだ。教えてくれよマナ」
「ふふふ、理由はわからないけれどララちゃんがAランクのヒールポーションを持っていたの。それで説明は十分かしら?」
「え、Aランク!? あの伝説級のAランク!? 本当にか?」
「セレーナは私の鑑定を疑うのかしら?」
「お前の鑑定なら間違いないが、なぁララ達はどうしてそんなものを持っていたんだ?というか誰から貰ったんだ?」
「えっとね、扉を開ける前にお兄ちゃん念のため持っておけって。なんかったら迷わず使えって。私も忘れてたんだけど、さっき思いだしたから魔術師のお姉ちゃんにかけたの」
さも当然のように言うララ。このAランクのポーション、名前の通り伝説上の物して感がえられている。その下のBランクの物でも国宝級、滅多のことでは使われていない。最後に使われたのが確か、若き英雄王が病で若くして倒れそうなとき、国がなくなくそのBランクポーションを使っ時であり、それがだいたい50年前である。そんなものを考えなしに使うとは末恐ろしい子である。
それを軽くお願いした治癒師ももちろん大した女である。
「マオさんか、あの人はなんか謎だな。次に会えたらいろいろ聞いてみようか。まぁ、ともかくこれで動けるようになったんだとりあえずは地上へ戻ろう。二人のお礼もその後話させて欲しい」
「うん、大丈夫だよ」
きっとよくわかっていないララが返事をする。そして、先は開かなかった扉を押すと今度はゆっくりとその扉が開き、その先には1人の商人が立っていた。
次はまたマオの視点に戻ります。
初めての試みで視点を変えてみました。とにかく勢いで書きましたので不自然な点多くあるかと思います。
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