事前リサーチ②
顔に何かがあたったような、そんな気がして僕は目を覚ます。窓から涼しげな風が入ってきたようだ。日は傾き、街のにぎわいも落ち着き、別の雰囲気をかもしだしている。
気づかない間に寝ちゃったみたいだな。特にやらないといけないということはないし、とりあえず明日やることを決めておこう。
あ、夕食どうしようかな。
まず、始めに気になるのは二人のスキル、エンチャントとテイムだ。次にアッカク以外の街のこと。
二人がスキルに目覚めるまでしばらくの間は冒険者のように生活してみようと思う。あわよく役立つ商品が手に入ったらラッキーぐらいで。まずは商業ギルドにいっておじさんに聞いてみよう。マジックアイテム関連なら知っているかもしれない。なんと言っても学問で有名な街の商業の中心なのだから。その後冒険者ギルドに行き、テイムのこととアイテムを収集するのにお勧めの場所を聞く。
まぁ、こんなもんだろう。まとめたようでまとまってないとか言わないで欲しい。
これで、今日は寝るだけだ。
トントン、トントン。
「すみません、マオさん。お時間よろしいでしょうか?」
どうやらアリーシャさんが訪ねてきたようだ。一瞬夕食かなとも思ったが、寝ていたため今日は頼んでない。心当たりがないのだが、一体なんの用だろうか。中へどうぞと促すと以前と違いすんなりと入り僕と対面するように椅子へと腰を掛ける。
アリーシャンからの好感度が上がっているのか。いやいや、信頼だろう。と思いなおす。
「今日尋ねてきた子ども達のことなんですけど、お知り合いだったんですか?」
僕は今までの事、絡まれていたリリを助けたことからすべてアリーシャさんに話した。特に隠さないといけないことではないので、問題はないはずだ。なのに、アリーシャさんは驚いた様子で
「見ず知らずの孤児のためにDランクのヒールポーションを5本も渡すなんて、それだけじゃなくて今後のお世話も約束しちゃったんですか? えっと、大丈夫ですか? 騙されたりとしてないですよね? それよりもマオさん人が良すぎですよ、気をつけてくださいね。世の中悪い人もたくさんいるんですから」
「ご忠告ありがとうございます、アリーシャさん。あなたみたいな人と知り合いになれて僕はうれしいですよ。あの子たちはこれから僕の商売の手伝いもしてくれるということなので、まぁちょうどよかったというのもありますし。僕がお店開いたらアリーシャも一緒に働きますか?」
「本当ですか? 絶対に雇ってくださいね。この宿よりも好待遇を期待してますわ」
冗談、社交辞令のつもりで口にしたのだが、なんだか現実になりそうな予感がする。それほどまでに彼女の口調ははっきりと、念を押すかのようである。
その後しばらくの間あれこれと話すと、彼女は満足したのか席を立ち軽快に部屋を出ていった。
僕のことを心配してくれたってことかな。また、タイミングが合えばこの恩を返したいと思う。旅で見つけた珍しいものなんていいんじゃないかな。旅の目的に一つ項目が加えられた瞬間である。
少し遅れたが今日も夕食を準備してくれるみたいなので、外に出る必要は完全になくった。この丘の夕暮れのご飯もしばらく食べれないと思うと寂しくなるな。旅立つまでにしっかりと味わっておこう。
出発前日、僕は目を覚ますといつも通り朝食をとり、商業ギルドへ向かう。
「おじさん、おはよう」
「おぉ、坊主。そうだ、前回驚きのあまり私忘れてしまったんだが、お前さんのランクアップをしておくぞ」
商業ギルドに登録したときはこっちの世界に来て間もないころであり詳しく聞く余裕もなかったため完全に流し聞いていたのだが、商業ギルドでは冒険者ギルド同様、ギルドメンバーはランクわけされる。初心者からF、E、D、C、B、A、Sと熟練していく。
冒険者はランクが上がると受けれる依頼が増えるだけでなく、冒険者として信頼も大きくなり貴族など上位階級からの依頼も受けられるようになる。対して商業ギルドではランクが上がるとギルドからお金を借りるときに優遇してくれたり、客からの信用が得られる。こちらの信頼は一種のブランドみたいなものである。このランクのお店ならこれぐらいだよね、と評価されるのだ。
もちろん、両ギルドともランクに関してこれだけではないのだが、今は割愛しておく。
おじさんからギルドカードを受け取るとそこには
≪名前≫ マオ
≪所属≫ 商業ギルド
≪ランク≫ E
≪資金≫ 金貨 97枚
≪店舗≫ なし
≪主要品≫ ポーション類
と、確かにランクがFからEに変わっていた。ランクが上がったからと言って特に今までと変化があるわけではないが、少しうれしい。ギルドカードにある資金とはギルドに預けられているお金で金貨換算で表示される。銀貨以下は表示されない。
今回は魔石の大量の売り込みがあったのでそれが評価されたみたいである。
「坊主もこれで一人前の商人だな。これからもがんばれよ。もし、お店を立てるなら声かけな、力になるぜ。」
「ありがとうございます。お店と関係なくはないのですが、エンチャントについて聞いてもよろしいですか」
僕がそう尋ねるとおじさんはおもしろそうに次を話せと目で言ってくる
「えっと、僕もお店を開店しようと思っていま動いているんですけどそこでマジックアイテムを仕入れたいんですね。話を聞いてるとエンチャントというスキルに行きついて、それがどのようなものか知りたいと思いまして」
「そうだな、エンチャントのスキルはそもそも珍しい。ごく簡単な付加をできる職人でもたぶん国の要職につけるぐらいだ。そして装備品に基本属性を付加させるというレベルは聞いたことがない、仮にあったとしても国が情報を規制しているだろうな。魔法剣が簡単に作れてしまうという事実だけで簡単に戦争が起きる。そして、お前さんがもっているマジックリングのような複雑なものを作れる人物なんざ伝説上の人間だ。」
「え? そしたらこれはだれが作ってるんですか?」
一瞬当てが外れたと焦ったが、それを顔に出すことなく情報を得られるだけ得るために質問を続ける。
「それらのほとんどは迷宮から持ち出されたものだ。迷宮のマジックアイテムがどんな過程作られているかは知らないが、迷宮は古代文明の宝物庫でその一部だとか、高位の魔物が作成しているとか、異空間へ通じる道があるとか、根拠ない噂なら山ほどあるぞ。まぁ、所以はおいといて、実際そういった貴重なマジックアイテムが迷宮で手に入れられるということは事実だ。もちろん危険も付きまとうがな。」
「なるほど、となるほと有意なマジックアイテムを手に入れようとしたら迷宮に潜るのが確実ということですね。それと話は戻りますがエンチャントには熟練度やLVといったものがあるんでしょうか?」
「すまんが聞いたことがないな、ただ、基本的に全てのスキルにはランクが存在するからエンチャントもあるとは思うが」
「ありがとうございます、とても参考になりました」
その後僕は明日この街を出ることを伝えるとおじさんは残念そうにしたが、お店はこのあたりで開くつもりと伝えるとすぐに元気なった。
冒険者ギルドで聞きたかったことも一部すでに聞くことができたので、一度宿に戻り昼食をとることにする。少しでも多く丘の夕暮れのご飯を食べるために出発まではすべて宿で食事をするつもりだ。
感想・ブクマ・指摘お待ちしてます。
引き続きこちらの話をよろしくお願いします。