オープニング
《オープニング_価値あるものは瞳に映す》
世界第三次魔王討伐戦争、魔王の一角、魚人族のロロ=ツヴェルフが倒れ、七魔王は六魔王になった。そんな時、ムヴァで一番大きな大陸、フィリア大陸の南に位置する町、カエナで一人の子供が生まれた。
子供は人間と身元の分らぬ者の子供だった。
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(ここは、何処だ?)
一人、俺は目を覚ました。
チリチリと目に差し込んでくる光は太陽光なのか、温かい。
まずいな、朝まで寝落ちしてしまったのか?最悪学校に間に合わないか…。
起きてすぐにわかったのは、此処は自分の部屋では無いと言う事だった。
そこは殺伐とした風景、いや、驚くほど殺風景な部屋だった。
堅そうなベッドに、薄い布一枚、簡易過ぎて手を乗せたら壊れそうなテーブル。
キッチンというには相応しくない穴を掘ったものに、燃え尽きた薪、台・・・
部屋であったが、日本で平凡的に暮らしてきた彼、卯月シンにとっては不便すぎた。
もう16の彼は寝室で飲んでいたオレンジジュースと読んでいた魔法書(中二病を抉らせた結果)を両手に立っていた。
(さっきまで、魔法の練習を・・・え、何処?)
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【遡ること少し前の事・・・・】
「…う~む、この魔法式でいいはずなんだがなぁ………」
一人、自宅で魔法の練習という名の一人遊びをしていた彼、小学6年生のシンは地球に有りもしない魔法をいつかは出来ると信じ、練習し続けていた。怪しい本、「魔術大全」を古本屋で購入して以来乗っている全ての魔法を試していた。
が、出来るはずもなく、彼は現実を見ないためこういう考えを導きだした。
「俺には魔力が少ないんだ。」
どうしたらこの答えになるのかは知らないが、これは彼の答えだから仕方がない。
余程魔術信仰者のようだ。
ということで魔力増大魔術を行なうために、ネットで竜の爪と死樹の葉、合成獣の血を買いあさり、何度も繰り返した。そして何度も魔法を使った。
…が、もちろん出来る訳がなく、小学生ながらに飽き、そのまま2年が過ぎた。
そして中学2年生、またもや中二病が発症し、魔術大全を片手に聖なる果実の果汁を持ち、詠唱を始めた。本気でだ。
「おわのんにし、あyすうよんにs、えらw、おいおもおにあげm、えあまちきいびちもうぇらw…。」
頭が痛くなるまで意味深な詠唱をつづけ、終わると同時、白い光に包まれ、彼は日本から姿を消した。
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「よく来た愚弟!」
「お前誰だよ。愚弟とか調子に乗るなよ?」
「はっはー、威勢がいいな!」
俺は困惑していた。
うん、まず言わせてもらおう。………お前誰だよ
俺が今まで会った中で一番可愛かった奴はくだらない程美し可愛い女が立っていた。
ソイツは女神みたいな銀に輝く布を纏い、長い赤髪を引きずり、ギラギラとした紫の目を俺に向けたまま俺の聖なる果汁を吸っていた。(オレンジジュース)
何どさくさで盗みしてんだよ。
女が立っていたのは、白い空間。
某錬金術師の神空間と酷似しているので思い浮かべてくれれば大体合ってる。
「盗みではない、献上品だろう?お前は私を召喚した…いや、お前は勇者召喚されたのか。ギア帝国にな。」
「…召喚?俺は魔術大全の《魔術転移》を試しただけだ。お前のような矮小な者に出会う筋は無い。」
「矮小なヒューマン風情がそれをいうか!気に入った!この女神カルテがお前をチートにしてやろう!」
「チートは嬉しいが気に入るな。あと此処はどこだ。」
「此処は女神の世界、又は世界の裂け目。お前はこれから異世界に行ってもらう。」
「……………ふぁ?」
そこで意識は途切れた。
ふわり、ふわりと漂っているように意識を失い、長い年月がたったような感覚が続いた。
で、冒頭に戻るわけだ。
もう意味わかんない。女神チネ!
というわけだった。