眠気には勝てなかったよ……
「眠気には勝てなかったよ……」
連日の残業疲れでボヤける視界のなか、やっぱりあの会社黒いとこだったなとか、これ寝たらヤバいやつかもとか、僕は睡魔の腕に誘われながらそんなことを考えていた。
「ああ明日の仕事、が……」
ゆっくりと意識が薄れていき、目が覚めたら……
僕は神様の前にいた。
未だに眠気を訴える頭を抑え、この白一色の空間を見渡す。
「儂は神だ。まぁ雰囲気でわかるじゃろう?この度貴様をここに呼んだのは他でもない、貴様のこの先についてのことだ。お主は本来、この聖域に近寄ることもできずに輪廻の環のなかに送られ、そのまま他の亡者と共に転生する筈じゃった。しかし、輪廻転生器が誤作動を起こしてな。何とか壊れるのは止めたが、お主の魂だけ漏れてここに流れ着いてしまったと言うわけじゃ」
口調と二人称がコロコロ変わるのは何故なのか、聞きづらいし微妙にイライラする。
それにしても……
「長い……Zzz……」
「ね、寝ているのか貴様。お主、この神の前で、この重圧の前で眠る者など歴代の神の話でも聞いたことがないわい。貴様のその性根の図太さは称賛に値するが神の前で不敬であるぞ。お主は輪廻の環に戻せないから儂の管理世界の良いところに送ってやろうと思っていたがやめじゃ。魔王として、辺鄙な土地へ送ってやる。まあ儂も神じゃ。多少の慈悲として魔族には貴様を敬う様にしておいてやろう。丸腰では直ぐに死ぬじゃろうからお主に合った能力もやろう。そろそろ貴様の魂も限界が来ているようだから最後に呪いをくれてやる。それじゃあ全部聞いてないじゃろうが時間じゃ。行ってくるが良い」
次の瞬間、足元の空間に穴が空き、僕は世界に落とされた。
「しかし、魔王だけではつまらんじゃろう。適当な魂を輪廻転生器から引っ張ってきて、勇者として送ろうか。いや、召喚方法だけ伝え、向こうに任すのも悪くないじゃろう。その方が良いな、そうしようか。早速準備に取り掛かるとするかのう」
神は誰の為でもなく動き出した。