城下町
随分間が空いてしまいました、ごめんなさい。
会議の後、優太は更にイライラしていた。騎士団と魔法隊から護衛が交替で2名ずつ付けられどこに行くのも(お風呂とかトイレとか)もずっと付きっきりだったからだった。夜も部屋の中に居て優太でなくても息が詰まってしまいストレスになるのは当然であった。
別にセレガスやオースティン、警護の人達が悪いわけでもないことは優太でも分かっていたしいつ賊が入ってくるかもわからないからずっと付くのも理解は出来る。
ただ自分が何処かに行く度にずっと来られるのはたまらない、まあそういうことだった。
「だからさあ、何とかならない?」
「ん~?まあそう言われてもな、お前の為の護衛なんだから。」
「それはわかってるけどお~」
セルロアに相談する優太、間違ってるのか間違ってないのかはともかく相談する相手は他にいなかったからしょうがない。
ちなみに今はセルロアと一緒ということで護衛と侍女ズはドアの外で待機中だが実のところは聞き耳をダンボのようにして聞いていたりする。
「やめましょうよ~、陛下とユウ様に失礼ですよ……」
必死に止めようとするミリアを余所にヴァネッサとマリオン、警護の騎士団のアリサとクラレ、魔法隊のソーニャ、はるがドアに引っ付いている。
「ミリアはわかんないかなあ?これも姫様の為なのよ?色々聞いておいて後からアドバイスして差し上げるのよ。」
「まあ……ヴァネッサのいうことも一理ありますわね、仕方なくですわ。」
周りの警護の四人も頷く、言い訳か本心かは分からないが……
「ストレス溜まっちゃうよお……なんか解消する方法ないの?」
「ストレス解消?何処かへ遊びに行くとかか?だがお前はダメだぞ、街中は特に危険だし。」
「え~!?言っておいてそれはないよ!いいもん!テレポーターで瞬間移動するから!」
「やめろ!大問題になるだろう?わかったわかった、じゃあ城下町に連れていってやるから、それで我慢しろ。な?」
「う……うん、それなら…まあ……」
優太の頭を撫でるセルロア、頭の中は男だし自分が甘えすぎてるのも理解してるがセルロアに甘えたくなってしまう。でも何故かは優太には解らなかった。
「おっ……いい雰囲気ですねえ……」
「……聞こえませんわ……もう少し開かないのかしら…」
ヴァネッサとマリオンに
警護のアリサとソーニャが答えた。
「いっそのことこのドア壊してしまいますか?」
「いえ、魔法で向こう側からは普通のドアでこっち側は透明にしましょう!」
マジックミラーに出来るらしい、なら最初からやっておけばよかったのに……
「ちょっ!押さないでよ!」
「誰よ!押してるの!?あっ!!」
ドアを開けすぎて全員が押し出され部屋に倒れこんだ、優太は引きつりセルロアは優太の頭を撫でたまま固まっていた。
「ひゃあ!?」
「お?お前らあ!?」
「 「 「 「 「 「 「す、すみませんでしたあ!!!!!!!」」」」」」」
6人は慌てて土下座した……
まあそんな事があり優太は城下町に出掛けることになった。
お供はセルロアとミリア、じゃんけん(優太が教えた)で決まったクラレとはるが決まった。二人とも大人しく表立って喜ばなかったが内心は優太と一緒に城下町ということでうっひゃあ!ひゃっほう!!という感じだった。逆にアリサとソーニャはガックリしていた……
お留守番のヴァネッサとマリオンにお土産を頼まれてさっそく出掛けようとすると魔法隊参謀、オースティンに出会した……
「……陛下、聖女様……お出掛けですか?」
「……ああ……城下町にな。」
「城下町?聖女様もですか?」
「………まあな……」
小五月蝿い奴に会ったなあと思うセルロア、コッソリと出掛けようと思ってた矢先だった。
「いいですよ、私も御一緒致します。」
「 「 「 「はあっ!?」」」」
「何か不都合でも?」
「い、いや……別に……」
そんな訳でオースティンの警護にあたるマーガレットも加わり7名で城下町に……あっ、ノジルも入れると8名か……
『ノジルはこの世界の街を見たことあるの?』
『まあないわけではないな、昔に……な』
『ふ~ん……』
ローデンファルムの城下町は城の塀に囲われていて決して危ないわけではない、人の出入りが激しく普段はあまり厳重に警備はしていないが優太がサルス皇国に狙われているので今は特に出入りは入念になっていた……
「おお~!」
「ここがローデンファルムの街です。メインストリートには市場、武器屋、雑貨屋、ギルド等があります。」
現代の街並みと然程変わらないが矢張どことなく違っていた、歴然と違うのは赤や翠の髪の色をした人や人間ではない所謂亜人と呼ばれる人種がいる事だった。
初めて見る優太はウロウロとしながらそれを眺めていた。
風景は西洋の街並みに似ているがもう少しメインストリートを外れるとアジア風になっていた。ダウンタウンといったところか。
「ユウ、どこか行きたいとこはあるか?」
セルロアが優太に問いかける、優太は目をキラキラさせながら周りを見た。
すると人が出入りしている建物が目に入った。
「あれは……?」
「ああ、あれは冒険者ギルドだな。冒険者として活動する時に登録する所だ。」
「へえ~」
「ユウは行かなくていいからな?冒険者になる訳じゃないし」
「なんで~?」
「なんでって……聖女なんだから無理して冒険者になる理由があるか?」
「それは……行ってみないとわかんないけど……行くだけなら行ってもいい?」
「………本当に行くだけならな?」
渋々なセルロアの許可を取り冒険者ギルドに入る一行、中はまるで役所の様でロビーも広々としていた。
奥には酒場があってまだ2、3人くらいしかいなかったが夜には冒険者がたくさん集まり情報交換されるのだろう。
正面にはカウンターがあってその横には依頼書が貼ってあり、それを見るだけで優太は冒険心を掻き立てられてしまう。
そんな優太を見ながらセルロアは外に出すのは何とか避けたいと思いギルドの支店長を呼んで説明をさせる事にした、危険な話をすれば諦めるだろうと思ったからだった。
「ギルドの長のドミニクでございます、態々(わざわざ)陛下と聖女様にお越しくださり感動致しております。」
応接室に通されてセルロアと優太がソファーに座る、後の護衛達は後ろに立っているが結構な人数なので窮屈そうだ。
ギルド長のドミニクは40代くらいで白髪がかなり進行しているが薄毛ではなく寧ろ長い方だ、ギルドの長だけありスーツみたいな背広を着ていて恰幅のいい男性だ。
「あの……ここでは何をしているんですか?」
「ギルドでは主に冒険者の手助けですね。未開のダンジョンの探索とか情報収集、依頼の手配などです。」
自分の記憶があまりない優太でも何だか面白そうなのがわかりワクワクしている、横目でその様子を見ていたセルロアは溜め息を吐いていたが……
「僕にも何か出来る仕事とかありませんか?何でもいいんですけど!」
優太が口走った為にセルロアやそこにいた全員が驚いた、勿論ドミニクもだったが優太を見据えて言葉を吐く。
「ユウ……何故そんな事を言うのだ?聖女では不服なのか?」
真剣な顔をし問うセルロア、優太の気持ちが解らない訳ではないがやはりどうしても聞かなくては措かずにいられなかった。
「そうじゃない……そうじゃないけど……」
言葉に詰まる優太、本当の事を言っていいのかどうしようか迷っていた……
「聖女……ユウ様は外の世界がお知りになりたいのですか?」
それまで黙っていたオースティンが口を開いた、セルロアは普段あまり口を挟まない彼女を見てから目線を優太に替える。
「ユウ……そうなのか?」
「うん……僕はここへ来た目的を見つけなくちゃいけないんだ……何かはわからないけど……闇の使い手の事もきになるし……サルス皇国についても色々知りたい……」
セルロアは少し考えて決断を下した、苦渋の決断だった……
「わかった……ならば好きにするがいい……ギルド長、ユウを冒険者登録してやれ。」
「えっ?」
「陛下!?」
セルロアの発言に優太も、その場に居合わせた全員が驚いた。後ろを向いたセルロアに何と声をかけたらいいか解らない優太だった……