深い森
「土のゴーレムだと!?なんで庭園に!?」
薬草園に土の塊になって人の象どっていて突然薬草園の中に現れたゴーレム、キュリアの舘から100メートルは離れているがその大きさは目で見て判る程だった。
「ユウはここにいろ、マリオン達はユウを護れ、キュリアは俺を援護しろ!」
セルロアが的確な指示を出す、が優太は前に出ようとセルロアの横に立つ。
「僕も……戦わせて?」
「ダメだ!お前は足手まといになる、キュリアは攻撃魔法が使えるが恐らくお前は攻撃魔法は使えないだろう?ここは俺に任せろ!」
優太が攻撃魔法が使えない事を勘で察したセルロア、その前に好きな人を護りたいという思いもあった。
「行くぞ!キュリア!!」
「セルロア!待っ……!」
「ユウ様!!」
ヴァネッサとマリオンに抱き止められる優太、セルロアとキュリアはゴーレムに向かって行く。
近くに行けば行くほど大きさが分からなくなってくる、セルロアが足元に着いて上を見ると頭が見えない……剣を取り出し足に突き刺すがゴーレムは魚籠ともしなかった、神経が通ってないのか?骨がないのか?何れにしても核を叩くしかないだろうと思ったセルロアはゴーレムの体を足掛かりに掌まで跳んだ。
「キュリア!魔法でこいつの脚を攻撃しろ!」
キュリアに指示したセルロアは更に跳び上がり心の臓に剣を突き刺す!
キュリアは頷き攻撃魔法【フレイム】を唱える、火属性の魔法だ、だが大して効いていなかった。それどころか焼かれて硬くなってしまった……本来土であるゴーレムは水魔法に弱いがそれをキュリアは知らなかった。
「??」
「何をしている!水魔法だ!」
「!?」
慌てて水魔法を唱えようとしたがゴ―レムが右手を高く上げ攻撃を仕掛けようとしている、避けようてして詠唱が止まってしまった!!
「セルロア!キュリア!!ねえ、ヴァネッサ、何とかならないの!?」
「ユウ様……申し訳ありませんが私達の力では何とも参りません……」
「僕も行くよ!戦う!!」
「いけません!陛下からの御命令に背く事になります!」
「でもっ!マリオン!」
「直に王宮騎士達が駆けつけますからそれまでお待ちください。」
「ううっ……」
セルロアの捨て身の攻撃もゴーレムには効いておらず剣を突き刺したまま、またそれを足掛かりに今度は肩まで飛び上がる。
腰の小剣を取り出して頚椎や顔を狙う、が一向にヒットする気配がない……
一方、キュリアはゴーレムを避けながら呪文を唱えるが水魔法は効き目が薄かった。
核は別の場所にあるのか……?と思い立つセルロア。
ゴーレムは急に動き出し優太達の方に向かっていった!
「まずい!ユウ、逃げろ!!」
セルロアの必死の叫びも束の間、どんどんと距離を縮めていく……
「こっちに来る……」
「ユウ様、逃げましょう!!」
「僕……逃げないよ!」
「そんな、ユウ様……」
必死になって優太を逃がそうとする侍女とミリアに引っ張られるが優太は動こうとしなかった、ここで自分がなんとか食い止めようとしていた……
『ノジル、どうにかならないの!?このままだとみんなやられちゃうよ!!』
『ふむ……たぶんゴーレム…ソイツを操る奴はお前を狙ってるんじゃろ?』
『僕を?なんでさ?』
『さあなあ?分からんが……取りあえずここから離れたほうが良さそうじゃな。よいか?今から言うことを実行しろ。』
『う、うん……』
ノジルはある作戦を優太に教えた。
目の前にまで来たゴーレム、肩にはしがみつくセルロアが乗っている。
「ユウ!!早く逃げろって言っただろ!?クソッ、セレガスは何モタモタしてる!」
「ユウ様!危ない!!」
ヴァネッサが叫ぶと同時にゴーレムの腕が伸び優太を掴んだ、確りと握られた腕は硬く優太の力ではどうにもできなかった。
「く……うっ……」
「ユウ!!大丈夫か!?」
「セ……セルロア…僕は…大丈夫だから……一旦ゴーレムから 離れて……!!」
身動きが取れない中、セルロアに呼び掛けるがセルロアは優太が掴まれている手に跳び移ろうとしていた。なんとか手から離れようとすると後から追ってきたキュリアが呪文を唱えながら走ってきた。
「キュリア!呪文をここに当てろ!!」
セルロアは剣をゴーレムに突き刺し手が緩んだ隙に優太に抱きつきジャンプした!
追いついたキュリアは呪文を唱え終わると水魔法の呪文を叫んだ。
「ウォーターボム!!」
キュリアの掌の上にバレーボールくらいの大きさの球形の水の塊が出来ていた、それを剣めがけて投げ込むとゴーレムの腕の廻りの土が溶け始めた!
セルロアの腕の中から抜け出した優太は怯んだゴーレムに向かって叫ぶ!!
「テレポーター!!!」
するとゴーレムの足下に魔方陣が描かれゴーレムはその中に沈むように消えていった……
腰が砕けたようにその場に座り込んだ優太はちょっと落ち込んでいた、最初の計画と違っていたからだった……
『ゴーレムを僕ごと瞬間移動させる?』
『そうじゃ?さすればゴーレムを送り込んだ奴の正体も判るしここからも出られるぞ?』
『ここから……出る?』
『そうじゃ、そうせば目的も見つかるのが早くなるぞ?』
『それは……そうかもしれないけどさ……』
という会話が優太の脳内でされていたが結果、ゴーレムだけがテレポートしてしまった……
「ユウ!!」
「ユウ様!」
皆に呼ばれはっとなる優太、気がつくと侍女たちに抱えられていた。目の前にはセルロアがいる……
「ユウ……よかった、無事で……」
「セルロア……」
セルロアに抱き締められ侍女たちに支えられながらまあいいかと思う優太だった……
『ふん………』
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ゴーレムの受け入れ先では主によって駆逐されたゴーレムが横たわっていてその側には一人佇んでいた……
「意外にしぶといな……あのユウという聖女は……」
拳を握り締め樹齢百年の樹木を殴ると簡単に音を発てて崩れ落ちた……
「あいつがいると厄介だな……次はどうやって攻めるか……」
深い森の中にそんな独り言が微かに響いた………