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明日世界が変わるといいな  作者: あさたろ
第一の世界 クリスタリア
2/9

戦争

どすんっ!


 ドアは宙に浮いていて気づかなかった優太は思いきり足を踏み外して地面に腰から衝突してしまった。


 50センチくらいだったけど……


「いたた……」


 お尻を打ってしまい擦っているとさっきまであったドアは消えていた。


 周りを見てみると平地に唖然としている人達の群れ……

何の集まりなのか勇ましい武人が100人以上居た。



「ここどこ~!?」



 回りはゲームのRPG (ロールプレイングゲーム)に出てくるような鎧を着た人達で一杯だった。

 立ち上がって裾を払う、するとさっきまで着てた服と違う事に気が付く優太。


「女、何処から入ってきた?」


 大勢の人の中を潜り抜け目の前に銀の鎧にマントを羽織った人が優太の前に立った、顔はレッグウォーマーみたいな布で覆われていて分からなかった。


「え?女?」


こんな格好をしてるからかなのかなと思った優太は突っ込みはしなかった。

 優太はいつの間にか白いワンピースみたいな服を着て木靴を履いていた。どう見てもこの場に相応しくなかった。どうしてこんな格好をしてるのか首を傾げる。



「あ、あの……ごめんなさい、僕……道に迷ったみたいで………」


「僕?お前は女ではないのか……?」


「あ、それは……」


 困ったな、こんな格好で男なんて言ったら変態扱いされちゃう!


 なんて言おうか戸惑っていると丘の向こう側から無数の大群が押し寄せてきた!


「敵襲です!!」


 兵士の一人が大声を挙げる。こっちより数が多そうで中には見たことない動物に乗っている人もいた。


「不味いな……全軍!迎え撃て!!」


 マントの人が言うと今まで待機していたこっち側の人達が一斉に動き出した、優太はマントの人に抱き抱えられて馬の様な羽の生えた動物に乗せられた。


「陛下!御指示を!!!」


 後ろから声を掛けられ優太の前に乗ったマントの人が反応する。右手を掲げ大声で指示を出す。


「両側から攻めろ!セレガス軍は右から、オースティン軍は左から、挟み撃ちする!!」



 その掛け声で軍が2つに割れ丘に向かった、陛下と呼ばれた人はその場に留まり状況を見守る。

馬から落ちないよう陛下に捕まり背中ごしに見る。


 その場所から丘の全貌が良く見え両側からこちら側の軍が襲いかかる。


 最初は優勢の様だったが暫くすると押され出し兵士たちが倒れだす、味方も敵も関係なく……


「くそっ、不味いな……」


 陛下が嘆くように呟いた、元から勝てない戦だったのだろうか、丘の向こう側からはどんどん兵隊が押し寄せてきた。


「戦争……?」


 それは漫画やアニメ、物語でしか見たことのなかった人と人との争いだった……

 戦争はどちらが正しくてどちらが間違ってると言うことはなくただお互いが自分達の私利私欲の為にやっている事が殆どらしかった。

 空飛ぶ馬から初めて見る異世界の景色は広大に拡がっていた、その中でちっぽけな人間達が争っているのは優太にとってとても馬鹿馬鹿しく思えた。


 空上から村が見えた、ここからだと家が何件か立ち並ぶくらいにしか見えなかったが辛うじて村らしく見えた、村からは火や煙が立ち上ぼり広場からは逃げ惑う人々が見えた。

 その中に見た目10才くらいの子供が大人3人に襲われていた、何故そんなことになっているのか優太には分からなかったがいてもたっても要られなくなった。


「陛下、陛下!降ろして!!あの村に降ろしてっ!」

「な!?なんだ!?村だと!?お前の村か?」


 掴まっていた陛下を叩き村の方角に指を指し示す。


「違うけど!緊急なんだよ!!早くっ!!」

「わ、わかったから引っ張るな!!飛馬が暴れる!!」


 フラフラになった飛馬が漸く着地する、と同時に暴漢逹に駆け寄った。少し距離があったが自分でも驚くくらいにみが軽く直ぐ様その一人に掴みかかったが軽くあしらわれた。


「なんだ、テメエは!?」

「その子をどうするつもり?何してたの?」

「はあ!?テメエには関係ないだろ!?」

「おい、待て…こいつ中々器量好しじゃねえかよ。こいつも連れて行こうぜ。」

「人さらいなの……?」

「はあはあ……お前足早いな……此方は鎧着てるんだから少しは遠慮して走れよな…」


 息を切らせながら陛下も優太に追いつき庇うように立っていた。


「なんだ、新手のナイト気取りか?痛い目みたいのか?」

「お前ら戦争専門の盗賊だな?戦地に行って近隣の町や村から金品を強奪し人をさらい奴隷に売り捌く……そこの娘も奴隷にするつもりだったんだろう?」

「え!?本当に?」

「ちっ……誰だ?お前……」

「余か?セルロア・ヴィッセル・ローデンファルム、この国、ローデンファルムの王をしている。」


「「「はあっ!?」」」


 3人が同時に驚いている、陛下、セルロアと名乗った男は顔を巻いていた布を取り顔を見せた。キリッとしたイケメンで見ればまだ20歳くらいだった。そっか。陛下ってこの国の王様だったんだ。と納得した優太だった。

 油断した空きに囲まれていた女の子をこっちに引き寄せて保護した。


「大丈夫!?」

「あ、ありがとう…ございます……」

「ちょっ!あっ!そのガキを帰せよっ!!」

「ならんな……戦の最中にそのような狼藉、全て終わった後に処罰を決め色々追求してやるからそれまで待ってろ……」


 と、陛下が言った後に後ろから騎士達が出てきて盗賊たちを連れていった。


「はあ……全く、無茶をするな、お前は……」

「ごめんなさい……陛下。」

「俺の事はセルロアでいい、そう言えばまだ名前を聞いてなかったな。お前の名前は?」

「え?あ~、ユウ……ユウ・ヤシロです……」


 優太は咄嗟にユウと名乗った、流石に優太っていう名前は今のこの身体では不味いだろうと思ったからだった。


「ユウか……わかった、ここに暫く居てくれ、俺は戦争を停めなければならない」


 セルロアは力強く頷いた、この国の王である彼は一ヶ月前前王である父親が急死してそのまま王位を継いだ、そのゴタゴタの間に隣国のサルス皇国が攻めてきていた。まだ内政も調わないままの出陣だった。


 優太は飛馬に跨がりまた空上へと戻っていったセルロアを見送りながら残された女の子を抱き締めていた。


「あの……ありがとうございました…私はミリアって言います。」

「うん、僕はユウ、お父さんとかお母さんは?どうしたの?」

「お父さんとお母さんは……殺されました、先程の奴等に……私は生かして売るつもりだったみたいで…」

「そう……ごめんね……」

「!?いえ、ユウ様のせいじゃありませんから。」


 その身体は震えていて痩せ我慢をしているのが解る、ミリアだけじゃなくこうしている間にも戦争孤児になる子がいる……そう思うと自分が何か出来る事があればと考えていた。



 21世紀から来た優太にとって戦争自体過去の産物でしかなかった、記憶がない今は尚更だった。しかし此処では現実に戦争が起きている。

 空上にいたセルロアは敵の飛馬や飛竜と戦っていて飛竜には竜騎士が乗っていた。接戦に見えるがローデンファルム側は飛馬が少なく飛竜は居なかった、完全に不利な状態にあった。


 なんとか止めさせる手立てはないのかと考えていると頭の中でノジルが呼びかけてきた。


『ゆうた、お前はこの戦争をどう見る?どうしたいのじゃ?』

『どうしたい……ってどういうこと?』

『戦争は何も生まない、殺しあい…後には幾千もの死体……敗北感…それにより人を殺してしまったという罪悪感……自軍を勝利に導かせたい欲望……負けた方は奴隷として一生を過ごさなければならぬ……ここはそういう世界じゃ……』

『よくわかんないよ……何が何だか……でも……無駄な争いはよくないと思う……この戦争を止めなきゃならない……同じ人間同士なのに争わなきゃならないなんて……この人達一人一人にそれぞれ家族がいて……その帰りを待ってる……僕に何か出来る事があれば……』

『……お主に何が出来ると思う?』

『わからない……わからないけど……』

『うちが力を貸してやってもいいぞ?』

『え!?でもノジルは干渉出来るの?僕が止めなきゃならないんじゃないの?』

『直接はダメじゃが手を貸すのは構わんじゃろ、彼奴等もそれくらいのハンデはくれようて。』

『彼奴等……?わ、分かった。それでどうするの?』

『お主らの世界でいうチートという能力を与えてやる、それで乗りきれるじゃろう?』

『分かんないけど……分かった。』


 承諾すると優太の身体は真っ白に光り輝いた、驚いたミリアは優太から離れ尻餅を付きながらも後ずさった。ゆっくりと少しずつ浮かび上がり軈てセルロアとサルス皇国の間に入っていった。


「ユウ様…」


 頭上を見上げるミリア、自分には何も出来ないけど今は優太を信じる事しか出来なかった。

 そのまま浮いている優太、地上ではローデンファルムとサルス皇国の軍勢が未だ争っている。五分五分になっていて兵士達は皆疲れていた。


『どうすればいいの!?』

『お主がどうしたいか願え、そうすれば願いは叶うじゃろう。』


 優太はもう一度前を見据えると拳を握り締め願った……


「僕は…みんなを助けたい……戦争を止めさせたい!!」


 優太が言い放つと輝きが更に増して周りを光が包んでいく…敵飛馬や飛竜、竜騎士らは意識を失い味方の飛馬は次々と地上へと降りた、兵士達は戦意を喪失していた。敵味方、近くの街や村を光りは全てを包んでいく……

 それを確認したかの様に光は小さくなり軈て消えて優太は地上へと降りていった。


「ユウ!!大丈夫か!?」


 セルロアの乗った飛馬はユウが降りきる前に降り立つ、真っ直ぐにミリアの前に降りる所を二人で受け止めた。


「ユウ様!!」

「ユウ!!」


 二人に抱き抱えられた優太は微笑み軈て意識を失っていた。





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