プロローグ
1600年 とあるヨーロッパの国
延々と振り続ける豪雨の中、一つの馬車が山峡を駆け抜けていた。
馬車の運転席には真っ黒のマントを纏い、真っ黒な帽子を被ったイギリス人の老男性が手綱をさばき、馬車を猛スピードで飛ばしていた。
「ハァ…ハァ…!」
イギリス人のその老人は、水を飲もうと手を伸ばしたその瞬間。
「今だァーーッ!かかれェーーッ!」
「イヤッハァァァーーッッ!!!」
「うわッ!し、しまっ――」
岩陰から突然山賊が飛び出して、驚いたその老人は思わず馬車を止めてしまい、老人は勢い余って馬車から転げ落ちてしまった
「ぐわぁっ!うぅぅ…ぐぅぅ……!」
岩の地面が容赦なく老体に衝撃を与え、しばらく老人は地面でのた打ち回り、痛みに悶えていた。
山賊達はそんな老人を他所に、老人が乗って来た馬車を慣れた手つきで物色し始める。
「オ、オイ…!見ろよこれ…!スゲェぞ…!」
山賊達が集まり、馬車の中にある荷物の中で一番大きな箱を覗くと、皆声を思わず漏らしてしまった。
その中にあった物は様々な色をし、綺麗な宝石のような石が溢れんばかりに詰められていた。
山賊の一人がその中の一つの『石』を丁寧に取り、目先に持って行ってよく観察し始めた。
「ガラスじゃねぇ…!ましてや色を付けてる訳でもねぇ…!天然物だ…っ!こ、こいつは大物だぞ…!売ったら俺達大金持ち間違い無しじゃねぇか…!」
ゴクリと山賊達は喉を鳴る音が響いた。
「し、慎重にな、箱に戻せよそれ…傷とか泥とか…ゼッテー付けるなよ…」
「お、おう…」
山賊の一人が、石を観察していた山賊にそう指示する。
石が傷つかないようにそっと箱の中に戻し、そしてゆっくりと箱を閉め、ハァと大きな溜め息を吐いた。
「よし!さっそく売り捌きに行くぞッ!これで俺達は明日から大金持ちだ!」
「お、おい!このジジィはどうする!?」
「ほっとけ!ほら行くぞ!」
山賊達は馬車ごと強奪し、歓喜の声と共に雨の中へと消えて行った。
「う、うぐぅぅ……」
老人は山賊達が行ったのを確認すると、体をさすりながら立ち上がった。
「しまった…『あれ』を全部持っていかれてしまった…でも、よかった…『これ』を持っていかれなくて…」
老人は懐から一つの石を取り出した。
その石はとても鮮やかな橙色をしており、光り輝いていた。それはまるで『太陽』のようだった。
その後この老人は、この石を東洋に居る友人に持っていったのだった・・・。