夏のハンディファン
夏祭り。
人混みから逃げて、境内のベンチに座った。
私「暑い……」
ハンディファンを顔の前で回す。
彼「近すぎ」
私「え?」
私は少し横にずれた。
彼「なんで離れるの?」
私「近いんでしょ?」
彼「ハンディファンが」
私(…///)
彼「俺のことだと思った?」
私「違う!」
彼「じゃあ戻って」
私「なんで」
彼「こっちは近くていいから」
彼が距離を詰め、肩が触れた。
私「……暑いんだけど」
彼「それ貸して」
ハンディファンを持つ手に、彼の手が重なる。
彼「近づけすぎ。これくらい」
少し離すと、風が顔全体に当たった。
私「あ、涼しい」
彼「だろ?」
彼も風に入るように、ぴったりくっついてくる。
私「自分で買えば?」
彼「これでいい」
私「私のだけど」
彼「じゃあ夏の間、ずっと隣にいて」
私「……暑い」
彼「涼しくなったんじゃないの?」
私「誰のせいよ」
夜空に花火が上がった。
私「きれい……」
横を見ると、彼は私を見ていた。
私「……なに?」
彼「近すぎ?」
顔が近づく。
私「……それは近い」
彼「離れる?」
私は首を横に振った。
彼「じゃあ、このまま」
そっと目を閉じる。
唇が重なった。
一度離れて、目が合う。
今度は私から近づいた。
もう一度。
さっきより少し長く。
私「…………暑い」
彼「もっと離す?」
私「ハンディファン?」
彼「俺」
私は彼の袖を掴んだ。
私「……それはダメ」
彼「よかった」
ハンディファンは涼しい風を送り続けている。
それでも、頬は熱いまま。
どうやら、
夏の暑さは、
ハンディファンだけじゃどうにもならない。
-おわり-




