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夏のハンディファン

掲載日:2026/08/30

夏祭り。


人混みから逃げて、境内のベンチに座った。


私「暑い……」


ハンディファンを顔の前で回す。


彼「近すぎ」


私「え?」


私は少し横にずれた。


彼「なんで離れるの?」


私「近いんでしょ?」


彼「ハンディファンが」


私(…///)


彼「俺のことだと思った?」


私「違う!」


彼「じゃあ戻って」


私「なんで」


彼「こっちは近くていいから」


彼が距離を詰め、肩が触れた。


私「……暑いんだけど」


彼「それ貸して」


ハンディファンを持つ手に、彼の手が重なる。


彼「近づけすぎ。これくらい」


少し離すと、風が顔全体に当たった。


私「あ、涼しい」


彼「だろ?」


彼も風に入るように、ぴったりくっついてくる。


私「自分で買えば?」


彼「これでいい」


私「私のだけど」


彼「じゃあ夏の間、ずっと隣にいて」


私「……暑い」


彼「涼しくなったんじゃないの?」


私「誰のせいよ」


夜空に花火が上がった。


私「きれい……」


横を見ると、彼は私を見ていた。


私「……なに?」


彼「近すぎ?」


顔が近づく。


私「……それは近い」


彼「離れる?」


私は首を横に振った。


彼「じゃあ、このまま」


そっと目を閉じる。


唇が重なった。


一度離れて、目が合う。


今度は私から近づいた。


もう一度。


さっきより少し長く。


私「…………暑い」


彼「もっと離す?」


私「ハンディファン?」


彼「俺」


私は彼の袖を掴んだ。


私「……それはダメ」


彼「よかった」


ハンディファンは涼しい風を送り続けている。


それでも、頬は熱いまま。


どうやら、


夏の暑さは、


ハンディファンだけじゃどうにもならない。


-おわり-


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