ロボットアニメ哲学 人型である必然性
元祖スーパーロボット・マジンガーZ。
リアルロボットの草分け・ガンダム。
彼等は全高18mの人型ロボットだ。
コン・バトラーVの57mとか。
もっと大きいロボットもあるが。
とにかくそこに、どんな問題が起こるか。
そこに合理性・必然性はあるのか。
よくある問題提起もとい難癖だが。
実はけっこう、よくできた回答を出している作品もあったりする。
まずは問題点から。
●問題点:自重・2乗3乗の法則
雑に言って、人間の10倍以上デカい。
とりあえず人間を10倍にした場合。
幅・奥行き・高さが全部10倍になる。
そして体積は10^3=1000倍だ。
大きさは10倍なのに、重さは1000倍。
しかし骨とか筋肉とかの、面辺りの強度は決まってる。
そして断面積は縦・横なので、10^2=100倍止まり。
大きくなる程、自重を支える事は難しくなる。
昆虫類が一定以上に大きくなれなかった理由と同じだ。
この問題はあらゆる場面で波及する。
※昆虫が大きくなれなかった最大の理由は、呼吸が追いつかなくなる為だが、外骨格が自重に耐えられないのも事実
●問題点:接地圧
二本足で立つと、足という狭い範囲に、重さが集中する。
大きさは10倍、重さは1000倍。
つまり接地圧は、重さ÷(縦✕横)で、単純に10倍。
人間の10倍の接地圧だともう。
立ってるだけで、普通の地面に沈んでいく。
立ってるだけでこれだが、歩くともっと酷い。
瞬間的に全重量を、片足で支える形になる。
更には足を下ろす時には、加速度まで加算される。
雑に言うと、ビル解体用ハンマーを、歩く度に打ち付けるようなものだ。
よく二足歩行の利点に、不整地踏破性とかいう説明があるが。
不整地に侵入した途端、足を取られて行動不能は必至。
……ジャンプ?
大地は引き裂け、ロボは砕け散るであろう。
●問題点:被投射面積の増大
高さ18mは大体、5階建てビルに等しい。
要するに的がデカい。
他の兵器なら、遮蔽物に隠れながら進める場所でも。
遠目から一目でわかる、存在感抜群の動く標的だ。
標準的な大きさの戦車と巨大人型ロボ。
同じ武器で撃ち合ったら、どっちが勝つか。
答えは戦車の圧勝となる。
同じ威力と射撃精度なら。
的がデカい分、多く被弾する。
そんな単純な理屈で敗北する。
●問題点:安定性
亀は重心が低いし、四つ足で接地する。
しかし人間は重心が高く、二本足で接地する。
ひと度バランスを崩せば、転倒は必至。
5階建てビルが、グラグラ揺れて、今にも倒れそう。
そんな悪夢を想像できるだろうか。
更に先述の、戦車との撃ち合いの例。
同じ射撃精度、としておいたが。
実際は射撃時の安定性も低い。
高反動な射撃なら、最悪の場合。
撃った瞬間にひっくり返る。
例えば、ガンダムに出てくる、ザクが持っている武器は。
120mmザクマシンガンという。
120mmって大体、駆逐艦の主砲サイズだ。
250m程度の全長ある、軍艦の艦載砲レベル。
よくある武器の何mm口径とか?
ロボの規模と比べて小さすぎない?
なんて思われているようだが。
実際は、規模と比べて大きすぎる、が正解だ。
●問題点:G
瞬間的に掛かる重力、即ちG。
10Gだとそのまま、元の重さの10倍になる。
F1のフォーミュラカーが、最高速度でコーナリングする。
その瞬間、F1パイロットの、首に掛かる負担は5G程度。
重量比で人間の頭の重さは全体の7%程度なので。
体重70kgの人間なら、頭の重さは大体5kg+ヘルメット1kg=6kg。
つまり瞬間的に、30kgの重さが、首にのしかかる。
常人の首ならへし折れるレベルの負荷だ。
F1パイロットはこの対策に、首を徹底的に鍛える程だ。
もし巨大ロボがその場にバタンと倒れたら。
ソレだけで中のパイロットには大体20G↑。
これは自動車の正面衝突と同程度の衝撃だ。
大体耐Gスーツを着た戦闘機パイロットの。
耐えられるギリギリが10G前後だ。
これがもしも、回避等の移動中の転倒なら、もっと深刻だ
最低でもその衝撃は50G↑で。
条件次第で簡単に100G↑となる。
50G↑はF1レースでフォーミュラカーがクラッシュして。
生還したら奇跡、とか言われる大事故。
既に後遺症は必至レベル。
100Gはもう例えるのがバカらしい。
シャトルから切り離されたロケットが、着水する時の衝撃だ。
悟空とかがトレーニングする時にしか聞いた事がない。
●問題点:慣性
ガンダムといえば、華麗な回避。
まるで人間の様に、滑らかな動きで避けてみせる。
大きさが10倍で、元と同じスケール感で動いて見えるのなら。
スピードも10倍になっている。
運動方程式曰く、質量✕加速度。
質量は体積なので1000✕10=1万倍。
人間の動きを10倍のスケールでやれば。
それはもう1万倍のパワーだ。
そんなパワフル極まりない動きをしても。
断面積は10^2で100倍止まりなので。
動かした瞬間手足はへし折れるだろう。
更に四肢とか重心と離れてる以上、慣性がかかる。
慣性モーメントは質量✕長さ^2=1000✕100=10万倍。
手も足も頭も、人間の10万倍は動かしにくい事になる。
なのにあんな機敏に、動かしたらどうなるか。
慣性モーメントを制御しないなら。
瞬間手足はもげて、千切れ飛ぶ。
しかし当たり前だが、それでは到底実用できない。
よって、慣性モーメントを制御している事になる。
そしてそれは、発生した衝撃を、機体で受け止めたのと同義だ。
必然的に中のパイロットは、交通事故に遭ったような衝撃に晒される。
それも1回で終わらない。
動く度に同様の事が起こる。
四方八方から追突され続けるのと等しい衝撃に。
パイロットは搭乗している間、常に襲われ続ける。
拷問という言葉すら生温い、極限状態だ。
死ななかったら奇跡、と言っていいレベル。
●問題点:旋回性
敵が後ろにいる。
やっつけなきゃ。
戦車なら超信地旋回という方法で、その場でターンできる。
人間も回れ右と言われる様な運動で、その場でターンできる。
戦闘機もその場では無理だが、ターンを行うマニューバはある。
しかし巨大ロボはそうはいかない。
人間の回れ右と同じ事をすれば、足首に力が集中する。
関節は構造が複雑であり、必然的に脆いので、破断は必至。
となれば、できる事はただ1つ。
その場で足踏みしながら、微かに角度を変えて。
少しずつ旋回するしかない。
まぁ、そうしてる間にやられると思うけども。
また、戦車なら砲塔の旋回で対応できる。
ロボの各関節が360度回ったとしても、条件は同じにならない。
人間の重量比だと、両足が40%を占めるので。
腰を回すだけで、残り60%を動かす力が要る。
肩を回して腕先だけ、背面に向ける場合。
人間は拳銃を撃つのにも、両手が要る。
片手だけの保持では、まともな射撃精度が確保できない。
総じて戦車ならスマートにこなせる様な。
背面へのとっさの対応が困難だ。
●問題点:積載量
自重が重く、重心が高く、バランスが悪い。
となれば、載せる物にも制限がある。
これはあらゆる能力に影響する。
まず装甲が載せられない。
的が大きいのに、大きいからこそ重さがかさみ。
防御を十分に施せない。
そして武器を載せられない。
防御と同様の理屈で、攻撃力も不十分。
つまり、攻守において劣る。
という結論になる訳だ。
先述した戦車との撃ち合いの例。
同じ武器で、という条件にしたが、本来は。
的が大きく、射撃精度は低く、攻守に劣る。
なんて、絶望的なハンデ戦になるのが必然だ。
●問題点:必然性
全ての手に銃を持って撃ち合うとして。
腕が2本の人型より。
腕がたくさんの阿修羅型の方が強い。
虫の形状は、非常に機能的だ。
多脚にすれば安定性は遥かに向上する。
複雑な形状より完全な球形の方が。
装甲の配置的に差ができないし。
宇宙空間での姿勢制御に優れる。
etcetc…
一事が万事この調子で。
人型より最適な形状は無数にある。
●問題点:転用
新しい技術・素材が使われていて。
巨大ロボが現行兵器を凌駕できるのなら。
その新技術・新素材を、戦車・戦闘機に転用すれば。
出来上がった新戦車・新戦闘機は、巨大ロボより強い。
巨大ロボの強さを新要素で片付ければ。
その強さは巨大ロボ独自のものではない。
……といったところだろうか。
実はこれらの諸問題に対して。
画期的な回答を出したロボット作品も。
幾つか存在していたりする。
●人間が直感的に操縦するのに最適化されている
人間の脳は、人型を動かす為のボディマップを持っている。
右手をまっすぐ前に出す、という動きは。
右肩関節を90度回転させて、肘をまっすぐ伸ばす、という挙動であり。
更に言えば、動きによる重心バランスの狂いを吸収する必要もある。
細かく言語化するのが不可能な程、体勢を微調整しなければならない。
体を動かすと偏に言っても。
実際には多大な翻訳作業が必要となる。
しかし我々は普段、こんな事を意識しない。
それは脳が体の動かし方を、マッピングしているからだ。
これはロボットの操縦にも適用される。
ロボットの複雑な操縦は。
パイロットが動いた通りに、機体が追従するマスタースレーブ方式をとる。
各関節のパラメータを、人間がいちいち指定したりはしない。
というか、そうでないなら。
リアルタイムに入力する項目が多すぎて。
人間に操縦できる訳がない。
もしも幾つも腕や足があったとしても、それを人間が動かすには。
いちいち、ここを動かすには、このレバーを動かして、と。
動作と操作の膨大な翻訳が必要になり、一瞬で脳の認知能力が破綻する。
しかも動かした結果。
足がもつれたり、バランスを崩したり。
計算ミスや考慮不足で、転倒等の事故を起こす可能性が高い。
●宇宙への適用
宇宙といえば無重力だ。
つまり地上と比べて、上下の他に。
ロール・ピッチ・ヨー、という概念まで登場する。
宇宙では動き出したものは、勝手に止まらない。
もしも1度でも、その場で回転し始めたら。
それがどの軸の回転かに関わらず、永遠に回り続ける。
打ち消すには回転と反対の力を、完璧な強さで加えなければならない。
失敗すれば、別方向・逆向きの回転が始まるだけだ。
更には移動も加わるので、回転を打ち消しつつ、進路を調整する。
その調整が、推進剤・AMBAC・フライホイール、どんな方法であろうと。
適切な計算をリアルタイムに行うのは、非常に困難だ。
戦闘中の機体制御などは、完璧に論外だ。
しかしこの問題も、人間が人型を操縦するのなら解決される。
人間なら体の動かし方を知っている。
自分の直感に従って、バランスをとれば、それで機体制御ができる。
これが人型と構造・重量比が離れる程。
その制御は困難になり、利点は薄れる。
また、大地に足を着き、向きを把握する事で。
人間は自己を認識できるという。
もしも宇宙で、直感に頼らない機体を操縦する場合。
膨大な計算量と、認知の解離により。
操縦者はゲシュタルト崩壊する可能性が高い。
●課題:AI
ただし、これらはあくまでも「人間の操縦」を前提とした利点だ。
人型ロボを実現し、特に宇宙を生活圏とする文明レベルなら。
AI技術が発展しなかった筈がない。
最初から最適な形状の機体を。
AIに制御させれば効率的だ。
この問題に回答できる作品が、巨大人型ロボへの完全回答となるだろう。
●回答:超時空要塞マクロス
・何故人型?
→宇宙からの漂着物・ASS1の情報から、巨人族との交戦が予期されており、敵艦に侵入して歩兵として戦う事が仕様要求にあった為。可変機構により実現
・2乗3乗の法則は?
→ASS1由来の新型動力による圧倒的パワーウエイトレシオと、慣性制御装置による剛性の飛躍的強化
・何故有人機?
→初代は西暦1999年の事。人類に機体制御できるだけの高度なAIは存在しない。ASS1由来の技術にAIは存在しても、バックドア等のリスクを回避できず、利用できなかった
→プラスにおいて、無人戦闘機・ゴーストは実現したが、暴走事故を起こした。この事故から性能を惜しまれつつも、主流とならず人間監視の元の小規模運用に留まる
→フロンティア時代、人間の直感・想像による、物理的事象の改変が行える様になった。明確にAIでは扱いきれない技術とされる
●回答:フルメタル・パニック
・何故人型?
→作中の超技術・ブラックテクノロジーによって齎された新素材は、人体を模した動きをする時に最大の特性を発揮し、戦車や航空機に転用しても利点が少なかった
・2乗3乗の法則は?
→全高10mに満たない比較的小型な兵器である為、ブラックテクノロジーと合わせれば、諸問題を解決できる範囲に収まる
・何故有人機?
→ブラックテクノロジーはウィスパーによって、突発的に齎されて、技術発展がミッシングリンクしている為。ハード面とソフト面の発展に格差がある
→機体OS等は実現したが、完全な無人ASが完成する程の、AI技術は登場しなかった。ただし部分的になら、無人ASといえるものは存在する
→無敵の攻撃力と防御力を発揮する装置、ラムダ・ドライバの発動に、人間のパイロットが不可欠である為。動力の限界を除けば、ラムダ・ドライバ搭載機と通常機体では、1対100でも前者が圧勝する
●回答:トップをねらえ!
・何故人型?
→人型兵器RX7が第三次世界大戦の終結に導いた歴史的背景。ただしこの時点では、人型が採用された合理性はない。操縦訓練が比較的容易である筈なので、兵力動員数が多かったのかもしれない
→人類選抜部隊・トップによる宇宙戦を前提としている為
・2乗3乗の法則は?
→慣性制御装置イナーシャルキャンセラーで解決。圧倒的質量比の宇宙怪獣を相手に、押し負けないだけの制御力を持つ
・何故有人機?
→AI技術の限界。ワープが実現された世界だが、機械制御に問題があった為に、軍属のエスパーイルカでワープを演算している
→質・量ともに圧倒的彼我戦力差を覆す手段として、機械的に数値化・法則化できない、人間的な戦闘勘の様なものを必要としていた
→イルカの例から見るにトップ部隊は、1種のエスパー軍団な可能性もある。もしそうならAIにはない利点となる
●その他
・何故人型?
ファイブ・スター・ストーリーは、騎士という超人の搭乗を前提としている為。
機動武闘伝Gガンダムは、スポーツ化された競技として、国家代表選手の身体能力を十全に発揮する為。
人間の搭乗が大前提なので、人型が採用される。
新世紀エヴァンゲリオンもこの1種だろう。エヴァがロボかはともかく。
次に見られるのは、初代ガンダムと機動警察パトレイバーに見られる、人型作業機械を前身に発展したというものだ。
文化的な背景に存在している為、インフラに組み込まれており、相補的に存在を補完し合う。
特にガンダムは、宇宙という作品背景から、人型を選択する合理性が高い。
大きすぎる気はするが、コロニーの規格から来る仕様要求の様だ。
・2乗3乗の法則は?
超電磁ロボ コン・バトラーVは、身長57m・体重550t。
これに限らず、殆どの巨大ロボは、大きさの割に、極めて軽量である事が多い。
これなら断面積で自重を支えられる。
・何故有人機?
これに合理的回答を出す作品は稀だ。
最近ではマジンガーが自我を持ってたり。
ゲッター線の意思があったり。
人工かはともかく、機体に知能がある事も多い。
ちなみに初代ガンダムにもAIは存在していた。




