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大英雄のスキルに目覚めた俺を追放!? 〜無能なのは俺じゃなくて、このスキルなんだが!!〜  作者: 夕暮れタコス
第三章 魔国領連邦

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第28話 悲恋の二人?

 俺とテスはまず現在の魔族領の状況について情報収集を行った。

 テスが離れていた2年という歳月は、陰謀策謀ひしめく領地争いによって状況を大きく変えるのには十分な時間だ。


 そして分かったのはアンチェインズ領が非常に不味い状態にあるということ。国境警備隊の隻腕の男が顔を曇らせた理由が察せられる。

 その窮地の原因はやはりテスの存在だった、のだが聞こえてくる話は色々とおかしな事になっていた。



 俺とテスは立ち寄った村の食堂で顔を突き合わせながら、眉間に皺を寄せて考え耽っていた。


「いったいどういう事だ? 処刑されたデスティニア(・・・・・・)が現れて父親を非難してるって」


「現れた(デスティニア)は偽物である事は間違いありません」


「そりゃそうだ」

 皿の漬物をポリポリと噛み締める。


「問題は、その到底偽物と思われるような存在の発言が信じられているという点、そして連れてきたのが隣領のネクロード領主だという点です」


 他領の辺境の村にまで噂が来ているくらいだ。魔族領内でも注目を浴びているんだろう。それはつまり本物だと信じるくらいの何かがあるということだ。


 行って確かめられれば早いんだが、迂闊には動けない。俺は頭を抱えて唸った。しかし抱えた拍子に頭の包帯が外れて落ちてしまう。慌てて拾って巻き直し、周囲の様子を伺う。幸い店先の若い娘に見られたが、気不味そうに目を逸らすだけだった。


「ほんっとうに、俺は角折れって認識されるみたいだな……」


「私もそうでしたが、私達の外見上の違いなんて角があるかないかです。角が見えていない、もしくは無い理由が思い当たるのならば、こんなに堂々と入り込んでいるとは思われないってことです」


「ダメ押しで俺にはテスが、テスには俺がついてたから、そしてテスの『バベル』のおかげだな」


 今俺が自然に話している言葉はもちろん魔族語だ。


「私達、いつの間にか共鳴状態になっていたのですね」

「ああ、マァルの庭で過ごした日々は無駄じゃなかった……」


 テスは頷いて視線を薄汚れたテーブルへと落とす。


「……この前は、弱音を吐いてしまって、ごめんなさい。あれじゃマァルさんに顔向けできませんよね」


「そんなことないさ。前にテスが言ってくれただろ? 精神的な疲労は吐き出したほうがいいって」


「そうでしたね」と言って健気な笑顔を返すテスがとても眩しく見えた。 

 彼女の笑顔に見惚れていると、横から声をかけられる。


「あのぅ、お邪魔をしてごめんなさい。こちらを……召し上がってください! お、お代は結構ですので! ……どうか、安らかな日々を!」


 さっき頭を見られた娘だ。勢いよく魚料理を置いて、そそくさと裏へと戻っていってしまった。


「えーと、魔族の何かのしきたり?」


「『安らかな日々を』は角を失った人に送られる慈愛の言葉です。いずれ魔力が尽きて死に至る、それまでの日々をどうか安らかに過ごしてください、という祈りみたいなものですね」


「なるほどなぁ。もしかしたら俺とテスは最後の時を過ごす恋人だと思われてんのかな」


 異文化に触れる面白さを感じながら、俺は目の前で香ばしい匂いを漂わせる脂の乗った魚を切り分けた。


「へぇ〜、意外とロマンチックな事を言うんですね。悪くないですね、そういう設定」


「……自分で言っといてなんだが、縁起でもないな」

「ふふっ、そうですね」


 俺とテスは苦笑しながら魚を頂いた。




「ごちそうさん!」


 代金をテーブルに置いて店の奥へと声をかけてから俺達は外へと出た。

 据えた臭いの混ざる乾いた風が、赤土を巻き上げながら吹き荒ぶ。俺は二束三文で売っていたボロ切れみたいな外套で体を包み、テスも同じく購入した赤茶けたボロのローブのフードを被った。


 荒れ果てた畑を必死に耕すやせ細った女性たちが目に入る。

 ここに来るまでにいくつかの村を通ったが、どこも生活は苦しそうだ。だけど人々は皆逞しく力強く生活していた。


 魔族の国『魔国領連邦』は前大戦での敗北により、魔界からの恩恵を大きく失った。その結果、土地は痩せ細り貧困に陥っているという。

 しかしそれでも聖族と拮抗できているのは、世界の魔素濃度が高まっているから。それはつまり魔族は水を得た魚の状態であることを意味する。


 と、この村に足を踏み入れた時、テスがそう説明してくれた。


 だけどどんなに人々が逞しく生きようとも、このまま戦争が続けばいずれこの村も廃墟都市のようになってしまう可能性がある。

 この人達の努力によって紡がれた営みが一瞬にして……。


 無意識に力の籠っていた拳を、テスが優しく包み込んだ。


「行きましょう、リングスさん」

「ああ……、だけど何処へ向かう? 金ももうあまり無いんだろ?」


 アンチェインズ領から逃げ出す時に貰った金も、ほとんど使わないまま廃墟都市に置いてきてしまったらしい。


 俺の心配を他所に、テスは力強く意志の籠った瞳で見つめてきた。


「私、覚悟ができました。行きましょう、アンチェインズ領へ」


「……何か策はあるのか?」


「はい、父に接触できればなんとでもなります。それまでは、先ほどの設定を使いましょう、リングスさん」

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