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大英雄のスキルに目覚めた俺を追放!? 〜無能なのは俺じゃなくて、このスキルなんだが!!〜  作者: 夕暮れタコス
第二章 追放者達

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第24話 加護がなくたって

 騎士隊の隊長から繰り出される激しい剣戟と砲撃。しかし宿屋での攻防を経たことで、脳と身体は確実に対応を早めていた。


 ウィンドウが無かったらとっくにやられていた。だけど、マァルの訓練も無かったら避けきれなくてやられていた。ウィンドウの判断を、自分の肉体を、そして自分の考えを信じた結果、格上のコイツと渡り合っている。自分の力で掴み取り、確実に強くなっている実感を得られた。


 ウィンドウの表示がピラーの頭上から降りてくる。

 ――上段からの振り下ろし。

 ピラーの剣に速度が乗りきる前に一歩踏み込み、小手を狙う。突然の反撃にピラーは大きく後ろに跳ねた。


「今だ、テス!」


 テスが潜んでいた民家の二階窓から飛び出しざまにクナイを投擲。だがピラーは空中で軽く光剣を振り、クナイを溶かした。


「さすがに一筋縄じゃいかねぇか……」

 ――それより、なんでテスは手筈通りの魔法じゃなくてクナイの投擲にした?


 浮かんだ疑問に答えるように、隣に並んだテスが耳元で囁いた。


「●●●●」


「……え?」


 理解できない言葉。というよりは知らない言語だ。

 テスを見るが、視線は既にピラーへと戻っている。

 言語理解スキル『バベル』を持つテスが知らない言語を使った。それってつまり……。


「テスの言いたい事、理解したぜ」


 小さく呟き、ピラーへと斬りかかる。俺の拙い剣術じゃ歴戦の猛者であるピラーには届かない。だけど届かない分をテスが埋めてくれる。

 剣戟をいなされて作られた俺の隙を、テスのクナイが援護する。息の合ったコンビネーションで少しずつ刃がピラーへと迫る。


 そして遂に――、

「ッ!」


 俺の刃がピラーの頬を斬り、テスのクナイが奴の脇腹に刺さった。

 やれる! 圧倒的な強者のオーラを放つこの敵に届く!!


 俺の口の端に上がった笑みを見て、ピラーが吐き捨てる。


「調子に乗るな。まだ始まったばかりだ」


 ピラーは腰に下げた実剣を抜き、斬り掛かってきた。

 大振りで振り上げた剣。がら空きの胴に剣が吸い込まれそうになるが、違和感が襲う。同時にウィンドウの警告も現れた。視界を左に滑るウィンドウに従い、身体を放り投げた。


 直後、上空から光が振り注ぐ。

 宿屋の火の手で明るく染まる夜空を、さらに明るく、まるで真昼のように照らしながら俺の居た石畳を焼き穿つ。


 その光量に目が眩みそうになりながらも、地面を転がりながら距離を離す。しかしピラーは追撃の手を止め、ボソリと呟く。


「……奇妙だ」


 剣をしまい、腕を組み、顎に手を当てて考え始めた。


「リングス・フォーチュン。貴様は烙印を押された時点でスキル不能となっているはず。加えてこの結界もまた天界からの加護を遮断する結界だ」


「つまりスキル不能空間、……やっぱそうか」


 首の後ろの痛み、それとテスの言語。結界が持つスキル不能効果は予想通りだ。ピラーだけスキルが使える様子だが。


「何か種があるな?」


「だったら何だ? 逃げ帰るか?」


「フンッ」とピラーは鼻で笑い、両手を頭上に掲げた。すると両手の内側に光が渦巻き始めた。どんどんと光量を増していく光の玉。すぐに眩しさで直視できなくなる。


「何かの正体などどうでも良い。要は回避に特化した能力を持っているとするならば、回避不可能な攻撃をすればいいだけだ」


 ピラーの意図を掴んだ時には遅かった。光球の放つ熱量に近づけなくなっていた。


「拷問に掛けられないのは残念だが、この鳥籠の中、どこまで耐えられる」


 ジリジリと熱気に追いやられる中、俺の横を疾風が駆けた。魔力の波動を放ちながら。


 そしてその疾風、テスが光の中でピラーの両手首を切断した。光球は弾けるように消え去り、絶叫しながら腕を抱えたピラーが言葉を絞り出した。


「まさか、貴様、魔族なのか!!」


 テスの焼け焦げたローブがはだけ、角が露出する。ピラーの最大の読み違い、それはテスの氷魔法をスキルだと思い込んだことだ。

 ここぞと言う時の為に取っておいた魔力の全面使用。それを守りで使うことになってしまったが、結果としては良いのかもしれない。


 ピラーは傷口を自らのスキルで焼き塞ぎ、その傷口をテスへと向けた。


「穢らわしい魔族が何故我らの領地に! 魔族も加護のない者も、消え去れ!!」


 凄まじい熱量が両腕から放たれた。それをテスは全力の氷壁で受け止める。両者一歩も譲らないせめぎ合い。背後から近づこうとするが、ウィンドウの警告。ピラーの背中から天使のような光の翅が生えた。そしてその羽根の一つ一つから光線が放たれた。掻い潜るのは不可能。回避に専念するしかない。

 だけど――。

 ――ここは俺が決めなきゃカッコつかねぇよな、ウィンドウ。


 【πµ`¿π-? y/n】


 【y】を睨み、力を感じ取る。


 スローに見える景色。これなら光線の軌跡も読める。光線を避けてピラーへと接近。しかしピラーもこちらへ反応を示す。腕の先から直接光剣を生やし、斬りかかってくる。激しい攻撃、いつまで保つか分からないこの力。焦りが滲む。

 そんな思考の隙間を突くように、上空から光柱が振り注いだ。肌を灼かれ、全身がひりつく。


 ――もっとだ、もっと強い力に変換(・・)しろ!


 無意識の願い。何を手放したのかも確認できない。だけど、それが実現した。光の熱をものともしない身体へと強化された俺は、光柱の中から手を出してピラーの腕を掴む。そして握り潰した。奴の口から悲鳴が飛び出すよりも速く、抜刀。


「加護がなくたって、たとえ魔族だって、生きたいと願う一人の人間だ」


 (ひじり)教団騎士隊長の首を一閃した。



 ※※※


「リングスさん! 大丈夫ですか!?」


 気づけばテスの膝枕で寝ていた。

 何か、多くのものが抜け落ちた気がする。


 虚ろな目で周囲を見渡すと、近くには目を見開いたまま胴体から離れたピラーの首があった。


 ――失った物もある。だけど手に入れた物も大きい。


 俺は露呈してしまっているテスの角へと手を伸ばしながら言った。


「やったんだな、俺達」

「はい……強敵を倒しました」


 だけど休んではいられない。霊鳥を追われたらマァルが危ない。

 結界が消滅したことで、火事の煙が流れ込んできた。その煙に紛れながら、俺達は街の外へと向かった。

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