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大英雄のスキルに目覚めた俺を追放!? 〜無能なのは俺じゃなくて、このスキルなんだが!!〜  作者: 夕暮れタコス
第二章 追放者達

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第20話 また会えるから

 明け方、俺とテスは旅支度を始めた。

 それを見守るマァルの表情は寂しげでもあった。


「ごめんなさいね、急かすような事になっちゃって」


「問題ありません、今が絶好のチャンスならば、逃がしたくはありませんから」

 新品の白無垢ローブを羽織りながらテスが強気に言う。


「だな。元気になったアイツと騎士隊、まともに闘いたくないからな」


 ――そう、旅を急ぐのには理由がある。



 俺の攻撃で深刻なダメージを負ったバンダースナッチは、帰巣本能で魔力研究施設『エーテリア』に逃げ帰ろうとした。

 しかしバンダースナッチに関するデータは、マァルが脱走時に破壊してきたという。そのおかげで施設には奴の具体的な姿形が残っていなかった。

 結果、約40年ぶりに生まれ故郷に帰ったバンダースナッチを待っていたのは、施設からの熱烈な迎撃だった。


 更にダメージを負ったバンダースナッチは、廃墟都市に戻って息を潜めて傷を癒しているという。

 しかし先日から、バンダースナッチの正体に気づいた施設側が今度は奴を探し始めた。それも騎士隊を招集しての大規模作戦だそうだ。そして足取りを掴んだエーテリアと騎士隊の混成部隊は廃墟都市へと向かっている。


 この一連の出来事を、マァルは霊鳥という特殊な魔獣を使って監視していたらしい。


「本当は私が施設(エーテリア)に出向こうと思ったのだけど、まさか半日もしないでバテるとはねぇ」

 昨夜、困った様子のマァルはこう言っていた。そして言葉を続けた。


「私は霊鳥で監視を続けるわ。作戦が有効なのは、混成部隊がバンダースナッチに接触するまでの間」


 極秘施設であるエーテリア。元々職員数も警護兵の数も多くないらしい。そこにさらにバンダースナッチ帰還時の迎撃戦でかなりの痛手を負っている。だからこそ騎士隊が招集されたと見て間違いなさそうだ。


 そしてバンダースナッチ捕獲に人手を割いている今なら、簡単に侵入できると踏んだ。侵入できたら施設を完膚なきまでに破壊だ。


 帰る場所を失ったバンダースナッチはその場で殺されるか、もしかしたらひと暴れして騎士隊と戦闘してくれるかもしれない。


 もしそうなったら、生き残った方を俺達が仕留める。



 プランとしちゃ希望的過ぎるかもしれないけど、性質上動きが少ない施設だ。叩けるチャンスは決して多くない。機会を失うようであれば、マァルが霊鳥伝いに教えてくれる手筈を取った。


 俺はリュックを背負いながら、手がじっとりと汗ばんでいるのを感じた。

「それじゃ、行ってくる」

「マァルさん、無理はしないでくださいね」


「ありがとう、大丈夫よ。……気をつけてね」


 短く挨拶を済ませて俺とテスは、マァルに見守られながら庭を後にした。

 感傷的になる必要はない。

 だってまた会えるからと、そう信じている。


 ※※※


 俺とテスが森を抜けて寂れた街道に出ると、一羽の鷹が高く飛び上がった。動きからそれが霊鳥であるとわかった。霊鳥でできることは視覚の共有と簡単な命令だけらしい。


「凄いですね、あれも言ってみれば人工的な魔獣ですよ」


「聖族として鼻が高いんだか、申し訳が立たないんだか、複雑だ」


「ふふっ、リングスさんがそうやって気にかけてくれるだけで、私は嬉しいですよ」


 俺は照れ隠しで地図を取り出して広げた。


「まずは関門の一つ目、すれ違うはずの混成部隊をやり過ごさなきゃな」


 この先の三叉路から廃墟都市『ラビス』に通じる街道はこの一本だ。

 こんな所で奴らと遭遇してしまえば旅人では通じないだろう。というか、ハーラ村で遠目からでも追放者だとバレたんだ。たぶん騎士連中は見るだけで追放者だと判る何かがあるんだろう。


 だから視界に入ることでさえ、避けなきゃならない。

 しかしこっちには便利な物がある。


「出でよウィンドウ! 俺達を騎士隊と遭遇しないように導け!」


「……なんですか、それは」


「ああ、いや、最近影の薄かったウィンドウ君に活躍の場を与えたかったんだが……」

 ……頼む出てくれ。

 心の中で再び願うと。


 【調子ε乗ρ€】


 出てきてくれた! しかもちょっと読める!!


「テス、テス! ウィンドウの文字が読める! 少しだけど!」

「本当ですか! やはり共鳴状態へ近づいているのですね!」


 二人で手を取って跳ねながら喜び合う。

 テスの柔らかな手の感触、それに動きに合わせて揺れるふくよかな――。


 ピタリとテスの動きが止まる。そして軽蔑の眼差しが送られる。


「リングスさん、あなたって中々にムッツリですよね……」


「あ、違う、今の目線は一種の生理現象であって」


 プイとテスがそっぽを向いてしまう。

「さあ行きましょう。ウィンドウは何と言ってますか?」


 【バ∌】


 ウィンドウにノイズが走り、表示が変わる。


 【Ψ∌】


 言いたいことは伝わったよ、ウィンドウ。

 哀しむ俺を置いて少し先へと進んだテスが頬を膨らませて振り返る。


「もう、私以外をそんな風に見たら許しませんよ」


 心の雨雲がぶっ飛んでいった。


「テス……それって……」


「あっ、いや!少し語弊を生む言い方でしたね!私だから許してあげているという意味でして――」


 耳まで紅くして言い訳をするテスに見惚れていた。



 それから俺達はウィンドウの指示に従って再び森へと入り、大きく迂回して進んだ。


 その日の夜。

 ウィンドウの警告に従って息を潜めていると、遠くから蹄の音や靴音が響いてきた。空を見上げると、木々の隙間から、夜の闇に橙色の灯りが差しているのが見えた。灯りの長さからしてかなりの大部隊だ。

 そりゃそうか、あの化物相手なんだから。


 森の深部にまで届く、心に刺さる人間の殺気。呼吸をするのも躊躇ってしまう。


 今は見つからないようにと、ただ祈るだけ。

 やがて音と灯りが遠のいたのを確認して、二人で肩をなで下ろした。


 とりあえず作戦の第一段階は無事終えたようだ。俺達は気配を消したまま、その場で夜を明かした。

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