表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22時の銃口  作者: 緑 新一
1/1

1話 始まりの日

「まもなく綾瀬。綾瀬。お出口は右側です。北綾瀬駅行きの電車に〜」


時計は22時を回った。長い仕事を終えた僕はこれまた長い帰路の途中だった。周囲を見渡すと、ひどく疲れ切った背広姿の男たちがスマートフォン片手に下を向いている。資本主義の奴隷。スマホの支配。そんな言葉が頭に浮かんだ。視線を前に戻すと、ガラス越しに反射した女の人と目が合った。しかし、コンマ一秒も経たぬうちに、すぐに顔を逸らされた。よほど気持ち悪かったのだろう。あれほど若いと思っていた僕も、今年で遂に30を迎えた。おじさん扱いされるのも時間の問題である。


ーはぁ疲れた


電車は綾瀬駅に到着した。3人ほど降りたかと思うと、また同じ数の乗客が搭乗した。車内は相変わらず満員である。


ーみんな何時まで仕事してんだよ。早く帰りゃいいのに


これは自分にも当てはまるなと思いながら、スマホに視線を戻す。あと5駅か。時間にして16分。小さい頃から僕は人混みが苦手だった。逃げ場のない満員電車は殊更に。それゆえ、自分の駅まであと何駅か逐一カウントするのが癖だった。帰ったら、牛丼でも食うか。そんな事を考えていると、ヒンヤリと硬い物体が額に触れた。


「動くな」


ーえ?

次の瞬間、僕は額に触れたその物体の正体を知り、恐れ慄いた。黒く沈んだ金属の塊。先端に開いた小さな円は空洞であるはずなのに、こちらを覗き込む盲目の眼のように深かった。引き金へと伸びる細い曲線だけが、ただ静かに、誰かの運命を待っている指先のように震えていた。


そう。拳銃である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ