龍宮
「おっちゃん、これ1つ頂戴」
出店にて肉包飯を買う。
村を出て3日が経った。やはり都は凄い、といったところだろうか。どこもかしこも出店だらけで賑やかに栄えている。
上には提灯が垂れ下がり空を色鮮やかに彩っている。広場では、子供達が鬼ごっこをしながら遊ぶ声が聞こえてくる。
「こんな平和が、続けばいいのになぁ」ボソッ
「そうだな」
ビクッ
驚いて後ろに飛び振り返ると、そこにはあの長がいた。普段着なのか、前とは違う薄青色の着物を着て、赤色の麻紐で髪を結いている。腰には護身用であろう刀を刺していた。長はニッと笑う。
「ここまでご苦労。まぁまだ距離はあるんだがな?」ニヤ
「…」
…ウザイ。
どうやら、長は私の事をあまり好いてはいないようだ。この先が不安になる…。
「まぁ精々頑張るんだな。」
「分かってますー。」
そう言うと長はフッと笑い、待たせていた馬車に乗って龍宮の方向へ行ってしまった。
もしかして、私の様子を見に来てくれたのだろうか…。それにしても…
「馬車…、ずるい…!」
さて、龍宮まであと半日といったところだろうか…。ここ3日程、ほとんど休まず歩いているので、足が生まれたの小鹿のように震えていた。正直、体を動かすのはあまり得意ではない┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈。
┈┈┈┈┈┈買い食いをしながら歩き、半日、遂に龍宮に辿り着くことが出来た。
キッチリとした着物を纏った門番に話しかけ、通行許可を手に入れる。
「あの、すみません」
「はいはいって…あなたは!」
「?なんですか」
門番は慌てふためきながら鳩で文を飛ばす。
ちなみにだが、私たちの連絡手段は文鳩といって、鳩がつけている巾着に路銀を入れて文を飛ばしてもらう。
その鳩は地域ごとに異なるため、文宛屋というところに行って飛ばしてもらうのだ。
門番が文を飛ばして少し経つと、見慣れた顔が門の奥から見えてきた。
「よく来たな鑑属師。遠路遥々ご苦労」
「はい。…そちらの方は?」
長の隣には、髪を稚児髷に結い、薄赤色の着物と薄栗色の衣を羽織った美しい女性がいた。少し珍しい赤茶色の髪色をしていて、2人が並ぶととても様になっている。
「こちらは有林。お前の教育係となる女性だ。」
「教育係…?」
私は部類的には武士のはず…。教育係なんて女官や宦官しかつかないはずだが…。
「あぁ。言い忘れていたな。お前は一応武士だが、戦いの無い間は女官として働いてもらう。」
「え」
「…改めて、女孺女官の有林よ。…よろしく。」
えぇぇぇぇ……