村の祭り(上)
「キャァァァァァー!」
この世界は、残酷だ。
貧富,身分の差は激しいし、属性差によってもヒエラルキーがある。
でも、こんな世界でも美しいと思ってしまう私は、どうかしてるのだろうか┈┈┈┈┈。
┈┈┈┈┈┈┈「助けていただいて、ありがとうございます!」
助けた深緑の着物の女性が深々と頭を下げる。
「いえいえ。さっきのは小さい炎怪だったんで、大丈夫ですよ」
「怪異の“型”が分かるんですか!?」
「それに、あの払い方…」
この世の人間に属性があるように、怪異にも“型”がある。
炎怪・水怪・地怪・風怪…。
私にはなぜかその型が“分かる”。
そう、分かるのだ。
「はい。さっきは水をかけただけです」
「炎怪は水に弱いから」
「み、水だけで…!?」
「はい」
型は本来分かりにくく、倒した後浮き上がる“色”で分かる。
他の人には、普通の怪異の色が全て灰色に見えているようだが、私にはその色が最初から見えているので、簡単な対処法なら分かる。
だから、さっきの怪異が炎怪と分かり、水をかけて退治することができたのだ。
「おねーちゃんすごーい!」
女性の連れていた童が私に言い寄る。
その無垢な瞳が私の心をじんわりと暖かくさせる。
「貴方のような優秀な方なら、やっぱり属性“風”ですか?」
あぁ、“ヒエラルキー”。
属性は、風・地・水・火の順に優秀とされている。尤も、私はなんの属性も持たないのだが…。
「あー、用事を思い出したので帰りますー」
もう周りに怪異の気配はしないから、大丈夫だろう。それより、今日は村で祭りがある。
「えっ、そんな!」
「怪異は心の隙間から生まれます。」
「どうか気を引き締めて」
そう言い残し、村のふもとまで走ってゆく。
怪異は、心の隙間から生まれる。
これは御伽噺だが、怪異はかつて、先祖の欲望により出来たとされている。
だから様々な欲望を欲する心の隙間に入り込み、寄生する。
そこで形を得て、怪異となるのだ。
怪異はその主と同じ型になる。
さっきのはきっと女性が火属性だったのだろう┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「おぉ、碧!来てくれたんか!」
「おっちゃん久しぶり。で、今日は何すればいいの?」
今日の祭りは一年に一度の奉納祭。
ここら一帯の神様に一年の感謝を、舞や米を奉納する事で伝える日だ。
私はこの祭りが大好きだ。なぜなら、皆が生き生きとしていて、夜空に輝く星がより一層綺麗に見えるから。
「お好み焼き!焼いといてくれ」ニッ
「了解ー」
この頭皮が寂しくなってきているおっちゃんは、私が子供の頃から世話になってる荷車屋の店主だ。
おっちゃんは毎年、祭りになるとお好み焼き屋を出していて、ここのお好み焼きは絶品も絶品!
私は味にうるさい方だが、このお好み焼きだけは、昔から文句がつけれない。
私はこの味に惚れ、おっちゃんに弟子入り。
今は毎年祭りでお好み焼きの焼き台に立っている。
そんなこんなでお好み焼きを焼いていると、段々と辺りが暗くなっていった。客足も着々と増えていく。
そして、灯篭が灯り始めた頃、始まりの合図の花火が打ち上がった。