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異世界で「浄化」スキルに目覚めたぼくが全てを浄化するまで

作者: ホリー

目の前がブラックアウトしている…

頭も痛い…

何があったのか?


「よくぞ来てくれた勇者よ」


突然声が聞こえてくると同時に目の前がはっきりとしてくる。どこだここは?俺は何だ?突然のことに混乱してきた。そして気付いたら片膝をついた状態で足元のカーペットを何故か見ている状態のようだ。なんなんだ?


「勇者よ。おもてをあげよ」


おもてをあげよなんて人生で初めて言われたな。言われた通り、とりあえず顔を上げる。…汚らしい肥満体のおっさんが居た。息がとても臭そうだ。王冠を被ってるから王様なのだろう。コスプレかな?


「おい、結果はどうだ?」


王様?らしき人は僕の左横の方を見ながらそんな事を言う。つられてみるとローブを着た魔法使いのような奴が虫眼鏡のようなものでこちらを見ている。何してるんだろ?


「浄化スキル…コモンスキルです」

「腕輪を着けて牢屋に連れて行け!」


そばに控えていた槍持ちの兵士たちが、僕を取り囲む。思わず「ひぃ~」とか声が出てしまったが、仕方ないだろう。両脇に腕を差し込まれて、無理矢理立たされる。槍にビビって腰が抜けたようで、自分からは動けない。僕があたふたしているうちに鉄の腕輪を取り付けられた。俺が何をしたのか!そう叫びたいけど声が出ない。怖いので、大人しく牢屋に連行された。




大人しく牢屋に入ると兵士は何も言わずに鍵を掛けて去って行く。これからどうなるのだろう?


「なにかしたかな?」


思わずに口に出てしまったが、仕方のないことだろう。とりあえずいろいろと情報を整理しておこう。自分は清水清22歳で社会人4年目だ。何の仕事をしてたのかは何故か思い出せないが、両親に恵まれ良い人生だった。良い人生?そういえばトラックに轢かれたんだったな。あの子は助かったのだろうか?なるほど異世界転生ものか。


「状況は整理できたな。この後どうするか?」


このままだと殺処分される可能性は高い。確かあの虫眼鏡…インテリ君は浄化スキルと言ってたな?とりあえず脱出に使えるかもしれないから試してみるか。


「浄化。浄化。浄化スキル!浄化せよ!」


何も起きない。正確にはへその下辺りから何かが動いていたようだが、それは両手の手首辺りまで来て腕輪辺りで消えたな。


「なるほどスキル封じの効果なのか」


恐らく腕輪の効果なのだろう。その後は異世界もの御用達のステータスオープン等も試したが、何も起きない。スキルも使えないし、処刑エンドかな?参ったな。


「こういう場合はスキルを使いまくれば、パワーアップして何とかなるはず」


しかしながらスキルは封じられてるし、どうすれば…腕に行かなければ使えるのか?浄化は何度か試して、気付いたが無声式でも使える。まずは身体の中を浄化してみるか。


結果としては大成功だった。ストレスでお腹が痛かったが治り、内蔵関係を一通り浄化したところで脳も浄化してみた。本来ならリスキーだがこんな状態なので、死んだらしゃーないという気持ちで脳を浄化してみると、浄化の力は少し強くなったようだ。このまま使いこなせば何とかなりそうだと手応えを感じたので、引き続き能力アップをしていく。絶対牢屋から逃げ出してやる。



3日ほど牢屋に入っていただろうか。たまにボロボロの服を着た人が食事を持ってくる。食事は兵士が持ってくると思ったが、給仕は奴隷或いは囚人の仕事なのだろう。食事は不味かったが、浄化スキルを使いこなせるようになってからは手じゃない所からも出せるようになったので食べ物を浄化する。肘から浄化ビームを出せば、不味い飯もすれば美味しく食べられます。チートスキルありがとう。


「1か月後に処刑か…」


先程給仕に来るやつに浄化を掛けてやった所、感謝をされて事情を聞くことが出来た。どうやら僕は隣国との戦争で勝つために勇者召喚されたらしい。この国では政府が腐っており、浄化スキルはかなり都合が悪かったようだ。


「このまま浄化スキルを磨いて逃げるしか無いな」


多くの人に浄化スキルを掛けて敵を減らす。浄化したからと言って味方になるとは限らないが、少なくとも冤罪で牢屋に入れられてるので、悪いことにはならないだろう。決行までの1か月間でスキルレベルを上げて多くの味方を作るしか無いだろう。長いようで短いレベル上げ生活が始まった。



あっという間に1か月が経ち、広範囲に使えるようになった浄化スキルで、出迎えの兵士たちを浄化した。兵士たちは涙を流しながら自分達の罪を懺悔し始めた。薄汚い心の持ち主だったらしい。しかしながら、ここまで効果が強いなら脱走しなくても何とかなりそうだな。僕は浄化で仲間を増やしながら国王の元に向かう。浄化の時間だ!


「ぐわぁぁぁー!」


不意打ちで浄化スキルを受けた国王が叫び倒れる。キレイな国王の誕生だ。感謝してくれて良いよ。心も身体も綺麗になった国王はどうやら王位を譲ってくれるらしい。面倒そうなので辞退する。僕はこの世界を浄化する使命があるから忙しいんだよ。


「申し訳有りませんが、私は世界を浄化しなければなりません。私の力が必要になればいつでも力になります」


こうしてそれらしいことを言って、面倒な役割を回避した僕は、異世界を浄化する旅に出る。まだ見ぬ悪党共は僕が全て浄化してやる。


―――――――――――――――――――――――――


目の前がブラックアウトしている…

頭が痛い。

何があったのか?


「よくぞ来てくれた勇者よ」


突然声が聞こえてくると同時に目の前がはっきりとしてくる。どこだここは?俺は何だ?突然のことに混乱してきた。そして気付いたら片膝をついた状態で足元のカーペットを何故か見ている状態のようだ。なんなんだ?


「勇者よ。おもてをあげよ」


おもてをあげよなんて人生で初めて言われたな。偉そうでムカつくな。とりあえず顔を上げる。…いかにも王様な王冠を被った強そうな奴が目の前にいる。でもムカつくから一発殴りたい。


「宮廷魔道士長、結果はどうだ?」


王様は俺の左横の方を見ながらそんな事を言う。つられて確認するとローブを着た魔法使いのような奴が虫眼鏡のようなものでこちらを見ている。何かウゼーな。


「記憶改ざん!スキル封じを!」

「魔道士たち!急げ!」


慌てた様子で近くに居たローブを纏った奴らが魔法らしきものを使う。魔道士たちはそれぞれの手から魔法らしき光を出すと俺を拘束していく。謎の光に拘束され、あまりの苦痛に俺は意識を手放した。


「痛え…」


気が付くと牢屋の中に居た。身体がかなり痛む。手枷を付けられているし、何が何だか…


「ぜってぇ殺してやる!」


思わずに口に出てしまったが、仕方のないことだろう。とりあえずいろいろと情報を整理しておこう。俺の名前は鬼怒田35歳。下の名前は何故か思い出せない。人生に失敗して、保険金目当てにトラックに飛び込んだ。転生したのか?そういえばトラックに轢かれたんだったな。なるほど異世界転生ものか。


「転生したのか?どうやって仕返しするか」


このままだと俺は処刑される可能性は高い。確かあの宮廷魔道士と呼ばれてやつは記憶改ざんスキルとか言ってたな?どう使えば良いのか?


「記憶改ざん!記憶改ざん!記憶改ざん!」


何も起きない。正確にはへその下辺りから何かが動いていたようだが、両手の手首辺りまでは動かせた。そして手枷辺りで消えた。


「クソ!手枷のせいか」


恐らく手枷の効果なのだろう。その後も何度か試してみたが、何も起きない。そもそも記憶改ざんを使う相手も居ないし、処刑かな?最悪だな。


「どうすりゃいい?相手も居ないし…自分に使うには…」


その時に俺は閃いた。自分の記憶を改ざんすれば良いのでは?スキルを使い続けて記憶を誤魔化せば火事場の馬鹿力のような力も任意で出せるかもしれない。その時から自分の身体を実験にしたスキル強化計画が始まった。


結果としては大成功だった。自分の記憶を改ざんして身体中の痛みをなくし、疲労の軽減も出来た。本来ならリスキーな使い方だが痛みを消せるのは有り難かった。自分の脳に何度もスキルを掛けているうちにかなり使いこなせるようになった。このまま鍛えれば脱走も可能だろう。



3日ほど牢屋に入っていただろうか。たまにボロボロの服を着た奴が食事を持ってくる。食事は兵士が持ってくると思ったが、給仕は奴隷或いは囚人の仕事なのだろう。食事はこの世の物とも思えない味だったが、記憶改ざんスキルに掛かれば高級フレンチのような味だ。まぁ食べたことはないけどな。

スキルを使いこなせるようになってからは手じゃない所からスキルを出せるようになったので、膝からビームのように出したスキルで給仕は洗脳済みだ。バレないように少しずつ記憶を改ざんしたおかげで、情報を抜き取ることが出来た。


「1か月後に処刑か…」


抜き取った情報によると、事情を聞くことが出来た。どうやら魔王討伐の為に古から伝わる勇者召喚で呼び出したようだ。記憶改ざんスキルはかつて呼び出した勇者が悪用して、国を滅ぼしかけた危険スキルだそうだ。


「あいつらだけはゆるせねぇな」


多くの奴らの記憶を改ざんする。記憶改ざんした奴らが処刑の日に手のひらを返して、代わりに国王を処刑する。まずは決行までの1か月間でスキルレベルを上げて多くの味方を作るしか無いだろう。レベル上げの開始だ。


あっという間に1か月が経ち、本日は処刑日だ。広範囲に使えるようになったスキルで、出迎えの兵士たちをまずは洗脳する。兵士たちは魂が抜けたようになり、洗脳が成功したことが分かる。これなら王位簒奪計画は成功するだろう。俺は道中で記憶を書き換えて仲間を増やしながら国王の元に向かう。お仕置きの時間だ!


「ぐわぁぁぁー!」


偉そうに玉座に座ってた王の裏に回り込んで記憶改ざんスキルわ叩き込んだ国王が叫び倒れる。これで傀儡国王の完成だ。感謝してくれて良いよ。その後記憶改ざんスキルを何度も掛けて記憶を調整した国王が俺を罪人ではなく、真の勇者だと国民に発表することになった。


「1か月前に召喚した勇者は浄化スキルである!これから勇者は魔王討伐に向かって貰う」


こうして俺は、記憶改ざんスキルを浄化スキルと偽り、旅に出ることになった。その後魔物にもスキルが有効だったため、浄化したと勘違いさせて多くの仲間を作り上げた。そして俺は魔王を討伐したことにして、魔王の記憶も改ざんして配下にした。始まりの城に戻った俺はまず現国王も無能な愚王として、殺さずに平民にしてやった。貴族も全て廃止して、現代社会に近い文明を築き上げることに成功した。どんな政策を取り入れても批判はなく、文明を発達させたことにより亡くなる間際には賢者と呼ばれることになった。



後世では、愚王が多くの国民たちを苦しめて居たが、浄化スキルで多くの国民を笑顔を取り戻したとされている。現在浄化の勇者や賢者の子孫の血筋がかなり多く居るが、勇者の子孫にしてはろくでなしが多いため、浄化の勇者の数々の逸話は偽りだったのでは言われている。その真実は不明である。

何となく思いついたので書きました。

転生者が自分に都合の悪い話を改ざんした話です。

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