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 あれから2ヶ月。とうとう社交界デビュー当日となった。


 この2ヶ月間、張り切ったソフィアにあちこち連れ回されてドレスを見繕い、髪飾りを買い、靴も選んでもらった。


 クタクタになりながら、そういえば1度目の人生の時もソフィアはそうだった。と、あの時と同じドレスを着ながら懐かしむ。


 ソフィアが選んだドレスは、深い紺色で胸元のリボンがとても可愛いデザインだった。ピンクブロンドの髪の毛も良く映える。



「…よし、行きましょうソフィア」

「はい!お嬢様」



 ソフィアを引き連れ、馬車に乗り込む。

 ゆっくりと走り出した馬車に揺られながら、1度目の社交界デビューを思い出していた。


 今日はジードも来ているはず、決して近寄らず、私達が出会うことのないようにしないとね。




 ****


「これはこれは!ジェンキンス伯爵家のご令嬢ではないですか」

「初めまして、私ヘレナ=ジェンキンスと申します」


 父の付き添い、関わりのある貴族達へ挨拶に回る。

 もう何組と挨拶したかは覚えていないけれど、すでにクタクタ…。


 最後の貴族への挨拶が終わったのか、父から「好きなように回ってきなさい」と告げられたのは、それからさらに5組に挨拶した後だった。




「ふぅ、やっと終わった…」


 

 テラスに出て、夜の風を浴びる。ついさっき、従者から貰ったワインで喉を潤すとヒュッと冷たい風が頬をかすめて、ブルッと身震いした。



「春とはいえ、まだ夜は冷えるわね」

「ジェンキンス伯爵令嬢?」



 やっぱり中にいた方がいいかしら、そう思いテラスを離れようとした時だった。懐かしいような、聞き慣れた声だ。



「…あ、貴方は」

「あぁ、挨拶もせず申し訳ない。ジード=ハブリックです、以後お見知りおきを」



 そう言って、胸に手を当て頭を下げる。1度目の人生では、こんな展開になることは無かった。というよりも、私からグイグイアピールしてたっていうのもあるんだけど…。



「ヘレナ=ジェンキンスです…」



 ここで名乗りもせずに立ち去る事は許されない。カーテシーの格好を取り、一応自己紹介をする。


 このままジードに合わず社交界デビューを終える予定だったのに、一体どうしてジードが話しかけてくるのよ!?


 あまりにイレギュラーな展開に、私も頭を抱えてしまう。

 とりあえず、挨拶は終えたしここを去らないと…。



「ジード様、申し訳ありません。私、ちょっと用事を思い出してしまったので、これで失礼いたします」



 少しばかり早口で告げ、ジードに背を向けた直後に後ろへ引っ張られる感覚。右手がジードによって掴まれている。



「ジ、ジード様?」

「いいではありませんか、ヘレナ嬢ともう少し話がしたい」

「い、いえ。私は特に話すことも…」

「実を言うと、一目見て運命を感じてしまったんです。貴女の美しさに…」



 どこかで聞いたようなセリフ、というかこれはジードがよく使う口説き文句だ。アンナ=サンテーレと婚約する言った時もこのセリフを聞いた気がする。


 まさか、2度目の人生ではジードの方から口説いてくるなんて…。


 サーッと顔が青ざめていくのが自分でもわかる。

 こんな男に人生をめちゃくちゃにされたくない!どうにかして逃げないと。


 意を決して、ジードの手を振り払おうとした時だった。





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