プロローグ
夜会の日、中央ホールのど真ん中に立たされ、貴族達が何なんだと集まってくる中で、
「ヘレナ=ジェンキンス!私はお前との婚約を破棄する!」
そう言って、すでに王家から承諾を得ているということを証明する婚約破棄承諾書を私に突き付けて、左手に抱くアンナ=サンテーレ子爵令嬢を愛おしそうに見つめるのは、つい先程まで私の婚約者だったジード=ハブリック。
ハブリック侯爵家の嫡男で、将来を期待されている。
家柄、容姿、信頼…1つ難点があるとすれば、それはとてつもなく女癖が悪いことだった。
「俺はアンナを一目見て、これは運命だと確信した!お前のような気の強い女よりもアンナのようなか弱い女の方が俺には合っているんだ」
「ジード様…っ!」
爵位も下の女に婚約者を取られ、婚約破棄という屈辱を味わった私は悔しさのあまり自害しようと毒入りのワインを口に―――
と、言うのが私に残る最後の記憶。
「一体どういうことなの…これは夢?」
鏡に映る自分は、何故か17歳の姿をしている。
そっと自分の頬に右手を添えて思いっ切り引っ張ってみたけれど、夢から覚めるどころか右頬はジンジンと痛み熱を帯びる。
「……17歳の頃に、戻ってる?」
まるで小説の中のような出来事に、イマイチ現実味受け入れることが出来ない…。けれどもし、これが現実なら?
「ジード=ハブリックには出会わないようにしなきゃ」
ジードには社交界デビューの日に出会い、私が一目惚れし猛アタックの末ようやく婚約まで漕ぎ着けた。でも、その2年後の19歳の夏に婚約破棄をされる。
しかも、ジードが明らかに遊びだと確信していたから目を瞑っていたけれどその2年の間に最低でも5回は浮気されている…。
もうジードの本性は分かっているし、社交界で一目惚れすることもないだろう。
「私、新しい人生を歩むわ!」
神様がせっかく与えてくださったこのチャンス、逃すことなく私は新しい人生を歩んで今度こそ幸せになってやる!
誰もいない部屋で1人、ヘレナ=ジェンキンスはそう決意した。
はじめまして!【婚約破棄されたけど逆行令嬢になったので新しい人生を歩みたい!】を開いていただき、ありがとうございます(;;)
処女作なので至らぬ点もあるかと思いますが、楽しんでいただける作品にできるよう頑張ります。