煌めくアビリティ
「不運にも死んでしまった君に素晴らしい能力を与えてあげようじゃないか。そして、別の世界に送ることにする。」
耳を疑ったが確かに神様がそう言ったのだ。これは期待せざるを得ない。信憑性が段違い。
これはあの憧れの。あれだ。
「もしかして異世界転生!?やった!!神様!神様ーーー!!!」
青年は自分が死んだことも忘れるくらいに喜んだ。飛び跳ねたり、腕を振り回したりして、身体全体を使って喜びを神様に表現した。
「ふふ。そんなに喜ばれたら、こちらまで幸せになってしまうよ。君たちの幸福こそが私の幸福だ。」
「ありがとうございます!しかし、何故この俺に力をくれるのですか、神様。」
青年の問いに神様はにこやかな笑顔で答えた。
「最近の人間は死ぬ寸前に戦うための異能を持って別の世界に転生したいと願う者が多い。流行っているのだろう?だから、そんなに望むのなら叶えてあげようと思ったのだ。」
「俺は選ばれたのですね!是非お願いします!炎の能力にして下さい!炎の能力で違う世界に転生したいです!」
「その通りだよ。選ばれたんだ。でも、安心したまえ。神は皆に平等に機会を与える。ここにきて、望んだ人間の全てに異能を与えたから。炎の能力だったね?戦うんだろう?よかろう。丁度、君は100万人目だ。おめでとう。これで最後の参加者だ。すぐに始めよう。」
「ええっ!?希望者全て?ちょっと待って下さ・・・うわっ!」
神々しい光を浴びて青年は目を閉じた。瞬きすら出来ない。暫くして目を再び開けるとそこには看板があった。
『異世界転生者の世界はこちら。』
その看板の他には何もない。グレー色の薄暗い世界が広がっている。天から声が聞こえてきた。神様によるアナウンスがなされる。
「思う存分に楽しんだらいい。千年で足りるかどうか私には分からない。おまけで二千年にしておくよ。それでも短いかな?飢えることはしないし、病まない。そして死なない。少しの間で申し訳ないけれど。それじゃ。皆さん頑張って。いいことすると気持ちいいなあ。」
そう言い残して神様は消えた。残された100万人の転生者達。
神様はウソをつかない。大多数の人間の望みを叶えてくれた。
神様は慈悲深い。不幸にも死んでしまった者を慰めてくれた。
優しい神様ありがとう。青年は感謝を込めて神様から与えられた能力を発動し、燃え盛る右手から炎の球を天に向かって射出した。
神様に届くことは無かった。