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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第三章【第六十五王都《ノズマリア》編】
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九十七話【マストル探し】

 螺旋階段の部屋から出るための扉をこじ開ける。


「っはぁ……重い……」


「これくらい頑張って持ってくださいよ」


「僕は一応美音(みおん)様背負ってるんだけど……」


「……それならいいんスけど」


 謎の納得を貰ったところで捜索開始だ。


「じゃあ、僕は右行くから、マキは左をお願い出来る?」


「了解ッス。あ、ちょっと待って欲しいッス……これを」


「……何コレ?」


 マキが差し出してきたのは、手のひらサイズの小さな短剣だった。


世界剣(ディーヴァ)さんの分離体的なものッス。もしマストルさんに遭遇しま場合、直ちにその場所が分かるようにって提案ッス」


「なるほどね」


 気が効きすぎるだろうと思ってしまうほど配慮が良い。さすがマキに”無敵の剣”と言わしめただけはある。


「マストルさんに遭遇した場合はすぐに逃げた方がいいッス。一応その剣にも最低限の力を込めてあるので、ある程度は誤魔化せるッス」


「……大丈夫なの?」


「確信はありませんけど……まぁ世界剣(ディーヴァ)さんからの提案だったので……やらないよりマシと思ったッス」


「……そうだねぇ」


 マキの中では世界剣(ディーヴァ)の言うこと=絶対みたいなイメージにあるのだろう。世界剣(ディーヴァ)も楽ではない。


「……あまり頼りすぎないようにね」


「そこら辺は大丈夫ッス!」


 何を根拠に大丈夫と言っているんだ?と疑問になったがとりあえず伏せておこう。


 今大切な事はそれではない。


「じゃ、改めて二手にね」


「はいッス。それじゃあ気をつけて」


 逆方向に走り出したマキに手を振り、右側の通路へと足を向ける。


 外からは悲鳴と雄叫びのようなものが絶えず飛び交っている。混乱はまだ収まっていない。


「早く見つけださなきゃ……」


 存在感を辿り、より強い者の場所を探る。


 しかし、いくら探っても見つかるのは弱い存在感のみ。マストル程の存在感は欠片すら現れない。オマケに……


「そこの使用人ー!」


「……はぁ、めんどくさい」


 攻め込んできた兵士たちが無数の列を率いて向かってくる。しかも、数が圧倒的すぎて前後左右囲まれた。


「大人しくせよ!貴様が第六部隊を壊滅させたのは知っている!」


 単独行動だったので、迫ってくる敵は全て気絶程度に倒してきた。第六部隊……みたいな細かな名称は分からないが、おそらく倒したのだろう。


「……あの、えと、すいません。僕、急いでるので……」


「知ったことか!覚悟せい!」


「はぁ……」


 出てくる敵の台詞がパターン化されすぎてため息が出る。


「ため息なぞ着いている暇があると思うのか!使用人の分際で!」


「……ありますよ。少なくとも貴方たち相手なら」


 後方列から飛び出してきた一人の兵の攻撃を本能で躱し、反撃に甲冑ごと殴り飛ばした。


「な……!あの腕っ節のユーテルがやられた……!?」


 腕っ節だかなんだか知らないが、これが強い基準なら全然余裕だ。


「あの」


「「ひいっ!」」


 少し声をかけただけなのに怖がられた。もうため息も出ないくらい呆れてしまう。


「……もう一度言いますが、僕は急いでるんです。道を開けていただけないでしょうか?」


 数は聖皇軍(ホーリーパレード)より断然多いが、一度植え付けてしまえばもう苦労はない。


 恐怖とは実に便利な感情だと身に染みて実感する。


「どうするよ……」「素直に開けるか?」「いやそれだとあの方が……」「関係ねぇよ!死ぬよかマシだ!」「でも、取り逃したら殺される……!」


 周りの兵士たちが口々に弱音を吐き散らす。状況が停滞している。


 これはこちらから動いた方がよさそうだ。


「……道を開けないなら、こちらが開けるまで」


 その場から思い切って踏み込み、前列へと飛び込み、立ちはだかる兵士の内の一人の鎧を掴む。


「うえっ!?」


「借りますね」


 掴んだ兵士を目の前に思いっきり蹴飛ばし、道を作る。


「……とりあえず危機脱出ってとこかな」


 嘆き叫ぶ兵士たちを尻目に、僕はさらに足を進める。全く甘ったるい連中だ。


「この角は……右でいいかな───」


分岐路を右に曲がったその時、僕は絶句した。


「……誰が、こんな事……」


読んでいただき、ありがとうございます。

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