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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第三章【第六十五王都《ノズマリア》編】
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九十話【傀儡帝】

 差し出した手の先、何か光るものが現れる。


「……六角の傀儡。死を司りし俺の最高傑作の一つ」


 その光は段々と黒く染まり、物体を形成していく。


「──トート」


 黒い砂のようなものが渦巻き、その中から人型の何かが現れた。


「……これはお前たちを死へ誘う傀儡……基、出来損ないの成れの果てだ」


 傀儡……実際に見るのはこれが初めてだが、イメージとだいぶ違う。もっとこう、木だったり鉄だったり使ってるイメージだった。


 しかし、目の前にいる傀儡は全身が形づいておらず、浮いている砂の物体のようなものだった。(人間と同じく各部位はしっかりあるが)


「……傀儡使い?」


「……そうだ。俺はあのお方の特別精鋭にして、傀儡帝(サイエントマター)の名を賜った。そこらの兵と同じにしてくれるなよ」


 精鋭か。あの方というのは分からないが、存在感からして強敵なのは間違えない。おそらく、僕やマストル単体では、勝つことは難しい。


「マストル、ここは協力してアイツを──」


「てめぇ」


 黙っていたマストルが、ふと口を開いた。


「……なんだ?」


「その傀儡、誰で作ってきやがった?」


 突如発せられたマストルからの質問に、男は口元を緩ませた。


「……子供の割には察しがいいな。見た目は大分壊したんだがな」


「……存在探知がなかったら気づけなかったけどな。それより、俺の質問に答えろ。その出来損ないってのは……」


 二人の会話についていけない。さっきからマストルは何を言っているんだ?


「ねぇ、マストル。さっきからなんの事──」


「黙れアルト。もしかしたら、今俺たちが対峙してる相手は、ただの敵じゃねぇかもしれねぇんだ」


 僕を叱るマストルの顔は、いつも以上に強ばっていた。


「……ふむ、仲間割れもせず冷静さを保っていられる……強固なものだな、絆というのは」


「何すかしたこと言ってやがんだ。俺の質問にはノーコメントか?」


「……無論だ。まぁ、お前たちがこの傀儡を破壊できたら教えてやってもいい」


「……無理だと分かってて、言ってくれるな」


 マストルと男は、その間に言葉で表せないような何かをぶつけ合っている。


 これは少しまずいのかもしれない。


「……アルト、俺は今から万生状態(エンペラーステップ)であの傀儡ごと男をぶっ壊す。お前は美音(みおん)様を死守しろ」


「……唐突だね。何か策でもあるの?」


「ある訳ねぇだろ。あの傀儡は得体がしれねぇからよ。……ある程度俺なら耐えられるから、まずはそれで小手調べだ」


「分かった。気をつけろよ」


「今回ばかりは言われなくても分かってるよ」


 傀儡の存在感を密かに測ったが、何故か反応しなかった。という事は、自由意志と言ったものが傀儡には存在しない。


 であれば、あの男が操っているのだろうか。しかし、そんな動作は見受けられない。


「……お前たちが何を企んでいるのかは知らんが、この傀儡を倒さない事には始まらないぞ?」


 男は挑発するように誘ってくる。あんな見え見えの誘いに乗るわけが──


「あ”あ”?てめぇ、俺たちの事なめてるだろ」


 そうだ、忘れていた。ここに居たんだった。


「言っとくけどな。たかがお人形遊びで俺たちを殺そうなんて甘いんだよ」


「……そうか。では、そのお人形遊びをその身をもって味わうがよい」


「あぁそうする。存分に味あわせて貰うぜ」


 マストルは言い終えると、左足を起点に大きく踏み込んだ。


「入ったぞ。俺の射程圏内」


 目にも止まらぬ速さで男の懐に入り込んだマストルは、右手を大きく振りかざす。


「……中々よいな。しかし、映像で見たより遅くなっているのではないか?」


「うっせぇよ。まずは一発目だ」


 遠心力全開の右ブローが男のみぞおちを襲う。


「……トート」


 ドガッ という音と共に、マストルの拳は男……ではなく、先程出てきた傀儡に炸裂した。


「ちっ!さっきと同じ感触……!」


「……その通りだ。先程の攻撃もトートの一部によって防がせてもらった。最も、防がずとも効かなかったがな」


「戯言だな!防いどいて説得力ないぜ!」


 マストルはそれを気にせず連撃を仕掛ける。


「おらァァァァ!」


 しかし、どんな角度から攻撃を浴びせても、全て傀儡を破壊する打撃とはならなかった。


「……無駄だということが分からぬか?やはり身体特化系の保持者はそれに依存しやすい傾向にあるな」


「ほざけ!」


 さらに速くなるマストルの連撃に、傀儡は冷静さを保ち対応する。まだ一撃も優打点が入っていない。


「くっそぉお!硬すぎんだろ!」


「……この傀儡の正体を知っているなら言うまでもないがな。……しかしながら少年よ、我が身は気にせんでよいのか?」


「あぁ?俺がどうしたんだってん……ッ!」


 男が諭すように言った瞬間、マストルは血走った顔を青ざめ、突然後ろに下がった。


「……気づいたか。だが、もう遅い」


 男は緩んだ口元をさらに歪ませ、嘲笑うかのようにマストルを指さした。


読んでいただき、ありがとうございます。

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