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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第三章【第六十五王都《ノズマリア》編】
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八十四話【引き受けた】

 固唾を飲み、その提案を聞く。


「その提案とは……」


 ……ゴクリ


「ここにいる全員を一人残らず倒すことだ!!」


「……はい?」「……は?」


 待て、それでは現在状況と全く変わっていないではないか。


 こちらは 美音(みおん)を連れて一刻も早くここを抜け出したい。それには目の前にいる全員を倒さなければならないのは必然的だ。


「ちょっと待てよ!それじゃあさっきと状況が変わってないじゃないか!」


「ふははは!冗談さ!軽いジョークだよ」


 全く笑えない。


「まぁそんなカッカするなって。本当の提案は今から言うからよ」


「……最初から言ってくださいよ」


「では、発表しよう!お前たちの運命を決める俺からの提案とは……」


 ……ゴクリ


「俺の弟子にして配下であるコイツを倒せ!さすれば、大人しく引き上げてやろう」


「……コイツ?」


 男は後列に手をやり、一人の少年を引っ張り出してきた。


 おずおずと出てきた男の子は、僕たちより少し年下、或は同年代くらいの少年だった。


「コイツは俺の一番弟子にして有能な部下!年は幼いが、実力は確かなモンだぞ!」


 男が紹介すると、少年は照れくさそうに顔を手で隠す。


「……ナメてんのか?こんな子供と俺らを戦わせようなんて」


 後ろから意気揚々と出てきたマストルが拳を鳴らす。


 正直僕も同意見だ。騎士団長っぽい人が言うのだから、もうちょっとゴツいというか、強そうな輩が飛び出してくるのかと思っていた。


 しかし、蓋を開けてみればそうでもない。見た目は完全に普通の少年だ。


「まぁまぁ待て、俺は本気で言ってる。それに、自己紹介なしに戦うのはなんだろ?ほら、自己紹介しろ」


「……初めまして。僕は 聖皇軍(ホーリーパレード)副騎士長を務めています、アトラという者です……」


 前に出てきたアトラと名乗る少年は、気弱な声で言う。


「ふん、じゃあ俺も名乗るぜ。俺は第四十六王都(ヴァルジニア)所属の王宮使用人をしている、マストル=ディーヴだ!覚えておけ!」


 アトラに対抗して自己紹介したマストルは、自信満々に声を張る。


 なんか状況的にこのままマストルに任せた方がいいんじゃないだろうか。


「マストルさんですか……覚えておきます」


「そりゃどうも、アトラさんよぉ!」


 自然と雰囲気が整ったところで、二人は互いに構えをとる。


「マストル、油断大敵だぞ。相手は未知数だ」


「安心しなって。俺を誰だと思ってやがる」


「だからこそだよ」


 折角心配して言ってるのに無視とは。勝負には勝てるだろうがギリギリの戦いになりそうだ。


「そこ!部外者は離れてな。今はアトラとマストルとの決闘なんだ」


 その言葉を聞いて少しムッときた。


 本当は僕が戦う役だったんだが……まぁ、体力が温存できるし良しとしよう。


「……分かりました。美音(みおん)様、ここは一度離れましょう」


 後ろにいた美音(みおん)の手を引き、睨み合う二人を傍観する。


「すぅ……」


 構えているアトラの体勢は独特なものだった。


 見た感じ抜刀系なのだろうが、間合いやら抜刀の挙動が一切見受けられない。不意打ちなら結構厄介そうな気もする。


「ふむふむ、いい感じだ」


 その姿を見ている男は謎に満足げ。これが師弟関係的なやつなのだろうか?


「行きます……」


 すると、構えていたアトラは口を開き、腰に下げていた刀にさらに深く手を掛ける。


「一式抜刀法……”瞬動”」


 アトラが発したその刹那、僕の真横を雷鳴が通り過ぎた。


読んでいただき、ありがとうございます。

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