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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第二章【ヘヴン編】
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七十六話【寝顔】

 理性と正気を捨てて走り続けて約三十分。遠く感じていたメイの存在感は性格に感じ取れるほどになっていた。


 おそらく、ゴールは近い。


「よし……いいぞ。もう少しで……もう少しで……!」


 もう少しで美音(みおん)の美しき顔を拝むことが出来る。そう思うだけで、枯れかけていた体力が無限大に増殖した気がする。


 今ならいくらでも走れそうだ。


「みっおっんっ!みっおっんっ!」


 正気を失った僕は、普段では考えられないような顔で鼻歌を口ずさんでいた。

 気分がいい。このままどこへでも飛んでいける。


「アルトぉぉおおお!!」


 エネット宅へ向け全速前進中の僕を必死の形相で追いかけてくるマストル。しかし、今はそんなこと気にしない。


 というか気にならない。気にしたら負けだ。


 それはさて置き、辿っていた存在感からの距離を計算した結果、予想されるゴールまでの距離およそ80km。


 このペースなら一分とかかるまい。


 再度確認した空にはオレンジ色に輝く太陽が昇ろうとしている。まだ寝てる可能性は充分ある。


 これなら寝顔を見ることが出来るかもしれない。


「よっしっ!行くぞおおお!!」


「ちょっ!おま!速いって!」


 後ろでなにか言っているマストルを尻目に家へと全速前進。


 さぁ、至福の時間は近い。


 扉が見えた。足先に異形質を集中させ、全力の踏切をかける。


「おりゃああああ!」


 地面は大分抉れたが後で直せばいいだろう。


 それより、美音(みおん)だ。早く……早く行かねばならない。これは使命であり運命なのだ。


 扉を全力でこじ開け、美音(みおん)の寝顔を探す。もう我慢なんてできやしない。


美音(みおん)ーーー!」


「今よ!やりなさい、マキ!!」


「……ッ!すみませんッス、歌絲(かいと)さんッ!」


「グブッ!」


 そこで僕の意識は途切れた。


 次に意識が戻ってきたのは、意識が途切れてから三時間あとの話だった。

謎回は今回で終了です。次回から真面目になります。(多分)


読んでいただき、ありがとうございます。

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