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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第二章【ヘヴン編】
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七十四話【殺ってしまった】

「「あ……」」


 やってしまった。


 いや、殺ってしまった、が正しいのか。


「あぁ……マストルさん……」


 マキの拳を受けたマストルの体は、ぐちゃぐちゃになっていた。


「う……うぇぇぇ……」


 思わず戻してしまった。一言で表せば”グロい”。


 その亡骸は骨が飛び出しており、頭蓋から木っ端微塵になっていた。もはや、マストルという人間の原型は保たれていなかった。


歌絲(かいと)さん……どうしたらいいんですか……?私……マストルさんを……」


 今にも崩壊してしまいそうなマキが、泣きべそをかきながら歩いてきた。


 獣を殺したことになんの躊躇もないマキも、味方を殺すことには抵抗があるようだった。


「落ち着けて。マキは悪くない。悪いのは、マキに止めさせるように言った僕だ」


「で、でも……殴ったのは私ですし……」


 首を横に振る。そう、マキは何も悪くない。僕のせいでマストルは死んだんだ。


 思えば、今までマストルには酷いことばかりしてきた。今回の死因だって、元はと言えば僕の不注意てあの場に置き去りにしたからだ。


 反省すべき点だった。


「ねぇマキ、世界剣(ディーヴァ)さんは使えないの?」


「私の力はまだ未熟なものッス。死者蘇生は行えませんし、そもそも次の使用まで時間が掛かります」


「……あとどれくらいで行けそう?」


「……五時間です」


 最後の希望は灯火を消した。この中で治癒能力が使えるのは、世界剣(ディーヴァ)さんただ一人だけだ。


 もう、治す手段も希望も存在しない。


「マストル……返事してくれよ……お願いだからさ……」


 いくら願ってもマストルの返事の一つ返してくれない。


 この命と引き換えでもいいから、マストルを生き返らせて欲しい。そう願った。


 しかし、儚い願いは消えるのみ。


「お前は僕のそばに居てくれるんじゃなかったのか……?なぁ、前言ってくれたことは嘘だったのか?」


 その時の僕の姿は、真実を知った時のマストルに似ている気がした。あの時のマストルの気持ちが痛いほど分かる。


「僕の手を握ってくれよ……マストルー!」


「ほーい」


「……え?」


 僕が叫んだ瞬間、マストルの手が僕の手を包み込んだ。


 それと同時に、マストルは目を開き、何事もなかったかのように立ち上がった。


「な……どうして……立ち上がれるんだ?」


「おいおい、折角生きてるってのに、その言い方は酷くねぇか?第一、体が木っ端微塵になった程度で俺が死ぬわけねぇだろ」


 マストルの体は先程マキによってぐちゃぐちゃの肉片へと化していたはずなのに、今見ると、傷のひとつもなく立っているのだ。


 訳が分からない。というか、「体が木っ端微塵になった程度では死なない」ってなんだ?それはもう人間じゃないだろう。


「いや、ちょっと待って。なんで体が再生してるの?」


「ふっふーん。よくぞ聞いてくれた。これこそが、我が異形質(イギョウシツ)最大の力だァー!」


 思っいきりポーズをキメながら言ってきたが、全く理解できない。


「いや、マストルの異形質(イギョウシツ)ってそんな感じだったっけ?危機察知能力とか言ってたような……」


「それは間違ってない。だが、お前は大切なところを見落としている」


「……?大切なところ?」


 自慢げに話すマストルは大きく胸を張り、こう叫んだ。


「ズバリ!俺の力は”神経が昆虫に近しいものになった”という事だ!」


 あぁ……と思った。確かに、あの時マストルの口からそんなことが飛び出していたような気もする。


 しかし、それとこれがなんの関係があるのだろうか。昆虫に近しいものになっただけで、木っ端微塵の体が再生するとは説明がつかない。


「ふむ、納得してない顔だな。神経が昆虫に近しいものになった利点……その一つは、体がバラバラになったとしても、”神経がくっつけばどんな状態からでも再生可能”になるって事だ!」


 一瞬「ん?」となった。神経がくっつけば再生する?いやいや強すぎるのも程があるだろう。


 あの身体能力に加え、再生能力も持っているのだ。ほぼ無敵と言っても過言ではない。


 ドヤ顔のマストルを前に、僕とマキはただただ立ち尽くすしかできなかった。


 今はただ、その事実を受け止めることから始めた方が良さそうだ。

読んでいただき、ありがとうございます。

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