表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第二章【ヘヴン編】
69/115

六十八話【疲れた】

「さすが姉御だよなぁ」


何も理解出来ていないような顔のマストルは、棒読みでそう呟く。こちらの思考は完全停止しているようだ。


しかし、思考停止に陥るのもわからなくはない。マストルが単純に馬鹿というのもあるが、目の前にある事実は説明がつかない。それだけでも、思考停止の理由には十分だ。


(でも、この破片たちどうするんだろう)


「是、対象の破片は、系列神化の贄として吸収します」


僕の心を読んだ世界剣(ディーヴァ)は、淡々とした口調で返してくる。これは確か、マキの元々の異形質(イギョウシツ)だったはず。


(元来の能力も行使できるのか……便利な剣……)


今更驚くことはないが、考えが及ばないのは依然として変わらない。もう、僕も考えるのをやめてしまおうと思ったほどだ。


「告。状態維持の限界が近いと予測。直ちに吸収を行います」


そう言うと、下ろしていた手を、粉々になった破片へと向ける。向けた直後、バラバラに散らばっていた約八十万分の破片は、全てその手へと吸い込まれて行った。


原理は不明だ。というか、あの行為に原理なんてあるのだろうか。とりあえず、完全不明で完結させておこう。


(ダメだ……考えてたら、こっちの頭がやられる)


結局、考えるのはやめた。






「……全死体破片の吸収に成功しました。続けて、任務完了(コンプリート)を確認いたしました。直ちに、全能託生状態(フルオートモード)の解除に取り掛かります」


(あ、やっと終わった……)


その場で呆然と見ていること約五分。転がっていた全異形獣(イギョウジュウ)の破片は綺麗に回収された。


(……疲れた)


見疲れというのもあるが、いろんな意味で疲れた。もう、驚くのは勘弁だ。


胸に手を当てた世界剣は、ゆっくりと目を閉じた。解除にも、何かしら時間を要するのだろうか。やはり、エネットの剣とは少し機能に差があるのだろう。


しかし、解除にそこまで時間はかからなかった。むしろ、吸収の時間と比べれば早すぎるくらいだ。


「ふぅ……ンンン?戻って……きたんスかね?」


「……おかえり。体、大丈夫?」


「あぁ歌絲さん、見てましたよ。世界剣、やっぱり強いッスね。私も想像以上でしたよ」


「はは……ほんとにその通りだよ……」


表面では苦笑を浮かべているが、心の中では泣きそうなくらい驚いている。


僕からすれば、想像以上、なんてヤワな言葉で表せない程の衝撃だった。しかし、マキからすれば、そうでも無いようだ。基礎的な感覚から、差があるのだろう。


(僕が居ない三ヶ月……何があったんだろうか……)


その中身が相当気になる。こんな事になるなら、もう少し力を蓄えてから王宮入りすればよかったな、と後悔した。


「それより歌絲さん。そろそろ結界が修復されるッス。急がないと……」


「あぁ分かった。先に行っててくれ。マストルを起こしてくるから」


「分かったッス」


置いていく訳にも行かないので、面倒くさいが起こさなければならない。しかし、ああなったマストルを引き戻すのは大変だ。


「マストル、早く行くよ。置いてくよ?」


「………」


(……ウザイ……)


はにわにも似たそのアホズラは、見ていてイライラする。一体、どれだけの情報量を頭に入れていたら、こんな状態に陥れるのか不思議になってくる。


「しょうがない……持っていくか」


これ以上は、精神的に耐えられないので、直に持っていくことにした。体重は僕より重いが、異形質(イギョウシツ)を使えば問題はない。


(こんな奴に使うのも癪だけど……一応友達だしね)


我ながら残酷なことを言うものだ、と自嘲したが、助けてるんだからいいだろう。


「歌絲さん!歌絲さん!大丈夫ッスか!?」


「ん?マキか?」


「そうッス!今、感性会話(ディレクト)繋いだんスけど、マストルさんは大丈夫ッスか?」


「あぁ……まぁ問題はないよ」


「なら良かったッス。それより、結界の修復が思ったより早いッス!全力で来ないと間に合わないッスよ!」


なんて事だろうか。ここで間に合わなかったら、ここで一生を過ごすことになる。


つまり、バットエンド確定だ。


「分かった。マキはもう脱出したんだよね?」


「はい。結界のすぐ側にいますから、異形獣(イギョウジュウ)の事は気にしないでいいッスよ」


「ありがとう。もう切ってくれて構わないよ」


「分かったッス……絶対、無事に帰って来てくださいよ」


そこで、マキの声は途切れた。わざわざ感性会話(ディレクト)を使ってきたということは、本当の非常事態だということだ。


(現在位置から、マキの通った気配を探って……距離は大体300km……四分くらいか?)


道は聞いていないが、存在感を辿ればわかる。マキの存在感は特に濃いので、走りながらでも感知は余裕だろう。


異形質(イギョウシツ)は微妙に回復していないが、300km走る程度なら何とかならなくもない。


(マストルの体重分も数えて、出力は中々……よし)


発動の意を示す。黒い紋章は、いつも通り僕の足を包み込む。もう慣れた光景だ。


(よーい……どんっ!)

読んでいただき、ありがとうございます。

作品が面白いと感じたら、ブックマーク登録、☆を5押していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ