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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第二章【ヘヴン編】
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六十七話【全能託生状態】

機械音がそう告げると、手元にあった白光する結晶玉が、マキへと吸収されていく。


吸収するまでに、そこまでに時間はかからなかった。しかし、その姿を目視していると、体が怖ばって動かなかった。


いや、怖ばっていたと言うより、美しすぎて見蕩れていたの方が正しいのだろう。


「……告。全能託生状態(フルオートモード)への適合に成功。直ちに目的を遂行します」


振り返ったマキの瞳は、以前の少し薄い紅色から、光沢を失った真紅へと染まっていた。

その人間味のない素振りは、先程聞こえた世界剣(ディーヴァ)の声から感じたものに似ていた。


「え、えっと……世界剣(ディーヴァ)さんで合ってますか?」


行動が一段落着いたところで、一度声を掛けてみた。マキの自我は残っているのか、人格まで全て変わっているのかなど、色々と疑問が芽生えたからだ。


「……解、世界剣に名称表現は存在しません。主から命を優先します」


「あ、はい。なんか……すいません」


世界剣は、無愛想に返答すると、すぐに異形獣(イギョウジュウ)の元へと体を向けた。


「……分析完了。対象個体の生命反応を感知。個体数は、約八十万と推定」


「は、八十万……!」


サラッと言ったが、そういうのは、知っていても口にすることでない。


(それをあんな軽々と……本当に倒せるのか?)


今の発言により、世界剣(ディーヴァ)への疑問は余計に深まることになった。しかし、それを発言するということは、倒せるアテがあるのだろう。


「マストル……ここが見所だよ。身構えていた方がいいかも」


「お、おう、そうだな」


固唾をのみ、その様子をじっくりと伺う。一瞬たりとも、見逃すことは許されない。


「実行要請……承認されました。これより、殲滅を開始します──」


機械音が、再び脳裏を通り越したその時、マキの影が、少し動いたように見えた。


バキッ……バギバギバギバギバギ


それともに、前方、並びに他全方向から、何かが崩れるような音が聞こえた。


その異質とも言える音に、少しだけ悪寒がした。助かったことは事実だが、それ以上に、目の前にある事実に、理解が及ばなかった。


「……嘘だ。だって、さっきは八十万だって……」


目の前に広がっていた異形獣(イギョウジュウ)どもの姿は、原型と留めず、辺りに散乱していた。


その最前線に立っていたはずの200m級を誇る玄武型(ケレース)すら、見る影もなく、無惨に散らされていた。


「……何か、悪い夢を見てるのかな?」


そう思うほど、八十万を超える大群の最後は、呆気ないものだった。


刹那?そんな言葉では表せない。見える見えない以前に、何かをしたのかすら、全く分からない。

こちら側の視点からすれば、いつの間にか異形獣(イギョウジュウ)どもが、木っ端微塵になっていた、と言った感じなのだ。


速度とか、そう言った問題ではないのだ。


今までにも、自ら以外の存在に対して、速い、と思える場面は幾つか存在した。しかし、認識の領域にすら辿り着けなかった事は、エネットが世界剣(グラン)を使った時くらいだ。


そう大層あっていい事ではないはず。


(でも……確かにあの時と同じだ。あの剣から感じたものは……)


世界剣がどういうものなのか、僕はまだ理解できない。しかし、マキが言っていた「無敵の剣」の表現の意味は、少しだけ分かった気がする。

読んでいただき、ありがとうございます。

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