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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第二章【ヘヴン編】
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六十六話【新たな世界剣】

「”世界剣(ディーヴァ)”ッス」


「……え?」


「え?だから、”世界剣(ディーヴァ)”ッスよ。お師匠様から託された、あの剣の事ッス」


 託されたとは何の事だ?そもそも、ディーヴァとは何のことだ?マキの言い方からすれば、僕もその姿を目の当たりにしたような感じになるが。


「……ごめん。言ってる意味が分からないな」


「分かるッスよ。歌絲さんもあの場でしっかり見てましたし」


 そう言うと、マキは腰に当てていた手を目の前に差し出した。

 すると、突然、白く輝く球体が出現した。


「これ、何か分かりますよね?」


「……ナニコレ?」


 差し出された何かについて聞かれたが、全く分からない。マキは、知ってて当然でしょ?みたいな顔をしているが、それでも分からない。


「こんな時にすっとぼけてる場合じゃないッスよ。私は歌絲さんの目の前で、これを受け取ったんスから。マストルさんも見てましたよね?」


「そうであります!」


「ほら」


「ほら、じゃないよ」


 予想通りだが、予想外だ。マストルまで変なことを言っている。記憶がないだけなのか、全く身に覚えがない。


 世界剣ということは、おそらく超最近のことなのだろう。しかし、いくら記憶を辿っても、その場面が頭に浮かばない。


(……本当にいつの話だ?)


 腕を組み、目を瞑って黙り込む。瞑想や考え事をしている時、一番落ち着くフォームだ。


 しかし、それをした所で結果は変わらなかった。頭を悩ませていたその時、マキがおそるおそる口を開いた。


「ねぇ……あの、歌絲さん?」


「……ん、何?」


「あっち側の奴ら、もうカンカンなんスけど……」


(……あちゃぁ……)


 マキが指す先に広がる異形獣(イギョウジュウ)の大群は、相当な怒りを抱えていた。見ただけで分かるほどに、明らかな感情だ。


「ほっといたら面倒くさそうッスけど……片付けといていいッスか?」


「……お願いするよ。その世界剣(ディーヴァ)とやらの力もこの目で拝見したいしね」


「了解ッス。でも、扱いが難しいから、少し離れていて欲しいッス」


(……当然といえば当然か)


 エネットの時もそうだったが、あの威力は味方も巻き込みかねない。


 しかも、今その剣を使用しようとしているのは、他でもないマキなのだ。不器用さが目立つ彼女が扱える代物とは思えない。


 しかし、エネットが託したのだ。変なことは起こらないだろう。いや、起こったとしても、このまま異形獣(イギョウジュウ)に踏み殺されるよりかはマシなので、選択肢は一つしかない。


「……じゃ、行くっスよ。頑張って威力は抑えるッス」


「頼んだよ……」


「頑張ってください!姉御!」


 僕たちの声援を聞いたマキは、案外冷静だった。緊張するでもなく、怯えることも無く、ただ冷徹に対象(異形獣)を見ていた。


「そう言えば、今回が初舞台だったッスね……世界剣(ディーヴァ)さん、私に……力を貸してほしいッス!」


 《告、その願いは聞き届けられました》


 あの時と同じ機械音が、頭の中に響き渡る。淡々とした口調を備えたその声からは、生きている感じがしなかった。


(これも謎の一つだな……エネットの世界剣(グラン)と何が違うんだろうか)


 また解き明かしたい謎が一つ増えたところで、マキが再度口を開く。


「目の前にいるアイツらを……一匹残らず殲滅して欲しいッス。ただし、後ろの二人には一切の危害を及ぼさないよう、お願いするッス」


《告、その要求を承諾しました。条件に応じた能力を自動発動しますか?》


 世界剣(ディーヴァ)と話をするマキの姿は、至って普通だった。ただ、一人の人と会話しているような。僕視点からは、少し別人のように見えた。


「……お願いするッス」


 《了、能力発動の許可を確認致しました。全能托生状態(フルオートモード)に移行します》

読んでいただき、ありがとうございます。

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