五十五話【回りくどい】
自分でも何書いてるか分からない。めっちゃ内容共々回りくどいです。申し訳ないです。
「え?おいおい、どうしたんだ……?」
「あぁ……いや、何でもない。気にしないで」
(痛い……感覚が……ある)
頬を叩いた刹那に感じた痛みの衝動。発せられる言葉。生きてる事を直に感じさせる物事の数々。
「生きてる……生きてる……?」
にわかに信じ難い事実だった。嬉しいことだが、何か変な気分だ。
自らの体を隅々まで確認した。先程までは、感覚も全て失われていたのだ。
しかし、今確認すると、その失われていたものが戻ってきていた。
(どういうことだ?何で戻って来てるんだ?)
何度も何度も、念入りに触った。傍から見たら変な人にしか見えないが、今はそんなこと考えている場合ではない。
「お、おぅ……お前そんな趣味があったのか……」
思っている傍から引かれてる。マストルだから無視してもいいが、マキやらメイやらに見られたら恥ずかしいでは済まない。
こうして、数分間ずっと触り続けた結果、自らの生を受け入れた。一通りの確認が終わった。
それを見ていたマストルは、完全に暇そうな態度になっていた。しょうがない事だが、何故かイラつく。
「……終わったよ」
「あ、そう」
「何だよ、折角こうして無事再開できたんだから、そんなに暗くならなくても……」
「数分間、お前がずっと体触ってるシーン見せられて楽しいと思うか?」
「……楽しくないけど」
「……だろ?」
言ってることは最もだが、これくらいは考慮して欲しいところだ。別にこんな感じのやり取りが初めてという訳ではない。
むしろ、王宮の仕事中ではよくある事だ。
「どうでもいいだろ。それより、エネットさんはどうしたんだ?」
ここに僕が居るということは、おそらく、エネットは生きているのだろう。
マストルがここにいるのも、エネットからの指示に違いない。
「……」
「……?どうしたんだよ?いきなり黙り込んで」
僕の問いを聞いたマストルは、何故か黙り込んだ。黙り込む理由も特にないはずだ。
しかし、今考えてみればマキの姿も見えない。エネットと共に行動していると言う考えもできるが、僕たちを置いていくとは考えにくい。
(それに、周りを見るに、まだ森の中だ。結界内ではないと思うが、どうにもおかしい)
僕が色々考えていると、先程まで黙っていたマストルが、おそるおそる口を開いた。
「……なぁ、アルト。言わなきゃ駄目か?」
「……何言ってんだ?」
訳が分からない。言わない理由はないはずだ。むしろ、言わない方が、今の状況的に考えておかしい。
(エネットさんからの指示か?いや、それならマキは置いていくはずだが……)
考えれば考えるほど、頭がおかしくなっていく。これは聞く他ないだろう。
「何でもいいよ。早くあの二人と合流したいから、とりあえず教えてくれ」
「あぁ……分かったよ。だけど……」
「だけど?」
「落ち着いて話を聞けるって約束できるか?」
(……何を言ってるんだ?)
おかしくなったのだろうか。いや、元々おかしい奴ではあるが、更に症状が悪化してる気がする。
確かに、冷静になる事は必要だが、念入りに確認するほどではないはずだ。
(そんなに極秘の事情があるのか……?)
何か不気味な雰囲気が漂っていたが、深刻そうなマストルの顔を見ると、こちらまでおかしくなりそうだ。
(いや、聞かないことには始まらない)
心を決め、認証の意を示した。
「……本気なんだな。分かったよ、一回しか言わないから、よく聞けよ」
そう言うと、マストルは重い口を開き、事実を伝えた。
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