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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第二章【ヘヴン編】
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五十三話【また】

「……なん…で?」


 向かってくるエネットは、懐から出した剣で、僕の体を貫いた。


 剣の貫いた部分は血で染まり、段々と体から意識を奪っていく。


 痛くて堪らない。腹部を抑えても、出血は止まらず、勢いを増して流れていく。


「うぶっ……!」


 吐血した口元を抑え、下を向いていた視線をゆっくりと上に移す。


 目の前に映ったのは、無常に僕を見下すエネットの顔だった。


(エネット……さん?)


 しかし、見た瞬間その違和感に気づいた。目の前に居るこいつは、エネットなんかじゃない。エネットの顔をしているだけの何かだ。


 その隣を見てみれば、マキだと思っていた人も、マキの顔をしただけの偽物だった。


 分かってはいたが、これは現実なんかじゃない。何ものかによって掛けられた幻影のようなもの。


「ちくしょう……!」


 自らの情けなさに歯ぎしりした。もう、この剣を抜くことはできないだろう。このままでは、失血死するか、真っ二つに切られるのがオチだ。


 前の二人は、僕に剣を刺したっきりで動いていない。しかし、依然として剣を握る力は弱まっていない。殺す気ではあるようだが、即時殺すという訳ではないようだ。


 しかし、貫かれた僕の体はほとんど動かない。さらに、刺された部分は脇腹と来たものだ。呼吸をするのすら辛い。


「何で……こんなこと…するんですか!エネットさん!」


 何を問うても、エネットは口一つ開くことは無い。マキも同様だ。


(まず…い。意識が……遠のく……)


 頭の中に浮かんだ”死”の一文字。折角タイムリープして、チャンスを得たと言うのに、こんなところで終わるのか。


 おそらく、タイムリープはこれ以上はない。いや、あるかもしれないが、何故か、ないような気がする。


(はは……ちくしょう……)


 哀れなやつだ。と自嘲した僕は、そっと目を閉じ、一つを願った。


(ねぇ神様。聞いているんだったら、この願いを聞き入れて欲しい)


 視線を上にやる。剣を抑えていた手を止め、何も無い虚無の空へと向ける。


(もし、叶うならば、僕に……チャンスを下さい。何度…死んだって構いません。僕は……やりべき事が……あるんです)


 無理難題なんでことは知っている。神に縋るなんて、無駄なことなんて分かってる。しかし、今はそうでもしなければ、死んでしまいそうな気がした。


「……」


 僕の奇行を見たエネットもどきは、先程まで止まっていた手を動かし、僕の脇腹から剣を抜いた。


(ぐ……なんのつも────)





 *





「二回目……か」

読んでいただき、ありがとうございます。

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