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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第二章【ヘヴン編】
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五十話【エネット】

ついに50話いけました。今からもっと展開増やして行きたいと思ってるので、よろしくお願いいたします。

可変侵食(ヴァリアブルコード)


 エネットは、壊れた片手を結界から離し、マキに向けた。

 瞬間、マキは意識が途切れたようにその場に倒れた。


「歌…絲、マキを助けてちょうだい。この子だけは……マキだけは救わなきゃならないの」


 エネットは、掠れた声で叫ぶ。


「わ、わかりました!でも、エネットさんは……?」


「私は…いいから、三人とも安全な場所に……逃げなさい……!」


 そう叫ぶエネットは、今にも壊れそうだ。


 ここまでやったから、諦められないというのは分かる。しかし、このままでは、本当にエネットが死んでしまう。


「そんなこと出来ません!いくら貴方と言えど、本当に死んでしまいますよ!?」


「……当然でしょ」


「……!?」


 返ってきた言葉に、動揺を隠せなかった。


 まさか、自分の死すら分かっていたとでも言うのだろうか。


「……死ぬ事くらい最初から知ってたわ。少なくとも……この子(マキ)を拾ったあの日から……覚悟くらいはしていたもの」


 瞳など、とうに失ったはずなのに、その姿は未来を見通すように、僕たちを見ていた。


「さぁ……行きな…さい。最後くらい、静かに……終わらせたいの」


「そんなこと言わないでくださいよ!エネットさんは……そんな弱気な人じゃないはずだ!」


 この体から出る、思いっきりで叫んだ。このまま、素直に逃げる訳にはいかない。


「……聞き分けが悪い…わね。行かないと、死ぬわよ……!」


 僕を叱るその目は、感情の籠った本気の眼だった。


「でも……エネットさんがいないと、王宮の話はどうなるんですか!?その為にここまで来たのに!」


「……あぁ、代役の話ね。多分、今のマキ…なら、私の…代わりにくらいは……なるはずよ。だから…心配は…要らな────」


「そうじゃない!」


 なぜ、この人(エネット)は分かってくれないのだろうか。本当は、王宮なんて口実に過ぎない。


 本当は、貴方(エネット)を見殺しにしたくないだけなのだ。なのに、また自分を捨てて、他を救おうとする。


 本当に馬鹿な人だ。


「貴方が……”師匠”が来ないと意味がないんです!」


 僕の叫びを聞いたエネットは、少しびっくりしていた。しかし、以前として手を休めることはしなかった。


「……懐かしい…呼び名ね。もう、貴方の……口から聞くことは…ないと思ってたんだけどね……最後に、聞けてよかったわ」


 ダメだ。話しても埒が明かない。


(こうなったら、全力を使ってでも止めないと……)


 背中に抱えていたマキを、一度地に下ろし、体全体に呼びかける。


 しかし、エネットは僕の考えに、既に気づいていた。


「……二人揃って、ほんとに……馬鹿な…弟子ね……」


 涙を流しながら、エネットは再び壊れた手を僕に向けた。


「最後に……楽しませて…貰ったわ。ありがとう……ね、奏峰(かなみね)……()(いと)


 そこで、僕の意識は途切れた────

読んでいただき、ありがとうございます。

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