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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第二章【ヘヴン編】
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四十九話【死の境地】

 

「あと……ちょっと、力が…足りない……!」


 エネットの体は既に死にかけだった。部分的に肉は爆ぜ、骨が露出している。


 もはや、エネットという体の原型は留められていなかった。


「お師匠様ぁ!お願いです!死んじゃ嫌ッス!」


「ダメだ!近づいたら死ぬぞ!」


「だって……お師匠様……あんな苦しそうな姿で……頑張ってるんスよ?」


 マキの声は、今にも消滅しそうな音をしていた。声は枯れ、瞳の下には擦った痕が見える。


 だが、ここでマキを行かせてしまえば、エネットに支障が出るかもしれない。それ以前に、マキが死ぬかもしれない。


 それだけは、絶対に避けなければならなかった。


「……今からなら間に合うッス。お師匠様、絶対助けるッスからね……!」


「……馬鹿!やめろマキ!」


 感情に駆られたマキは、エネットを助けようと無鉄砲に走り出した。


 当然押さえつけたが、力が強すぎて止まる気配がない。このまま行けば、僕の手が離れるのも時間の問題だ。


「アルト!どうすればいいんだよ!?」


「僕が知るわけないじゃないか!それより、マキを止めてくれ!僕だけじゃ…限界なんだ!」


 慌てふためくマストルに怒鳴りつけ、マキを二人で止める。しかし、僕たちに止められたマキは、さらに力を増し、前進していく。


「んがァァ……強すぎだろ!全然止まんねぇ!」


「耐えるんだ……マストル!ここでマキを行かせたら、それこそ無駄死だ!」


 理性の欠片すら失ってしまったマキの力は更に上昇する。先程の結晶玉が破壊されたことで、マキの制限が開放されたのだ。


 僕もマストルも、異形質(イギョウシツ)全開で止めているが、全く歯が立たない。


(やばい……手、離れる……!)


 滲み出てくる汗が、僕の手を滑らせる。僕もマストルも、同様に限界が近い。


(くそぉぉ……!)


 そう思った瞬間、地面がとてつもない勢いで揺れた。それによってバランスを崩したマストルは、誤って手を離してしまった。


「まずいっ……」


 それと同時に、僕の手もマキの胴から離れた。


 僕たちの手から放たれたマキは、その勢いに乗り、エネット目掛けて走っていく。


「お師匠様ぁぁぁあぁあ!」


「ダメだ!マキ!」


 死なせちゃいけない。


 僕が守らなくちゃいけないのに。


 もう、誰も死なせる訳にはいかないのに。


「今助けるッス!」


「……マキ」


 向かってくるマキに気づいたエネットは、ゆっくりと振り返った。肉は剥がれ、眼球も片方は失っている。酷く荒んだ顔は、見るに堪えないものだった。



「……これだから貴方を守るのは大変なのよ」


 ゆっくりと口を開いたエネットは、そう言い、少し笑った。

読んでいただき、ありがとうございます。

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