表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第二章【ヘヴン編】
48/115

四十七話【一件落着】

「やっぱり強いわねぇ。健在で良かった。じゃ、次は”アレ”をよろしく」


 エネットは誰かと話している。視線が剣に向いていることから、おそらくその”世界剣(グラン)”とだろう。


「ふぅ、準備完了ね。次の一振で終わらせますか。世界剣(グラン)さん、斬撃形態いける?」


 エネットが問いかけるように言うと、結晶玉が分解され、刀身を形作っていく。


 既にあった型にはまっていくように作られた刀身は、ベージュに染まり、オーラを放っている。


「斬撃形態は久しぶりね。行くわよ世界剣(グラン)さん。規模は、目の前にいる異形獣(イギョウジュウ)を全体破壊するほどで、後ろにいる子たちを巻き込まないようにね」


 返答が来たのか、エネットは笑って剣を上に向ける。


「よいっ……しょ!」


 両手で掴んだ剣を、叫びながら振り下ろす。


 その刹那、目の前にいた異形獣(イギョウジュウ)どもは砕け散り、跡形もなく消えた。


 見た瞬間、全く理解できない事象が起こったのだ。


 実際に剣で切った訳では無い。振ったら壊れたのだ。それも、原理も理屈でも説明できないような、理不尽なほどに理解不能の適当な一振で。


 マキは見慣れたような顔でそれを見ていたが、僕とマストルは驚きのあまり、何も言うことができなかった。


「次は復活だったかしらね?それはもう達成してるから大丈夫よ」


 言われるままに前を向くと、目の前の異形獣(イギョウジュウ)たちが一瞬のうちに復活していた。


 復活の瞬間は見えなかった。いつの間にか、そこに居たのだ。傷一つついていない。元の状態の異形獣(イギョウジュウ)どもが、そこには立っている。


 まるで、最初から何もなかったかのような。


「……OK!依頼解決ね。マストルくん……だっけ?しっかり見てた?」


「……あ、あぁ、大丈夫です。はい……」


(あ、演技戻った)


 目の前で起こった事実が受け入れられないのか、上手く喋れていない。しかし、これだけの事を目の前にすれば、当然の反応だ。


 エネットは満足したように笑うと、指を鳴らす。すると、世界剣(グラン)の刀身が消え、持ち手が結晶玉へと戻って行った。


「それなら良かったわ。依頼解決した事だし、戻りましょうか。早くしないと、結界が復活してしまうわ」


「そうッスね。お二人さん、早く行くッスよ」


「GAAAAAAAA!!!」


「……うっさいわね。調子に乗らない事よ?」


 エネットが振り返った瞬間、千にも達する異形の群れは、その刹那にてこの世から姿を消した。


 その姿を探したが、肉片の一つすら残っていなかった。気配も、その存在すらも、再び感じ取ることができない。


(振り返っただけであれか……さすがエネットさん……)


 これが、エネット本来の純粋な本性。相手が誰であれ、邪魔なら殺すことを厭わない残虐な性格だ。


 時と場合を考えているため、王宮時代では封印していたらしいが、放浪時代はこの力を思いのままに振るっていたようだ。


「全く、面倒な輩ね。あと歌絲、そんなにビビらないで頂戴。そっちの子は分かるけど、貴方は二年間見てきたじゃない」


「二年間程度では慣れませんよ……」


「全く、その通りッスよ。お師匠様の力には、私ですら慣れてませんからね」


「いや、そんな大した力じゃないわよ。少なくとも、あの人に比べたら……」


「あの人?」


「いえ、何でもないわ。聞かなかったことにして」


 その場では考えなかったが、エネットを超える存在とはどんな人物なのだろうか。少なくとも、今の僕には理解できない。




 *




「ははは……エネットってば、私が譲渡した力をこんな所で使っちゃうなんて……世界剣(グラン)の無駄遣いよ。でも、あの子にその力を見せたってとこだけは、評価点ね」



 木の上から、四人組を見下ろす影が一つあった。


 その影の視線は、歌絲に向けられている。


「他の三人には迷惑だけど、もう少し、彼を見ていたいんだ。てな訳で、結界は修復させてもらったよ。基、私が創ったものだから、直しても問題ないんだけど」


 不敵に笑う影は、その身を空に消した。

読んでいただき、ありがとうございます。

作品が面白いと感じたら、ブックマーク登録、☆を5押していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ