四十六話【世界剣】
少し遅れました。すいません
不敵な笑みを浮かべるエネットは、堂々とその姿を晒している。防御も構えもとらず、無防備そのもので突っ立っている。
「オオオオオオオオ!!!」
辺りから聞こえる無数の怒号が、絶望を感じさせる。
しかし何故だろうか、エネットがいるだけで安心できる。
「うるさい獣どもね。そういうのいいから、早く攻撃してきなさいよ」
しかし、異形獣どもは攻撃してこない。エネットを危惧しての事だろうか、危機本能でも働いたのか。
呆れ顔のエネットは、頭をかき、剣を見た。
《了、攻撃を強制させます》
「え?」
何処からか声が聞こえる。頭の中に響くように、全てに通るように入り込んで来た。
「今のは一体……」
「始まったッスよ、歌絲さん。お望みの光景ッスよ」
目の前を再び見てみると、先程まで動こうとすらしていなかった異形獣どもが、ヨダレを垂らして凶暴化している。
「ナイスよ、世界剣。でも、ここからが力の見せ所なんだから」
《告、反未来を展開》
まただ。機械音とも違う無機物のような声は、再び頭に入り込んでくる。
「お師匠様、この声止められないんですか?」
「無理だって言ってるじゃない。そういうのは、世界剣に言いなさいよ」
《解、可能です》
再び響いた声と共に、頭に響いていた声がさっぱりと消えた。
(消えた?もしかして、あの剣が……∣)
「GAAAAAAAAAAAAA!!!」
考えている内に、異形獣どもは次々と押し寄せてくる。
「エネットさん!危ない!!」
パァンッ
異形獣の拳がエネットに届く寸前、異形獣の体が弾け飛んだ。
「!?」
「不思議ッスよね、歌絲さん。これが、お師匠様の最強の力。”世界剣”なんスよ」
その光景を目の当たりにしても、顔色ひとつ変えないマキは、至って冷静だ。
一方のマストルは、空いた口が塞がらないようで、唖然としていた。
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