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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第二章【ヘヴン編】
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四十四話【最深部】

 エネットが拳を握った刹那、僕たちの体は森の最深部へと転移した。


 最深部には、無限に続く結界が貼ってある。上にも横にも、果てなく続く結界は、異形獣(イギョウジュウ)たちの進行を防ぐために、古代のある人間が貼ったとされている。


「結界を一時的に無力化させるから、少し離れてなさい」


「待てよ、無力化するところを見せてみろ。何か卑怯な手を使うわけじゃないだろうな?」


「……別にいいけど、記憶消し飛ぶから意味ないと思うわよ」


「……記憶が消し飛ぶ?」


 首を傾げるマストルに対し、エネットはそれ以上は何も言わなかった。


 しかし、この事情だけは、僕もよく分からない。マキも知らないというのだから、これ以上言及しても無駄だろう。


「と言っても、私が無力化できる時間は数分に過ぎないから気をつける事ね。もし、時間内に出ることが出来なかったら、一日中ここに閉じ込められることになるから。そうしたら、多分私とマキ以外は生き延びられないわよ」


 深々と注意喚起したエネットは、結界に近づき、手を前にかざした。

 目を瞑り、しばらくその場で解析を続けている。


 30秒ほどすると、目の前の結界の一部にヒビが入り、破壊されていくのが見えた。


「……はい、出来たわよ。タイムリミットは大体6分。その間に終わらせるわよ」


 開いた結界は、徐々に修復を進めている。6分とは思えない修復速度だ。


「エネットさん、これほんとに6分なんですか?」


万物遅延(ローロード)を使ってるからある程度は大丈夫でしょうけど、6分きっちりは難しいかもね」


「なら尚更急がないと……」


「いざとなったら、何とかするわよ。これ以上、過ちをおかす訳には行かないから」


 不服な表情だ。エネットなら、いくらでも手段はあるだろう。


 しかし、それを躊躇っている気がした。


(……何があったんだ?)


「何を話しているんだ?さっさと済ませるなら済ませろよ」


「ハイハイ、分かってますよ。」


 厳しい口調で言うマストルを、適当に受け流すエネット。もう見慣れたやり取りだ。


「お師匠様、お出ましみたいですよ」


 前方に立っていたマキからのお呼び出しだ。どうやら、今回のターゲットが現れたようだ。


「へぇ、まだ少ししか歩いてないのに、ここまでの大きさがいるなんて思ってなかったわ。ざっと90mってとこかしら?」


 目の前にそびえ立つ大樹かと思っていたものは、大型(グレイト)異形獣(イギョウジュウ)の足だった。


(懐かしいな、昔もこんな事あったっけ)


 90m級の異形獣(イギョウジュウ)に会うのは、三年前の月修行(つきしゅぎょう)以来だ。あの時は、ほとんど意識がなかったけど、倒した感覚だけは鮮明に覚えている。


「じゃ、早速始めましょうか。ちゃんと見てなさいよ」


 マストルに対し指を指したエネットは、羽織っていたマントをマキに預け、結晶玉に手をかざした。

読んでいただき、ありがとうございます。

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