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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第二章【ヘヴン編】
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四十三話【余裕】

更新遅れました。申し訳ございません。

 マストルの態度はいつもの楽観的なものとは、かけ離れていた。


「結局、何が欲しいの?私とアルトの情報以外、提供できるものはないわよ?」


「なら、その情報でいいです。俺に分かるように説明して下さい」


 口調は荒くなっているものの、微妙に残る丁寧さは、昔を捨てらていない証拠だ。無理をしている。


「私は二年前に、この南雀(なんじゃく)の森で歌絲(かいと)を拾ったのよ。そこから色々と教えてやって、メイのコネを使って王宮入りさせたって訳。大まかだけど理解出来た?」


「信用するにはまだ弱い……もっと違うものは?」


「そんなもんないわよ。あとは使える力くらいなら話してもいいわよ」


 疑ってしまうのは分かるが、エネットは基本隠し事はしない。言及しても無駄だ。


「……であれば、貴方の実力を見せて下さい。今回の件は、生半可な力を持つものでは解決できないものだ」


 マストルが発する言葉一つ一つに危なっかしさを感じる。どれもエネットをキレらせかねないものばかりだ。


 今でこそエネットも冷静だが、いつ沸点を越えるか分からない。


「いいわよ。具体的に何をすればいいの?」


「……外に転がってる異形獣(イギョウジュウ)一体を討伐し、それを生き返らせて見せて下さい」


 今回の旅の趣旨を知っているなら、もっと違う要求をするのかと思っていた。しかし、マストルの基準は強いことが全てなのだろう。


 しかし、この課題はエネットに対しては楽すぎる。当然、エネットは笑ってその要求を尺諾した。


「いいわ、その要求を受けてあげる。でも、どうせ殺るなら、一体と言わず百体同時にでも殺ってやるわよ」


「……!?」


 あまりにもありすぎるやる気に、マストルは混乱していた。こちら当然といえば、当然だろう。


「善は急げ、めんどくさい事はササッと終わらせるわよ」


 余裕の笑みを浮かべるエネットは、意気揚々と外へ出ていった。


 怪しがっているマストルを見たメイは、そっとその傍で呟く。


「エネットは、当時の王宮最強の魔道王と呼ばれていた天才よ。異形獣(イギョウジュウ)百体程度、あっさり潰せる程……ね」


 その言葉を聞いたマストルは動揺していた。自分が言ってしまったことの過ちにようやく気がついたようだ。


「……今更気づいても遅いッスよ。私も足元にも及ばないほどッス。百体程度、一秒も必要ないッスよ」


 その言葉を聞いて悔しそうな顔をするマストル。しかし、エネットにあれほど言わせたのだ、これで済んでいる方が凄いというものだ。


「さて、ここら辺でいいかしら?」


 少し広い場所に出たエネットは、僕たちを集めた。


「ここら辺の異形獣(イギョウジュウ)は大体倒しちゃったから、空間転移(トランス)使って、もっと強い奴らがいる場所へ向かうわよ。この森の最深部に行けば、30m級がウヨウヨいるから、今回はそれで勘弁してくれる?」


「……倒せるのであれば、構いませんよ」


 得意げなエネットと爆発寸前のマストルは、お互いに火花を散らしている。どちらも引かぬと言った状態では、実力行使は必然となるのだろう。


「交渉成立。それと、メイはここに残っててくれない?こんな時間だから、女王様の護衛が必要だし、何より私は責任負いたくないからね」


「分かってるわよ」


 メイはそう言捨てると、家の中に戻って行った。


「さて、準備も整ったことですし行きますか。一瞬とはいえ空間転移(トランス)だから、意識持ってかれないように気をつけなさいよ」 


 エネットはそう言うと、ゆっくりと手を握った。

読んでいただき、ありがとうございます。

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