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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第二章【ヘヴン編】
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四十二話【信用】

「一旦そこに座ってて欲しいッス。お師匠様は今から呼んできますから、慌てる必要はないッスよ」


 そう言うと、マキは部屋の奥に姿を消した。そこそこ大きいエネット宅は、客間室以外はほとんど倉庫か実験室で埋め尽くされている。


 探求意欲の塊のようなエネットからすれば、当然なのだろう。


 五分ほどその場で待っていると、生き生きとした態度のエネットが客間室に姿を見せた。


「ようよう、お二人さんはお久しぶりね。寝室を借りてるのが、現女王の美音で、そっちの子がマストルだったかしら?」


 実験で嬉しいことでもあったのだろうか。いつもに増して気分の良さそうなエネットの声は弾んでいた。


「今日の要件は凡そ観たから、説明は大丈夫よ。アルトの主人さんだっけ?」


「エネット、もうアルトの名は使わなくていいわ。と言うより、使わないで」


 エネットの言葉を遮るように、メイが注意する。アルトの名は、今のマストルの気に触る、それを考慮してのことだろう。


「え?あぁ、はいはい、分かったわ。察しろってことね」


「エネットさん、その言葉余計ですよ……」


「細かいことはいいのよ……まぁ、それはそれとして、本題に入りましょうか」


 エネットが話を始めようとしたその時、マストルが、その言葉にストップをかけた。


「少し待て。聞きたいんだが、お前は本当に信用できる人間なのか?」


 それを聞いた瞬間、背筋が凍った。エネットの話を遮るのはまだ良いが、信頼性を否定するのは禁忌に触れたようなものだ。


 何故なら、彼女(エネット)が最も嫌悪することは、他人から信用されない事だ。


「……失礼なこと言うわね。当然でしょ」


 しかし、エネットも冷静だ。


「なら証拠を見せなよ。こんな森の奥に住んでる王宮反逆者(レヴェル)なんて、誰が信じら───」


「いい加減黙るッスよ。少し調子に乗りすぎてるんじゃないんスか?」


 マストルの台詞を断ち切るように現れたマキは、手に持っている包丁をマストルの首筋に当てている。師匠を侮辱されたことが許せないのだろう。


「こればかりはカバーしきれないわ。マストル、何故今になって口を出したの?」


 マキの行動と共に、メイもマストルを問い詰める。


「貴方はあくまで”付き人”に過ぎないわ。本来なら、この場にいることすら許されない存在なのよ」


 険悪になっていくマストルの表情は、エネットに対して向かっている。上目遣いでエネットを睨みつけているその眼からは、悪寒すら感じる。


「……俺は、ずっと何も知らないままここまで来たんですよ。今回の事に限らず、アルトのことだってそうだ……!」


 マストルの台詞を、僕は黙って聞いているしかできなかった。その言葉から感じることは無い。ただただ無情に、そこに座っていることしかできない。


「……で、貴方の望みは何なの?私を知りたいという事で受け取っていい?」


 深い沈黙から、エネットは冷静に要求に応じる姿勢を見せた。しかし、マストルは納得していない様子だった。


「それだけでは足りない。俺は、まだまだ知らなくちゃいけないことがあるんです」


(マストル……?)


 その言葉には、少し既知感があった。

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