四十一話【無事到着】
歩き始めてから、三時間が経過した。
僕たちは、相変わらず無言で森を進んでいる。黙々とした気まずい雰囲気には息が詰まる。
美音は変わらず僕の背にもたれかかっている。三時間もこの状態だと、さすがに疲れが溜まってきていた。
「歌絲、気をつけなさい。また大型が転がってるわ」
「了解です」
そう、先程からよく見かけるが、歩けば歩くほど、異形獣がおぞましい姿で横たわっているのが見える。
虫ほどの小型から、全長20mもある大型も数体見かけた。おそらくだが、全てマキの仕業だろう。
(昔から怪物だとは思ってたけど、ここまで成長してたとは……)
予想外と言っても程がある。しかも、制御装置ありであれなのだから。
(マキの異形質は分かってるけど、あの身体能力って最早異形質の類と同じなんじゃ……)
「着いたわよ。貴方からすれば、三ヶ月ぶりといったところかしら」
メイの声に、ふと視線をあげた。東西南北の森の中でも有数の森林率を誇る南雀の森に、ひときは大きな更地が広がっている。
「やっと着いたか……それにしても広いな」
元王宮魔道王、エネット=ロウトネスの本拠地だ。
「あっ、歌絲さーん!昨日ぶりッス!」
家の前で手を振っているのは、噂の人物であるマキだ。服に染み込んでいる紫や緑のシミを見れば、戦ってきたばかりであることが伺える。
「マキ、また無茶をしたでしょう?そこら辺に異形獣が転がってたし……一体何時間戦ってたわけ?」
「はっはっは!メイさんの心配には及ばないッスよ。ほんの小一時間だけッスよ」
「一時間”も”よ。少しは自分の体を労りなさい」
メイの言う通りだ。いくら強いとは言え、マキは自分のことを知らなさすぎる。
「まぁまぁ、それはそれとして、長旅でさぞかしお疲れなんじゃないんスか?話の続きは家の中でッスよ」
マキは、話を逸らすように急かす。逸らし方が下手なのも、昔から変わっていない。
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