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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第一章【王宮編】
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二十四話【捜索】

 

 大廊下をひたすらに走り抜け、ある場所へと向かう。王宮は普通に行けば、王室から一階に辿り着くまで少々時間を要する。しかし、僕が前世で見つけた道を使えば、一気に一階へ行くことができる。


 思った通りだ。前世と構造は変わっていなかった。


 城内のあらゆる箇所に伝っている通気口。子供一人分くらいの幅しかないが、僕の体ならギリギリで通れる。


 少々手荒になったが、通気口から一階へと一気に移動することに成功した。しかし、これは移動過程に過ぎないので、ここで喜んでいる暇はない。


 やつが活動している場所は前世でしか分かっていないが、これも変わらないならと考え、その場所に向かった。


 一階から城の頂上まで連なる螺旋階段は、上だけではなく下に繋がる道もある。地下だ。

 地下は軍の拠点として使われており、重要任務などを取り扱う将軍たちの住処でもあった。


 僕が探している人物は、我国の第六将軍にして、野心家として名を馳せている男。


 ノトス=ロズ=ヴァルト


 先程から姿が見えなかったので、不審に思っていた。彼があの場にいなかったことが、この先にある戦争と関係しているのなら、僕がそれを確かめなければならない。


 もし関係していたとしたら……そう考えると不思議と怒りが込み上げてくる。僕の中の”何か”が暴れている。


 ”あいつを殺せ”って


 制御できている力はこの時のためにある。いざと言う時は、使わざるを得なくなるかもしれない。そう思い、ヘヴンの王室にあった剣を拝借してきている。


 さて、意気込み十分で地下へ駆け下りてきたが、重要なことに気がついた。


 道が分からない。


 場所が分かっているだけで、そこまでの道が分からない。地下の構造はとても複雑で、とても暗記できるものでは無い。前世の回路は暗記できたが、今生の道は前世と異なっている。

 結局、構造は不明なので運任せに進むしかなかった。


 地下を進んで数十分が経った頃。僕は度々現れる謎の分岐路で立ち止まり、困り果てていた。


「えー、こっちかなぁ……いや、こっちの気もするけど……」


 適当に決めることも出来ず肩を落としたその時、僕の首筋にゆっくりと剣が向けられた。


「手ぇあげな?ここに居るってことは、関係者だろ。死にたくなかったらノトス=ロズ=ヴァルト将軍の元まで案内しな」


 最初はここの兵なのかと思っが、構造を知らない辺り、盗賊の類だろう。

 僕は、ゆっくりと息を吐き、手を上げる───仕草をした。


 その瞬間、腰にあった非常用短剣を取り、その剣を折る勢いで弾き、距離を取った。

 相手の剣を弾き飛ばしたつもりだったが、握力が強いのだろうか、全く動じていなかった。


 視界に入れた男は、黒のローブに身を隠していた。背丈はこちらと大差ないが、本能で実力差と感じた。

 このまま戦闘態勢に入るのだろうと思い、背中に抱えていた剣を構えた。だが、僕の顔を見た男は、突如剣をしまった。そして、僕に安心しろと合図してきたのだ。


「なんの真似だ?いきなり襲ってきて、距離を取られたら降参か?」


 少し挑発気味で攻撃を誘った。しかし、いつまでたっても男は何もしてこない。


 あちらが仕掛けてこないなら、こちらから仕掛けるまでだ。僕は制御した異形質を足に巡らせ、刺突の構えを現す。黒い紋様が僕の足を包み込み、身体能力が飛躍的に上昇する。

 男は驚きと焦りの様子を見せていたが、もう遅い。


「ちょっと待てよ!話聞けって!」


「邪魔するんでしょ?案内役にならないなら要らないよ」


 全力の踏み込みは、石造りの通路にヒビを入れ、体を風よりも速く前進させる。僕の刺突は石の柱すら軽く砕く。加えて、この速度なら即死は逃れられない。


「終わりだよ!」


 そう叫び、男の胸目掛けて剣の先端を向ける。

 だが、その刹那、男は呆れの表情とともに頭をかき、僕の剣を人差し指の先で止めた。


「………え?」


 驚きすぎて、体の力が一気に抜けてしまった。前世では戦闘面に脆かったので、わざわざバルディナスに訓練までつけてもらって、やっと会得した渾身の突きだった。それが軽々と受け止められたのだ。驚きのあまり剣を落とし、そこに崩れ落ちてしまった。


 男は思考停止した僕の肩を軽く叩き、口を開いた。


「あ〜あ、だから言ったのに。相変わらず無鉄砲だな、アルト」


 先程は気にしていなかったから気づかなかったが、聞き覚えのある声だった。


「その声は……」


「はは、やっと気づいたか?マストルだよ」


 男はローブのフードを捲り、顔を見せた。その顔は、間違えなくマストルだった。いきなりの事態に、語彙力が一時的に虚無の彼方へと消えた。


「え、え?はい?」


 その衝撃は、先程の刺突を止められたことより大きかった。何故マストルがここにいるのだろうか。マストルなら外の調査に行ったはずだ。


「君、本当にマストルなの?」


「当たり前だろ。この姿を見てまだ疑うのか。疑り深いなぁ、全く」


 マストルは笑いながら、僕に手を差し出す。僕はその手を取り、ゆっくりと立ち上がった。そして、目の前にいるマストルを問いただした。

読んでいただき、ありがとうございます。

評価やコメントがモチベに繋がるので、良ければそれらもよろしくお願いいたします。

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