十三話【新たな友】
毎度この小説を見てくださってる方々に謝らないといけないことがございます。私の小説は前から結構改稿しているのですが、十話の最後の部分にある「十級の魔力干渉」→「異形質」に変更致しましたのでご注意ください。設定を考えておらず適当に投稿してしまったこと、深く反省しております。誠に申し訳ございませんでした。
再び王都に戻ってきたのはよいものも、何故か王都の構造が変わっている。前世の時より三年早く来たせいなのだろうか。
それ故、全く道が分からない。そこら辺を探し回っても王宮への入口は見つからない。かと言って誰かに聞こうと思っても、誰に聞けばいいのか分からない。
結局三時間ほど探し回ったが、入口は一向に見つからず、体力も胆力もそこをつきそうだったので、一旦休憩をとっていた。
カバンから後ろ手で水筒を取り出し、口に運ぼうとしたその時だった。背後に置いていたカバンを誰かが持ち去っていくのが見えた。
(……はっ、まずい!あの中には王宮使用人の特別雇用の文書があるのに!!)
一瞬固まったが、すぐに正気を取り戻し、その行方を追った。
犯人は見るに、僕とそれほど歳が離れていない女の子だった。体躯も小さく、かなり痩せている様子だったので体力はないと踏んでいたが、かれこれ10分は走り続けている。
王宮のものたちを待たせる訳にもいかないので少し本気を出すことにした。黒い紋章が足に浮かび上がり加速する。前までは制御どころか使用すら任意でできなかった謎の異形質だが、二年間のイメージトレーニングと実戦を得て、少しだけ力を引き出すことに成功した。
少女との距離差はどんどん減っていき、さらに10分ほど追いかけっこを続け、やっとその肩を掴んだ。
「さぁ、早くカバン返してくれないかな?悪いけど、盗みを働く輩は許せないタチでね」
そう言って少女からカバンを引き離すと、少女は突然ふらつき始め、倒れてしまった。
突然の非常事態に混乱したが、エネットから事前に教わっていた応急処置があったので、とりあえず実行してみることにした。
脈拍も正常、体温も安定してきたのでとりあえず木陰で休み、安静をとる事にした。王宮の同所属の上司を待たせるということは、王宮使用人になるものとしては失格問題だが、どうにかして切り抜けるしかないだろう。
「ん……ここは……?」
「気がついたかい?なんかいきなり倒れちゃってたからつい……ね。なんか、ごめんね?」
おはよう代わりに謝っておいた。ここで下手に挑発してもしょうがないので、話を聞くことを試みた。
「ところで、なんで僕のカバンを盗んだんだい?」
「それは……生きるためよ。それ以外考えたことないわ」
「ということは、今までもこういった盗みを繰り返してきたの?」
「そうよ。だけど、捕まったのはアンタで初めてよ。名残惜しけど悔いはないわ。殺すなり売り飛ばすなり好きにしな」
とんでもない被害妄想だ。そんな物騒な単語を聞いたのは、一年前に行われたエネットの世間話講座以来だ。
「いやそんな事しないよ。とりあえずこれ。食べ物とか探してたんでしょ?あげるよ」
そう言って非常用の乾パンを差し出した。彼女は受け取って直ぐに、慣れない手つきで缶を破壊しようとしていた。開け方を教え、中を見せると、彼女は喋る暇もなくそれを貪り始めた。
一瞬で乾パンを食べ終えた彼女は態度はやけに丸くなっていた。どうやら乾パンで餌付けしてしまったらしい。
「こんなに上手い食べものは久しぶりだ……!ありがとう!恩に着るよ!」
「そりゃどうも。じゃあ、僕は忙しいのでここら辺でお暇させていただくね」
目がダイヤモンド鉱石かの如く光り輝いている彼女に手を振り、僕は再び王宮の入口探しを始めた。
結局何時間歩き続けても、入口が見つかることはなかった。それどころか王宮を囲う塀すら目にしていない。ただひとつ分かることは、あの少女が何故か後をついてきている。
たかが乾パン一缶あげただけなのに懐いた。安すぎる。普通乾パン一缶あげただけで見知らぬ人について行くだろうか。僕なら完全にノーだ。
「あのぉ……えっと。もう盗みとかしないから、えっと……その……」
言いたいことは大体わかる。一緒に連れて行ってくれ、だろう。だが、今の僕は雇用の身なので彼女のことを世話する余裕なんてない。
「いや、ごめんね?僕王宮に行かなきゃならないんだ。だから、一緒に連れて行けない」
少々雑だが、精一杯の断り文句だった。普段こういう経験もないので、どうしていいのか対応に困っていた。
いち早く王宮に行かなけれならないのに……困り果てていると、彼女は思わぬ提案を持ちかけてきた。
「じゃあ、私が王宮へ案内しましょう。この街の地形は把握済なので私なら十分な案内ができます。その代わり、私を貴方の隷属として雇ってください」
想像以上に全く割に合わないほどお得で受け取りにくかった。案内した代償が隷属というのがまず怖い。実質、こちらは何も損していない。
だが、隷属なんて言うのは今後関わりのないことかと思っていたので、動揺を隠せなかった。しかし、このままではいけないと分かっているので、賢明に断ることにした。
「いや、さすがに受け入れられないよ。それじゃ君が損するだけじゃないか」
「いえ、私が貴方に隷属すれば、王宮内での雇用で満足な飯を確保できると思います。多分王宮の召使いか使用人の役職なのでしょう?」
堂々と計画を話されたがそういう問題じゃない。隷属がダメなんだ、と言っても彼女は首を傾げるだけ。結局、僕の方が折れてしまい、彼女の提案と契約を受け入れることにした。
「これで私は生涯、貴方の奴隷です。なんなりとご命令を」
なんだかそれっぽいが、このままだと気が重いので、とりあえず名称を変えることにした。
「奴隷じゃダメだ。僕は君と友達として接したい」
前世でも多くの奴隷見てきたが、いい思い出は全くない。その身分にあるだけで同じ人間として扱われなくなる。
だから、僕は身分が嫌いだ。身分という枷に縛られる人間の愚かさは何時になっても慣れることは無い。そう悟っていた。
「分かりました。では王宮に御案内させていただきますね」
彼女は適当に頷くと、僕の手をとり、王宮へと歩き出した。なんだか心強い仲間ができたようで、少し嬉しい気持ちも感じた。
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