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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第三章【第六十五王都《ノズマリア》編】
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百二話【感情】

 すると、手の先が光だし、同時にヘイヴの体が光に包まれた。


「な、なんじゃこりゃ!?」


「……貴方たちは簡単には殺さないッスよ?」


 淡々と言うマキの声は冷たかった。


「……へっ!何をしたいのか知らないが、遠距離攻撃は俺には効かな───」


 ヘイヴが強気に口を開いた、とも思いきや、今度はいきなり黙り込んでしまった。


「……どうした……ヘイヴ?」


「無駄ッスよ。その人の意識はココ(現実)にはないッス」


  「……何?」


 呆然とするノーディラスを尻目に、マキは続ける。


その人(ヘイヴ)の意識、並びに精神は全部コユウクウカン(固有空間)に送っといたッス。もう、ここに戻ってくることはないッスよ」


「ば、ばかな!ヘイヴに遠距離攻撃が効くわけが……」


「あんな力、適当に与えられたものに過ぎないんスよね?そんなんで私の異形質(イギョウシツ)を防げるなんて思ったんスか?」


 恐ろしい事実を何事も無かったように話すマキは、この世のものとは思えない形相で声を荒らげた。


「……貴方たちは言い過ぎたんスよ。歌絲(かいと)さんがどんな気持ちでここまで来てるのか……どんな事情を抱えてるのかって!」


「……マキ……」


 今までなかったかもしれない。こんな怒るマキを見るのは。


 悲しんだり、笑ったり、喜怒哀楽が激しいのは昔からだ。でも、こんなに感情を表に出したマキは初めてだった。


「それを嘲笑うかのように軽く口にした貴方たちは許さないッス!死んで後悔するがいいッス!!」


 言い終えると、マキは結晶玉に手を差し伸べた。


「……世界剣(ディーヴァ)さん。できる限り周りを傷つけず、アイツを殺せる場所を用意してくださいッス」


 《──解。結界空間(レベルフィールド)、及び条件制限(ルールブック)の発動が認証されました──実行》


 声が響いた瞬間、紫色の結界の様なものが辺りを覆った。


「……何をした……?」


 ノーディラスは恐る恐る問いかける。


「……正常な意識がある貴方は現実で殺すことにしたッス。だから、逃げられないように場所を用意したんスよ」


 全く話についていけない。そもそも場所とはなんの事だ?


 疑問が募り困り果てていると、マキが顔を緩め、口を開いた。


「……実は私もよく分かんないッスね。そういうのは世界剣(ディーヴァ)さんに聞いた方が早いッスよ」


 黙っていたら今度は心を読まれた……一応マキも冷静なようだ。少し怖いけど。


「……まぁ良かろう。ヘイヴが動けなくても、俺ちゃんだけで殺れば済む話……」


「殺れるかどうか……の話からッスけどね」


「ふん、貴女は俺ちゃんの力を知らぬのだ」


「……ふーん」


 力を知らない……。そんな事言われたって当然だろ としか言い返せない。


「この際だから教えちゃる。俺ちゃんの能力は貴女も察しているだろうが、要は嘘を信じ込ませるものや」


 なるほど と頷いた。道理であの男の言うことに謎の信憑性があったのか。


「それはもう分析済ッス」


「……だと思うてるわ。貴女の力は俺ちゃんと対等を張れる……極めて強力なものや」


「貴方と同等とは心外ッス。これでも私は魔導王の後継者ッス」


 それを言っていいのか と思ったが、どうせ口外される事は無いからいいのだろう。


 ノーディラスは少し驚いていたが、すぐにそのにやけ顔を取り戻した。


「……魔導王。確か、この国の元軍師やろ?アレの後継者とは……今日はつくづく恐ろしい面子が揃っておるもんやの」


「……揃っている?なんの事ッスか?」


「貴女に言ってやる義理はない。何より、俺ちゃんもそろそろ帰らないといけない時間でな。決着(ケリ)つけさせて頂くわ」


「……望むとこッス」


 ノーディラスはククク と笑い、胸に手を当て、強く胸部を握り絞めた。


「……そろそろ交代や、”(パレット)”」



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