表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第三章【第六十五王都《ノズマリア》編】
100/115

九十八話【確信】

第百部!いえーい!

 血泥に染まった床や壁。そこに転がる虚ろな目をした男たち。


 そして、その中心に佇む一人の女性。


「……援軍かしら?」


 女性は問いかけてくる。


 口を開くなんてできない。立っているだけで精一杯だ。


「……応答無し。敵って認識でいいかしら?」


 血に染った指を舐め、女性は笑いながらこちらを見た。


 抱えていた美音(みおん)を壁に持たれ掛けさせ、少し前に進む。


「……この短剣……本当に役に立つのかな……?」


 構えている短剣は先程マキから貰ったものだ。しかし、剣として使うにはいささか小さすぎる。


「……信じるしかないか」


 片手に収まってしまう剣を握り、構える。


 女性は不敵な笑みを浮かべ、体を此方へ向けた。


「……貴方、そんな構えで私に受かると思ったの?」


 そう言い終えた直後。僕の右腕がボトッ という音を立て地に落ちる。


「ほらね」


 気づいた時には、女は僕の目の前にたっていた。


 胸ぐらを掴み、空にその体を振り上げる。


「……敵は一匹残らず殺す。貴方もすぐに仲間の元に送ってあげるわ」


「……や……め……ろ!」


「ふふ、そんなに足掻かなくてもいいのよ」


 女は僕の首筋に手をやり、狂気の笑みで言う。


「悶え苦しむ悪夢を見ながら、自然消滅しなさい──」








 *








「──これくらいは頑張って持ってくださいよ」


 隣から聞こえる聞き覚えのある声がする。


「……一応美音(みおん)様背負ってるんだけど」


 自然と口から言葉が出てくる。


「……それならいいんスけど」


 マキは不満げな顔で一息ついた。


 辺りを見渡す。


 ところどころ汚れが着いている床に破壊された壁。まるで先程マキと別れた場所にそっくりだ。


「……ここは何処だ?」


 ふと、疑問が口から飛び出した。


「……一階ッスけど」


 マキが素っ気ない声で返す。


「……一階?」


「はい、一階ッス」


 それは有り得ない。僕はさっき五階に上がる階段を上ったはずだ。


 しかも、よくよく考えてみれば何故ここにいるのかが分からない。


「……ここにいるかが分からない……ッスか?そりゃあマストルさんを探すためッスよ」


 心を読んだマキが答える。


「……マストルを探すため?」


「そうッスよ。さっき螺旋階段の部屋であった事、忘れたんスか?」


 その言い方だと、今は螺旋階段から出た直後である。みたいな感じになる。


 それは結構前の話なのだが……。


「て言うか、なんでマキがここに?左側の通路の捜索は終わったの?」


「……捜索?それは今からやるとこッスよ?」


 今から?


「……え?遅くない?」


「何が遅いんスか?アルトさんだって、まだ何もやってないじゃないスか」


 僕がないもやっていない?そんなバカな。


「そんな訳ないでしょ。捜索はさっきから始めてるし──」


 言いかけたその時、体になにか違和感を感じた。


「……なんだ?この感じ──」


 一度落ち着こうと声を置いた。


 しかし、また次の瞬間、今度はあの時の女性の声が脳裏に過ぎった。


 狂気に濡れた声。感じることの出来ない存在感。抗えない恐怖。全てが見に降かかるように鮮明に頭に入り込んできた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


「……大丈夫ッスか?」


「い、いや、大丈夫。思い出しただけ」


 その声で全て思い出した。


 あの時、僕は死んだんだ。


 胸ぐらを掴みあげられた上、四肢をもぎ取られ、目を潰され、幾多もの武器を体に差し込まれ殺された。


 だが、僕はこうしてここに立っている。


「……二度限りとならず三度目とは……やっと確信が着いたよ」


 ふふ と笑いが込み上げる。


 そうだ。僕は死んだんだ。でも、ここに立っている。つまり──


「……アルトさん?」


 マキが少しおどおどしながら問いかけてくる。


「……何?」


「さっきからテンションおかしいッスよ?いきなり変なこと言い出したら今度は変な声で笑い始めて……」


 変な声で笑い始めて?当然だろう。今は笑いたくなる気持ちを抑えられるわけがない。


「……ごめんね。でも、今は気分がいいんだ」


 一度目と二度目は奇跡かと思って信じていなかった。「きっと奇跡なんだろう」なんて適当な言葉で片付けていた。


 でも、今は確信できる。これは奇跡でも偶然でもなんでもない。


「……これなら納得だな」


 拳を握り、感覚を確認する。正常だ。


 確信した答え。それは───


「……回帰してるんだ。死んだ前に」


読んでいただき、ありがとうございます。

作品が面白いと感じたら、ブックマーク登録、☆を5押していただけると嬉しいです


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ