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さようなら 新たな終幕  作者: 天天ちゃそ
第一章【王宮編】
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九話【久しぶりの再会】

「そんな……」


 遠方から見た王都は、紅く染まっていた。それを覆う炎は段々と大きくなり、誰も制御できない状態になっていた。


 僕は、その光景を目の当たりにして尚、美音(みおん)のことを考えひたすらに王宮を目指していた。城が燃えようが、都がなくなろうがどうでもよかった。


 王宮前の門に着いた僕は馬を乗り捨て、王宮の中にある王の間に向かった。見たところ、火災の進行具合は凄まじく、避難できる状況ではないのを察していたので、恐らく避難はしていないと考えた。


 こういう時に、美音(みおん)を救ってくれるものはいない。女王の権力と威厳を借る貴族どもは真っ先に自分の身を案じて逃げるだろう。


 その予想は的中していた。美音(みおん)は、王座座り一人震えていた。


「怖いよぉ……。誰か助けてよぉ………」


 美音(みおん)は、悲痛な声でそう呟いていた。その声は、昔、夢で見た少女の声と一致していた。まさかそんなことは……と思いながら、美音(みおん)の元に駆け寄ろうとした────


 その瞬間、背中に痛みが走った。下腹部を見ると、僕の胴を一筋の剣が貫通しているのが見えた。


「やっと、殺ってやったぞ……!灯真(とうま)の仇!!」


 後ろにたっていた男は見覚えがなかった。

 なのに、何故か以前あったことがあるような気がした。


 男は言い終えると、僕の体から剣を抜き、先程僕に向けていた剣を美音(みおん)に向けた。僕はかろうじて意識を保っていたが、ほとんど死にかけだった。


「大人しくしてください女王様。貴方は自らの国に裏切られたんですよ」


 男は向けた剣を美音(みおん)の胸部に近づけながらそう続ける。美音(みおん)は驚きを隠せない様子で震えていた。


 先程の精鋭兵が言っていたことは本当だった。その絶望は、虚しくも死にかけの僕を、さらなる地獄へと誘った。


 ここまで情報を得ていたにも関わらず、この謀反を読むことができなかった。僕は自分に呆れと怒りが襲った。


 だが、もうそれすら考える気力もなくなってきた。意識がとうのいていくのを感じた。

 初めて体感した”死”は、とても気持ちの悪いものだった。腹部からの痛みは止まらず、そこが焼けるように熱かった。


 僕の体は段々と青白くなり、生きている感触すら失われようしていた。


(まだやり残したことは沢山あるのに……。美音(みおん)は僕が守らなきゃ行けないのに………!!)


 必死に手を伸ばしても、重すぎるその手は上がらない。呼吸をすることすら億劫になってきた。


 ああ、僕はこのまま死ぬんだろうな。


 薄らと残っていた意識もそこで途切れた。悪い夢なら覚めてくれ。そう思いながら、僕は瞼を閉じた




 *




 暖かい闇が僕を包んだ。酷く冷たい僕の体は癒され、段々と温かみを取り戻して行った。


 ここは天国なのだろうか?


 次の瞬間、自分の体が下方向に落ちていく感触に襲われた。その時は意識もあったし、思考もちゃんとしていた。

 訳も分からないまま落下を続けていくと、昔夢で見た少女の姿がまた目に浮かんだ。


 少女はまた悲痛な声で同じことを呟いていた。独り……僕はその少女とちょっとした親近感を覚えた。


 次に見えてきたのは夢で見た光景の最後に出てきた少女が、ギロチンの前に立っている様子だった。虚ろな目で目の前のギロチンを見つめる少女は、泣いていた。


 それは決して自らの死を恐れる涙ではなかった。孤独を嫌う目、僕も同じだ。その瞬間、再び目から光は消え、何も見えなくなった。



「あら?目を覚ましたようね」


 聞き覚えのある声、見覚えのある姿。目の前には、五年間を共に過したエネットさんとマキが立っていた。あまりの懐かしさに、ベットに横たわっていた僕は思い切り二人に飛びつこうとした。

 しかし、体が動かない。二人に初めて出会った時の感触を思い出す。


「エネットさん、マキ、お久しぶりです」


 展開はイマイチ理解できなかったが、恐らく僕を致命傷から救ってくれたのだろう。あの二人が来てくれていたなら安心だ。

 そうだ、美音は?と僕が問いかける前に、エネットは口を開いた。


「え?貴方、なんで私の名を知ってるの?それにマキのことも知ってるなんて……」


 ……………え?

読んでいただき、ありがとうございます。

評価やコメントがモチベに繋がるので、良ければそれらもよろしくお願いいたします。

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