プロローグ【さようなら】
新連載で初投稿の小説始めました。
小説初心者なので文におかしいところがあったりするかもだけど改善していくのでご心配なく…
最低でも一週間に一話は更新するので是非見ていってください。
「今回もか……ははは……」
少女は重い右手を額に当て苦笑する
見上げた空の色はまるで自らの心を映し出したように無慈悲に雫を振り落とす。
何度見つめ直しても答えは出てこない。
理想を実現することは叶わず、また終わってしまう。
「何がいけなかったんだろう……何をすればよかったんだ……?」
無意味な問いを自らに投げつけるもその答えは出ず、その発言すら口にしたことを後悔するくらいだ。
何度も何度も同じことを問いかけている。
そこにあるはずの幸せ。それに辿り着くための道はどこかにあるはずなのに己の無力さがそれを阻む。
故に自分をただ恨んだ。その力さえあればそこにある幸せを掴み取れるはずなのに。
憎かった。何故自分にはその力がないのか。
「────いたぞ!こっちだ!!」
視界の端でぼんやりと光が映る。
思ったよりもお早い到着のようだ。
武装した兵は僕の周りを囲い逃がさまいと武器を向けてくる。
その奥から1人の男が傍によってきて、こちらを見ながら声を上げる。
「貴女は我々が完全に包囲した。大人しく投降してもらおうか」
懐かしの中将様である。ズカズカとでてきた割には言うことは少ない、毎度同じことを言われると流石に飽き飽きする。
「まずは罪状を言うのが先じゃない?僕の罪状の確認くらいは君らの役割でもあると思うんだけど。それとも無罪の私を無理矢理に連行しようとしているのかな?」
「しれたことを。貴女が行なった非道の数々を忘れたとは言わせまい。これまでの自らの行いを誤魔化そうなどと馬鹿なことは流石の貴女でもするまいな?」
大人しく投降する気は毛頭ないと伝えたつもりだが彼には伝われなかったようだ。
「っふふ……」
「何が可笑しい!」
あまりの可笑しさに笑みが溢れてしまったようだ
中将様と話をしようとびしょ濡れの体を起こすと雑兵どもはさらに警戒を強め、こちらの首筋に槍の矛先を当てた。
「何が可笑しいと聞いているんだ!!」
森中に怒号が響き渡る。
「いやぁ何度も同じことを繰り返しているだけの君らには呆れを通り越して笑ってしまってね?いくら頭のお堅い中将様でもこれくらいは理解してくれるかと思ったがこのご様子ではね……
おっと、失敬君たちからすればこれは1回目だったね」
何も意味がないかもしれないが、今回の失敗を擁護するための足掻きとしては丁度いいだろう。
絶体絶命の局面にも関わらず、表情を崩さない僕を見て中将様は何も言わずただ沈黙としていた。
「貴様!いつまでその地位に浸っているつもりだ!上からものを言うのもそろそろいい加減しろ!!」
包囲網の一端から批難の声が上がる。上司を馬鹿にされた為か、或いは僕の行いが彼らの気に触れたのかのいずれかであろう。
「もうよい。元よりこやつの話などまともに聞くべきではない。これも何かしらの目論見の1種かと思ったがその様子だと実行する余力すら残っていないようだしな」
………相変わらず冷静だな。
あの沈黙の間もこれまでの挑発を受け流すための間に過ぎなかったという訳だ。
「これより貴女を王都へ連行する。総員ただちに拘束の用意をしろ。これ以上の無駄口も許すな」
中将の命令と共に兵共は素早く身柄を拘束し始めた。鉄製の枷を手足首全てに連結され、口には太く丸めた布のようなものを入れられ文字通り無駄口のひとつも言えないようになった。
何度も経験した拘束だが今回はよりいっそう強力だと思えた。それ以前に心がそう思ってしまったのだろうか。
複雑な気持ちを抱えて歩く王都への道は何故か寂しさを感じた。
*
太陽は世の末を映し出すように僕らを照らし出していた。処刑される日にも関わらず眩しく差し込んでくる光に嫌気がさしていた。
何ヶ月にもわたる監禁の末辿り着く結果は毎回同じである。これまで幾度もなく経験してきたはずだがこれだけはいつまでたっても慣れることは無いと承知の上だった。
兵は僕の両腕を拘束し常に警戒を怠らず、炎天下の中に僕らを放り出した。外には僕らの処刑の瞬間を見ようと民衆どもが騒ぎ立てながら群がっていた。
目の前にある見飽きた墓場を目の前にしても頭の中では何も感じなかった。何度も味わったあの瞬間が脳裏をよぎる。
朦朧とした意識の中、処刑台の前に立たされた僕らの前に断罪官が現れ罪状を告げていく。
「これより処刑されるのは一国を破滅へと導き、多くの命を奪い、暴虐の限りを尽くした高慢の女王”奏峰 美音”!。並びにその部下約50名!!!」
黙々と告げられる文章は暗記するほど聞き慣れていた。行くと度なく繰り返される無限のような時間を過ごすのもこれで何回目なのだろうか……
そんな問いすら投げ出してしまうほどに僕の思考は投げやりな状態と化していた。
他の受刑者どもは自らの死を表現するかのように様々な行動に出ていたが、僕は何もせずただただ処刑されることを望んでいた。
しょうもない
正直な気持ちだった。自らがやってきたことに後悔するということは自らを否定することに他ならない。今の彼女はそう思っているのだろうか。
自らの行いを悔いているのだろうか。
いや、安直な彼女に限ってそれはないだろう、と心の中で思い出した。
「ふふ……」
また笑いが溢れた。こんな生の終局を前にして尚僕は笑っていられた。自らの行いを今更悔いることはない。自分がそうしようと思ったことを今更曲げることなんて出来ないからだ。
「何笑っていやがるんだ……!」
「ふざけやがって!!早く殺っちまえよ!」
民衆どもの中から急かすように声を上げるものが数人いた。僕の笑みを見て何を思ったのだろうか、荒らげた声は連鎖し、やがて四方八方から僕の処刑を急ぐように声が上がる。
彼らの考えを考慮すれば当然なのだろうが、そんな考えをする地点で、彼らはこの悲劇を理解出来ていない。
そうこう考えていると、順々に部下達が執行されていく音が聞こえた。聞き慣れた音は自らの死のカウントダウンかのように、無慈悲にも部下達の首をはね飛ばし、綺麗な血飛沫を上げさせていた。
……嗚呼、もう僕の番が回ってきたようだ。
行くと度なく迫られた死の宣告は聞き慣れている。今更引き返すことは出来ない。そう胸に誓ったあの日から決意が揺らぐことはない。
「主犯、何が言い残すことはないかね?」
断罪官は落ち着いた様子の僕を見て不気味がっていたが仕方なく、といった感じで問いを投げかけてくる。
この質問が毎回回答に悩んでいた。覚悟した死の間際で名残など存在しない。なのに何故そのような質問をするのかという疑問はあった。
それを思えば僕も毎度同じことを言っているなと反省しながら僕は前を向き、大声で言った。
『僕はここで終わるけど終わらないよ。また舞い戻ってくるさ』
これがしっくりくる。
後々復活するやつとかにありがちな台詞だけど実際そんな感じであるので問題ないと思った。
「ふんっ!!くだらない冗談はあの世でほざくんだな!!!」
断罪官がそう叫ぶと鈍い音と共に僕は胴と泣き別れた。
僕は、何度死んだって君を守る。君が幸せになれない世の中なんて、僕が壊してやる。
永遠に変わらぬ決意を胸に僕はまた舞い戻る。
次回から新たな物語の初めが描かれますので期待しておいて下さい。