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目が覚めて、それから

 メイドのお姉さんこと、ロラの目の前でぶっ倒れた私は、寝ている間にミシェルとしての人生を強制的に追体験させられた。

 フロレンシア聖王国の4大公爵家の一角、フラヴィニー家の娘として生まれ、今日に至るまで蝶よ花よと育てられてきた記憶。

 ここまで甘やかされてたのに調子に乗らず、ゲーム本編で見せたような常識人になれたのは奇跡に近いなーと思う。

 でもまあ、あの主人公たちの前ではそのせいで悲惨な運命を辿ることになったんだけど……うっ、思い出すだけで辛い。

 見せられた記憶によると、ぶっ倒れた日はミシェルの婚約発表のパーティーがあったらしい。

 婚約もパーティーも縁遠かった私には考えつかないけど、ともかくおめでたい日に私はダウンしてしまったのだ。



「ロラ」

「はい、ミシェル様」

 ちらりと鏡越しに呼び掛ければ、ロラはキリッとした表情で返事をする。

「変じゃないかしら」

「いいえ。ミシェル様は本日も大変可愛らしいですよ」

 うーん、完璧な営業スマイルだ。本心じゃないな?

 あれから1週間ずっと臥せっていた私は、なんで乙女ゲーム(しかもクソゲー)の世界に転生!?とか、これからどうすれば!?とか、そんなことをずっとぐるぐると考えていた。

 ロラをはじめとする使用人さん達が慌ただしかったのはもちろんのこと、ミシェルの父親と母親が心配そうに何度も枕元まで来ては、病によく効く薬湯だの国王お抱えのなんとかって人からのお見舞いの品だのを持って来ていた。

 それをぼんやりとした頭で眺めているうちに、私はどうしようもなく自覚してしまった。


 今の私は、『ミシェル』なのだと。


 私はもう、一人暮らしの部屋で、冷えたビールを片手に乙女ゲームをプレイしていた私じゃない。

 どうして転生したのか、前世?の自分はどうなったのか、そういったことは今の自分には分からない。

 でも、それならば、ミシェルとしてなんとか生きていくしかないと開き直った。正しくは、開き直ってしまった、だけど。

 もちろん、ミシェルとして生きていくためにはあの学園での断罪イベントを回避しなければならない。あのひどいシナリオの通りになるなんて、絶対にイヤ!

 どうすれば回避できるかはまだ未知数だけど、ゲームの本編開始――――魔法学園の入学式までは、まだ時間がある。

 それまでの間に、なんとしても私が生き残れる方法を探すのだ。

 そう思えるようになって、ようやく体調が元に戻った。それを見計らって、パーティーが仕切り直しされることになった。今はその準備中ってわけ。

 今着ているドレスは、レースとフリルをふんだんに取り入れた、青と白を基調としたものだ。手触りの良さからして相当値の張るものなんじゃないかと思う。

 ちなみに、ミシェルのクローゼットには同じような高級そうなドレスが山ほどあってちょっと引いた。公爵家令嬢こわい。

 改めて鏡を見れば、銀髪は丁寧に撫でつけられ編み込まれ、ミシェルの可愛らしさをこれでもか引き立てている。ドレスに合わせた髪飾りも何もかも、ミシェルには似合いすぎていておもわず頬が緩んでしまう。

 今は自分がミシェルってこともあって自分が言うのも変なんだけど、ミシェルってばとんでもない美少女だ。

 そんな最高の顔面が、鏡を見れば誰よりも近くにあるのだ。浮かれないほうがおかしい。

「ふふふ、ありがとう、ロラ」

 鏡の中のロラが、何故かびっくりしたような顔でミシェルを見つめている。あれ、なんか変なこと言ったかな?

 振り返ってみれば、ロラは咳払いをしている。もしかして、喉の調子が悪いの? 後で他のメイドさんに薬湯でも頼んでおこうっと。


「さ、行きましょう!」


 何はともあれ、婚約発表パーティーだ。

 公爵家なんてビッグネームが開く婚約お披露目パーティーには、間違いなく『攻略対象キャラクター』が一人は確定で、あともう二人くらいはきっと来ているはず。


 生き残るためにも、まずは情報収集からスタートよ!

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